日本が誇る二輪車メーカー4社は世界各地で高い評価を得ている。そして日本市場では正規販売されていない機種が海外では数多く展開されてもいる。この連載では、そんな知る人ぞ知るモデルをフィーチャー。今回は、中南米地域のスーパーロングセラーモデルに焦点を当てる。
文:小松信夫

懐かしいスタイリング&機構のまま生き続ける現行車

1978年にデビューしたヤマハの超ロングセラー「SR400」が、ついに今年惜しまれながら生産を終了。ファイナルエディションも大人気となり、あっという間に完売! 一般メディアでもニュースとして取り上げられたのは、皆さんも記憶に新しいところでしょう。

画像: ヤマハ SR400ファイナルエディション www.autoby.jp

ヤマハ SR400ファイナルエディション

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奇を衒わないオーソドックスなスタイル、各部を飾るメッキパーツ、シンプルで味わい深いフィーリングの空冷シングルエンジン…そうか! 今や70年代末のモデルだって立派なネオクラシックなんだ! という気づきを、今さらワタシも得ました。そこで今回は、アフター「SR」時代に70年代末の息吹を濃厚に感じさせてくれる「現行モデル」をご紹介したいと思います。

画像: Honda V-MEN125 総排気量:124.1cc エンジン形式:空冷4ストOHV2バルブ単気筒 車両重量:133kg

Honda V-MEN125

総排気量:124.1cc
エンジン形式:空冷4ストOHV2バルブ単気筒
車両重量:133kg

そう、それがこの「V-MEN125」なのです! ホンダがグアテマラ、エルサルバドルといった中南米諸国で販売している、ネオクラシックスタイルというか、生きている化石的な125ccクルーザーでございます。

画像1: 懐かしいスタイリング&機構のまま生き続ける現行車

80年代後半、ビラーゴとかスティードとか、Vツインエンジンとロー&ロングスタイルに各メーカーのクルーザーが揃って右に倣えしちゃう以前。ロードスポーツをベースに、長いフォークや超アップハンドル、フカフカなシートを装備した、80年代初頭の古典的国産クルーザースタイルが、2021年も「V-MEN125」として時を超えて保存されてます。しかし、なんで海外モデルなのにナンバープレートホルダーに「三角マーク」が付いてるんだろう。謎だ。

画像: ホンダ CM400T(1979年モデル)

ホンダ CM400T(1979年モデル)

ちなみに、これは国内向けに発売されてたホンダ「CM400T」の1979年モデル。ほらほら、当時の国産アメリカンといえば、大体こんなんでしたから。しかも同じホンダだし、各部のデザインに「V-MEN125」と共通点があるのがお分かりいただけるでしょう? 

画像2: 懐かしいスタイリング&機構のまま生き続ける現行車

なんせ超マイナーな海外向けモデルなんで、「V-MEN125」のデビュー時期とか開発の経緯とかは調べがつかなかったんですけど(2気筒CM125系との関連も含めて。実は意外に新しいモデルだったりして…)。

とはいえ、車体の構成はどうみても70年代の雰囲気。載せられてる空冷単気筒エンジンは、ホンダの海外向け実用車のロングセラー「CG125」シリーズ譲りの、高い信頼性とフレキシブルなパワー特性を備えるもの。しかもこれ、キャブレター仕様な上に、今時OHV2バルブなのですよ。シンプルで整備性も抜群! ちなみにミッションはロータリー5速、シフトペダルはカブと同じく踵でも踏めて便利なアレ。キックペダルが見えますが、セルも付いてますよ。ひたすら実用的です。

画像3: 懐かしいスタイリング&機構のまま生き続ける現行車

前後フェンダー、マフラー、リアサス、タンデムグリップ、ヘッドライトケース、ウインカーボディなどなど、これでもかとギラギラのメッキ仕上げを採用して(70年代末頃風の)ゴージャスな雰囲気を演出。座面をタックロール仕上げにしたシートは、後部のクッションを厚くした段付き形状。さらにバックレストも装備してて、タンデムでの快適性を重視。

画像4: 懐かしいスタイリング&機構のまま生き続ける現行車

とどめはこのメーター。中央の7セグメントLED(ギアポジション?)やインジケーター周りは80年代的モダンデザイン。メーター本体は造りもデザインも極めてオーソドックス。メーターケースもメッキだし。盤面のフォントが今時っぽいのがちょっと惜しい。

画像: スズキ GN125F(グアテマラ仕様) www.autoby.jp

スズキ GN125F(グアテマラ仕様)

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要するに南アメリカあたりで、リーズナブルで、非常に使い勝手が良くて、しかも快適な実用車としての需要が根強くあるということなんですね、この手のスタイルの125ccモデルに。スズキだって約40年ほとんど姿が変わってない「GN125」を、やはり南アメリカ各地などでいまだに売ってますから。ただ現在の「GN125」は、シートとかが若干モダナイズされ、ボディカラーもシンプルで、「V-MEN125」のようなシーラカンス感が感じられない。

画像5: 懐かしいスタイリング&機構のまま生き続ける現行車

「V-MEN125」がこの時代を感じさせるスタイルのまま、現代でも販売され続けている理由は、南アメリカで求められる理想的モデルとして支持された結果、「変わる必要がなくなったから」ということのようで。現地のライダーたちの方が、この独特なスタイルに適応させられた…という気もするけどね。きっとガソリンエンジン車が生産・販売できる限り、「V-MEN125」(と「GN125」)は中南米の片隅で売られてるんだろうなぁ。

文:小松信夫

画像: 【動画】Honda Motos Guatemala|Honda V-men 125 www.youtube.com

【動画】Honda Motos Guatemala|Honda V-men 125

www.youtube.com

ホンダ「V-MEN125」の主なスペック

全長×全幅×全高2061×803×742mm
車両重量133kg
エンジン形式空冷4ストOHV2バルブ単気筒
総排気量124.1cc
最高出力9.7hp/8500rpm
最大トルク8.8Nm/7500rpm
燃料タンク容量12.8L
変速機形式5速リターン
タイヤサイズ(前・後)3.25-18・110/90-16
ブレーキ形式(前・後)ディスク・ドラム

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