文:小松信夫
日本でオフロードバイクを正規販売しなくなって久しいスズキ、海外では?
国内4メーカーの正規モデルで新車として購入できるオフロード車って、かつては50ccから400ccまで、けっこう幅広く存在してたんですがね。2021年秋の時点で、ホンダの「CRF250L」系の一族と、カワサキの「KLX230」しか存在しないんですねコレが。もう「セロー250」も売ってないしなぁ。
その分、昔より公道不可のコンペモデル(海外メーカーの“ナンバー付き”コンペモデルも)は充実してる。要するに、もう好き勝手に走れる未舗装の林道なんかないから、オフ遊びをする奴はクローズドコースに行け、ということなのか。林道をぶっ飛ばすんじゃなくて、ちょっとした山道をトコトコ走りたい人、そういう手頃なオフ車が欲しい人は今でも一杯いると思うけどね。
でも日本の各メーカーも、海外向けにはいろんなオフロードモデルを出してるんですよね。そこに需要が、走る場所があるから、ということ? うーん羨ましい。オフロード車が国内向けのラインナップから消えて久しいスズキも、日本ではそんなに売れなかった400ccオフの「DR-Z400S」とか、70年代そのままの空冷2ストな「TS185」とか、いろいろ面白そうなモデルを揃えてますよ。
そんな中で私がなんか引っかかるものを感じたのが、2019年にデビュー、南米・コロンビアとかで売られてる「DR150」でして。やたら目立つヘッドライトとフロントフェンダーを一体にしたフロントマスクとか、スタイリングは今時なオフ車してます。でも、なんかスズキらしくない感じがする……。
タイヤサイズはフロント19インチ・リア17インチで、車体もコンパクトで扱いやすいサイズだけど、車重は139kgというのはその割にはちょっと重い。リアブレーキがドラムなのも含め、コストダウンのためだと思われますな。エンジンはタフで燃費も良さそうな空冷シングル、と。
スズキの150cc単気筒エンジン、てことは日本でも販売されてるロードスポーツ「ジクサー150」用のエンジンを乗っけたオフ車なのか?
それとも、コンペモデル「DR-Z125」にまだ使われてる懐かしのSX125系エンジンから発展したのか? なんて思って、よくよく「DR150」の画像を観察するとですね。
同じ空冷単気筒なんだけど、エンジンの見た目がジクサーともSXとも違う! 同じ150cc同士ということでスペックをジクサーと比較しても、ボア×ストロークが全く違うんで、全く別系統のエンジンということになるなぁ。しかもよく見たらキャブ仕様だし。ちなみにキックペダルが見えてますが、セルも付いてます。
ということで、ちょっと調べてみたら、「DR150」は純粋なスズキ車ではないことが分かりまして。日本でもおなじみ「Vストローム250」「GSX250R」など、中国製スズキ車の生産を手がける、スズキと関連の深い中国の豪爵(Haojue)控股有限公司が自社ブランドで販売している、「NK150」というモデルとほとんど同じクルマでした。
上の写真見比べれば分かりますね? 手頃な150ccオフロード車が欲しかったスズキと、条件に合うモデルを造れる豪爵の利害が一致して、「DR150」が誕生したってこと。ま、OEM供給なんだけど。
この「DR150」、コロンビアでは人気モデルになっている……のかな? 「DR150」購入者を対象に、アドベンチャーツアラーの「Vストローム650XT」や「Vストローム250」が抽選で当たる! というキャンペーンが実施されております。それとも、こうでもしないと売れないのか「DR150」? 地球の裏側のことなんでよく分かりませんがねぇ。
文:小松信夫
スズキ「DR150」の主なスペック
全長×全幅×全高 | 2070×825×1165mm |
シート高 | 839mm |
車両重量 | 139kg |
エンジン形式 | 空冷4ストOHC2バルブ単気筒 |
総排気量 | 149cc |
ボア×ストローク | 57.3×57.8mm |
最高出力 | 12.2HP/8000rpm |
最大トルク | 12.7Nm/6000rpm |
燃料タンク容量 | 12.5L |
変速機形式 | 5速リターン |
タイヤサイズ(前・後) | 90/90-19・110/90-17 |
ブレーキ形式(前・後) | ディスク・ドラム |