スーパースポーツではもちろんないしアドベンチャーともちょっと違うライトウェイトのオフロードモデルが今また脚光を浴び始めている。本当に行きたい場所はいつもアスファルトじゃないところにあるものだ。
文:中村浩史/写真:松川 忍

ホンダ「CRF250L」ツーリング・インプレ(中村浩史)

画像: Honda CRF250L 総排気量:249cc エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ単気筒 シート高:830mm 車両重量:140kg 税込価格:59万9500円

Honda CRF250L

総排気量:249cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ単気筒
シート高:830mm
車両重量:140kg

税込価格:59万9500円

本当に行きたい所は舗装が途切れた先にある

私にはお気に入りの場所がある。いつも走りに行く、なにか用がなくてもも時間ができるとついつい走りに行っちゃう、自分だけのお気に入り。そうだな、だいたい片道1時間、往復で100kmも走らない距離かな。

けれど、その道すがら、なんだか気になる小道がある。方向的に、いつも走る山の向こう側が見渡せる丘があるはずなんだけれど、その方向に入ろうにも、行けない。だって、舗装が途切れてしまっているから――。

「あぁ、あの先、きれいだろうなぁ」

普段乗っているオンロードモデルでも、少しのフラットダートならば、よろよろと両足をつきながら徐行して行ける。でも小道の先は、意外と先が長い。行きたい、でも行けない、そんな気持ちがずっと続いている。

ちなみに国土交通省の発表資料によると、日本の道路の舗装率は、簡易舗装を含めて82.4%!(2018年)。ただし、これは高速道路、一般国道、都道府県道、市町村道のすべて合わせての数字で、このうち高速道路は100%、一般国道は99.5%。

けれど、僕らオートバイ乗りが大好きなワインディングって、都道府県道や市町村道が多いものだ。その舗装率はぐっと下がる、ってことはダート率がぐっと上がるのだ。

お気に入りのコースを走っていると、自宅を出て国道を走り、高速道路で移動、目的地付近のインターチェンジで降り、そこから走るルートには、もう朝とは違う風景が広がっている。舗装路とダートの割合で言えば、イメージ的にはもう5対5だ。

ずっと走っていく国道にはいくつも分岐があって、どんどんクルマ通りが少なくなると、冒頭に書いた「入って行きたい景色」が広がっている。この時のイメージは、舗装路とダート、ほとんど3対7。どんどん山に分け入っていくと、一本メインに舗装路が伸びていて、その周辺すべてダート、なんてことだって少なくない。

だったらオフロードバイクで行けばいい、って思うけれど、ことはそう簡単じゃない。だいたいの都市生活者にとってのダートって、かなり遠くにあるから、ダートの入り口までにひとツーリングを要することになる。

オフロードバイクってカテゴリーはだいたいローギアードで、たとえば100km/hな高速道路のクルージングを快適に、というのがなかなか難しい。

ホンダCRF250Lの登場は、そんな風潮を変えてみせた。

画像1: ホンダ「CRF250L」ツーリング・インプレ(中村浩史)

オフロードへ行くためにはオンロードを走る必要がある

「日常を便利に、週末を楽しむちょうどいい相棒」を開発キーワードに、CRF250Lが登場したのは2012年5月のことだった。

日本のオフロードモデルと言えば、2ストロークはヤマハDT、4ストロークはホンダXLシリーズが歴史をけん引してきたと言っていい。

ヤマハDTシリーズは、1990年代以降の全世界的な4ストロークエンジン化を受けて生産を終了してしまったけれど、ホンダXLシリーズはXLXからXLR、そしてXRとシリーズ名を変えながら、日本のオフロードシーンの真ん中にい続けた。

しかし2010年を前に、排気ガス規制のためにXRの生産は終了。日本のオフロードモデルが、ちょっと元気をなくしてしまっていたタイミングで登場したのがCRFだったのだ。

画像: ▲2012年5月にデビューしたCRF250Lは、17年2月にマイナーチェンジ、そして20年12月にフルモデルチェンジして現行モデルへと進化。最低地上高245mm/シート高830mmのCRF250Lと、サスペンションストロークを伸ばして同285mm/880mmのタイプSがラインアップされているが、両タイプの外観上の差はほぼゼロだ。

▲2012年5月にデビューしたCRF250Lは、17年2月にマイナーチェンジ、そして20年12月にフルモデルチェンジして現行モデルへと進化。最低地上高245mm/シート高830mmのCRF250Lと、サスペンションストロークを伸ばして同285mm/880mmのタイプSがラインアップされているが、両タイプの外観上の差はほぼゼロだ。

CRFは、それまでのXRシリーズよりも、うんとオフロードモデルへの敷居を低くして登場したイメージだった。エンジンは、CBR250Rと単気筒DOHCエンジンを共用。XRシリーズのモデル末期よりも、乗り手を選ばず、もっと気軽にオフロードを目指す、いや、目指さなくとも街乗りだって快適、という立ち位置。

XRシリーズを含めてオフロードモデルというと、どこか「好き者たちだけのため」のオフロード専用モデルと思われがちだけれど、そんなハードルを取っ払ったモデルだった。

とはいえ、ヤマハがDTシリーズの後にオフロードブランドとして育ててきたセローシリーズよりももう少しオフロード向け。もちろん、セローはオフロードモデルではなく、トレッキングバイク、というカテゴリーを創出したけれど、印象として、セローのオンロードとオフロードの比率を9対1とするならば、CRFは7対3――そんなイメージだったかもしれない。

画像: ▲ほとんどの都市生活者の近くには野山も、海も、絶景もない…ことが多い。CRFはフィールドへの 「移動」 でもオフロードらしからぬ快適性を見せる。

▲ほとんどの都市生活者の近くには野山も、海も、絶景もない…ことが多い。CRFはフィールドへの 「移動」 でもオフロードらしからぬ快適性を見せる。

オフロードモデルというと、林道をばんばん走りたい派、時にはエンデューロにも出場する派、そしてオンロードを含めてのロングツーリングに使いたい派に分かれるように思う。その中で、CRFはロングツーリングから林道にちょいと顔を出す、といったエリアのライダーたちに歓迎される。

フルサイズのボディに、オンロードモデルと共用する6速ミッションの250ccエンジン、それにオンロードモデルが持ち得ないフロント250mm/リア240mmのホイールトラベルを持つ長い脚。オフロードへ向かうにはオンロードを走る必要があるのだ。

画像: ▲CRF250Lの兄弟モデルとして、17年のマイナーチェンジ時に追加されたCRF250RALLYもフルモデルチェンジ。こちらは大型スクリーンや12L容量のビッグタンク、アンダーカウルなどを装備、250Lよりもサスペンションストロークの長いアドベンチャーカテゴリーといえるもので、さらにロングストロークのタイプSは最低地上高275mm/シート高885mmだ。

▲CRF250Lの兄弟モデルとして、17年のマイナーチェンジ時に追加されたCRF250RALLYもフルモデルチェンジ。こちらは大型スクリーンや12L容量のビッグタンク、アンダーカウルなどを装備、250Lよりもサスペンションストロークの長いアドベンチャーカテゴリーといえるもので、さらにロングストロークのタイプSは最低地上高275mm/シート高885mmだ。

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