前戦・岡山大会で、篠崎佐助(TEAM TEC2 & YSS)が国際ライセンスクラスのシリーズチャンピオンを決めた、MFJカップJP250クラス。
このクラスのことを少し説明しておくと、市販250ccスポーツバイク--ホンダCBR250RR/ヤマハYZF-R25/カワサキNinja250&Ninja ZX-25Rで争われるクラスで、タイヤはダンロップのワンメイク。国際ライセンス(=INT)と国内ライセンス(=NAT)が混走するレースで、マシンは現在ではほとんどCBR250RR、ついにこの最終戦オートポリス大会は、エントラント15台すべてがCBRになっちゃいました。
実は、2021年INTチャンピオンの篠崎が、チャンピオンを決めた岡山大会のあとで「最終戦は面白いマシンで走りますよ、ふふふふ」なんつってカワサキの4気筒Ninja ZX-25Rで走るのバレバレの予告(笑)をしてくれてたんですが、事前練習の木曜にマシントラブルが起こり、急遽チームからいつものCBRを運んで参戦--ってことがあったんです。サスケが4気筒で走る姿、見たかったなぁ。
そして、INTチャンピオンが決まったことで、JP250の最終戦注目の的は、NATチャンピオン争い。前戦・岡山大会では、地元スペシャルこと岡山エリア戦に参戦している田中直哉(JOYONE RACING)がポールtoウィンを飾り、2位にこれも地元スペシャルの土岩直人(SHIN-RS & SUNOCO)、3位に南 博之(373&TEAM TEC2 & YSS)が入賞。鈴木悠大(=ゆうた・キジマKISSレーシング)が5位、梶山采千夏(=さちか・RankUp WingStone)が7位に入り、これでチャンピオン争いは1位:鈴木/2位:梶山の一騎討ち、そのポイント差は3.5ポイント! 順位によってはですが、この最終戦で先着した方がチャンピオン、という展開でした。
JP250は公式予選を土曜の朝イチ、決勝をその夕方に行なう1Day開催。オートポリスは、この週末にかけてちょうど台風が接近していて、木曜~金曜の天気が大荒れ。特に金曜の午後は嵐になって走行が中止されるほどで、土曜には雨は上がったものの、路面はまだ濡れている、という状態でした。
そんなイヤーなコンデイションで走り出したJP250の公式予選では、INTチャンピオン篠崎が貫録のトップタイム。2番手には中村龍之介(ENDLESS TEAM SHANTI)、3番手に岡山大会でもINT2位表彰台を獲得した桐石世奈(チャレンジフォックス&TEC2&YSS)、4番手に石井千優(千葉北ポケバイコースTeam N-PLAN)がつけ、ここまでが総合のTOP4、すべてINTのライダーです。中村は、去年のオートポリスではポールポジション、昨年のINTチャンピオン“絶対王者”笠井悠太(TEAM TEC2 & YSS)が予選で転倒したけど決勝では優勝したレースでした。
総合5番手に笠井杏樹(K0 electronics Racing)、6番手に梶山、7番手に南、8番手に鈴木、9番手に豊原由拡(TEAM TEC2&24サービス&YSS)というオーダーで、この5人がNATクラス。めずらしく上位と下位、ハッキリとクラスが別れました。いつもは予選も決勝もINTとNATが入り乱れてのポジション争いをするクラスですからね。岡山大会でも、決勝の総合順位でNATの田中が優勝、INTの篠崎が2位、なんてことありましたし。
オートポリス大会 JP250クラス公式予選
そして午後にはすっかり晴れたオートポリス。金曜は晴れ→雨→嵐、朝の予選は曇り空のウェット路面、そして決勝はピーカンのドライコンディションと、チームもライダーもたいへんな最終戦になっちゃいました。
レースは篠崎が好スタートで、中村がそれを追って、3番手以降が少し離れてのバトル、という展開。篠崎と中村はINTクラスのランキング1-2位ですから、チャンピオンが決まったとはいえ、中村は最後にチャンピオンをやっつけたい、篠崎は最後までチャンピオンの貫録を見せたい、って戦い。オープニングラップでやや中村を引き離していた篠崎でしたが、中村も意地を見せて接近。2~3周目にはビタビタに背後につけてのマッチレースとなっていきました。
そして3番手争いとなるセカンドグループは、南、鈴木、梶山、豊原、石井というメンバーで、まさにNATクラスチャンピオン争いのメンバー。この中から南がやや遅れはじめ、梶山、鈴木、豊原、石井がずっと3番手争いのグループを形成。豊原がリードしたかと思ったら梶山が前に出て、おぉ逃げるか、と思ったら鈴木が前と、まるでトップ争いのような大バトル。
レースはトップ争いの2台が順位を入れ替えながら、時に中村が前、いやいや篠崎は抜かせない、って展開が続き、篠崎がトップでチェッカー、2位に中村が入りました。
注目の3番手争いは、ラスト2周で前に出た豊原がこの集団の先頭でフィニッシュし、次いで梶山、石井をはさんで鈴木が総合6位でフィニッシュ! 梶山と鈴木の差がわずか0秒7という僅差でした。1年間、6レース戦ってきて、この0秒7差でチャンピオンが決まっちゃうんです。
総合順位では、篠崎が今シーズン6勝目を飾って、2位に中村で3位に豊原が入りました。NATクラス順位では1位豊原/2位梶山/3位鈴木となって、鈴木よりも先着した梶山が0.5ポイント差で2021年JP250国内ライセンスクラスチャンピオンに輝きました。
このふたりは開幕戦で鈴木が、第2戦(は雨で決勝レースが中止となって、予選順位にハーフポイントが与えられました)から第4戦まで梶山が優勝する、という戦いでした。ふたりとも、お疲れさま!
オートポリス大会 JP250クラス決勝結果
2021 JP250 国内ライセンスチャンピオン 梶山采千夏
「今日は鈴木君と一騎打ち、先にゴールした方がチャンピオンだとはわかってましたが、そうプレッシャーもかからずに走り切れました! とにかくレース中ずっとバトルが続いてて楽しくて、時々『あ、鈴木君の前でゴールしなきゃなんだった』って思い出すくらい(笑)。いつもレース前は、レース前とか事前練習から上手く走れないと流れに乗れないんですが、金曜のスポーツ走行から上手く走れて、それが決勝につながったんだと思います。最後は国内クラス優勝で締めたかったけど、チャンピオンが獲れて及第点だと思います!」
梶山は19歳の現役女子大生。2018年から2シーズン中野真矢さん率いる56レーシングに所属、CBR250Rドリームカップを戦ってました。それで目玉ヘルメットなんです。
その前は74とかミニバイクをやっていて、ミニバイクの頃から「なんかスゴい速いコがいる」って関東では評判だったんです。
全日本選手権MFJカップには今シーズンがフル参戦初年度で、昨年は熊本のGOSHIレーシングに所属して鈴鹿大会とオートポリス大会にスポット参戦して国内クラス2戦2勝。ここオートポリスは2020年に地方選と全日本、21年も地方選に出場してからの今回のレースでした。鈴木よりも少し地の利があったのかな。
「今年から新しいチームに所属させてもらって、すごくいい体制で走らせてもらえたのを、国内チャンピオンで少し恩返しできたのかな、と思います。来年のことはなんにも決まってないんですが、私いつもキツいところでもまれたいので、国内チャンピオンで少し伸びた鼻をぽっきりへし折ってほしいです(笑)」
もっとJP250、広めたいんです!
これで2021年のJP250が終わりました。
Webオートバイでは、全レース追っかけてレポートさせてもらって、時にはJSB1000よりも扱いが大きいと苦情をいただいたり(笑)、JPキッチリ扱ってくれてありがとう、なんてほめていただいたり(ごく少数ね)、な1年でした。
JP250って、市販250ccマシンを使ったすごく敷居の低い、ローコストの楽しいクラスだったんですが、いつしかチューニングパーツも増えて、レース適性の高いCBR250RRのワンメイクに近くなっていってしまってなんだかなぁ、という時期ではあります。
それでもカワサキの4気筒Ninja ZX-25Rが公認マシンとなって、現在JP250出場に向けて準備をしているチームもちらほら。競争は、やっぱり敵がたくさんいた方が激しい、楽しい、エキサイトするものですから、早くCBR250RRのライバルが出現して、もっともっと激戦になってほしい、と考えています。
こんな面白いレースなのに、実はJP250を扱うメディアやサイトって、実は少ないのが実情なんです。2021年からはMFJのオフィシャルファンサイトからもJP250のコーナーがなくなっちゃったし、レースレポートも実にわかりにくい場所に埋没されています。JP250って新しいレースを面白がって参戦して、頑張ってるチームもライダーも、取り上げられなくてもったいない、って始めた応援企画でした。
全日本選手権の併催「MFJカップ」っていう、手軽さを残した位置取りのまま、もっとJP250全体にスポットが当たるような、そういう風に広めていきたいとは思っています。力不足ではありましたが、WebオートバイはJP250の味方です(^^)!
写真・文責/中村浩史