文:小松信夫
若いライダーをターゲットに3メーカーが開発競争?
ホンダ・ディオ110は、前後14インチホイールのスリムで安定感抜群、しかもフラットフロアによる優れた使い勝手を両立させた車体に、シート下収納などの装備類と扱いやすく経済性にも優れた110ccの空冷eSPエンジンを装備。実用的なスクーターとして根強く支持されているモデル。
同様な造りのスズキ・アドレス110も含め、日本ではこういうスクーターは質実な実用車として人気になってます。価格設定も低くてコストパフォーマンス抜群、ボディカラーもだいたい落ち着いた色調で。日本だけでなく、世界的にもその傾向はだいたい変わらない…はず、なんですけど、東南アジアではちょっと様子が違う。中でもフィリピンやインドネシアは、特にこのクラスの注目度が高いみたいで。国内3メーカーがいろんなモデルを投入してるのでした。
ホンダからはビート&クリック125i
たとえばホンダは東南アジアでビートというスクーターを販売してるんですがね。空冷eSPエンジンをはじめメカニズム的には、だいたいディオ110系がベース。だけど、そのデザインを見ると、ディオ110の大人しい佇まいはすっかりどっか行っちゃってまして。
主にフロントマスクのみだけど、大きなヘッドライト、シャープなラインで複雑な形状のスポーティな雰囲気の顔つきにされて、派手なグラフィックのボディカラーと合わせてイメージを一新。東南アジアで大人気の、スープラGTR150とかのアンダーボーンスポーツに通ずる雰囲気ですな。
この広告からも分かるように、若い層が主なターゲットになってるから、現代的なスポーティさをアピールするにはそれが手っ取り早いんだろうなぁ。でも、しっかり燃費の良さも主張されてるのね。
さらにビートよりもちょっと大人に向けたモデルとして、125cc水冷エンジンを積んだクリック125iなんてのまで存在する。これまたスクーターらしからぬ存在感抜群の顔つきですが、やっぱりアンダーボーンスポーツのテイストが漂ってます。
スズキはNEX/スカイドライブ・シリーズを投入
一方、スズキも同様なコンセプトのスクーターを用意してました。フィリピンではスカイドライブ・シリーズ、インドネシアではNEXシリーズと呼ばれております。
基本的にホンダのビートと同じく、アドレス110に準じたメカニズムにインパクト大なデザインのフロントマスクを合体! さらにボディカラーも目に鮮やかなピンクとかキャッチーな色使いで、実用モデルの匂いを薄めてます。
そして、やっぱりちょっと余裕が欲しい人に向けた125ccバージョン。これはフィリピン向けのスカイドライブ125Fi。ホンダのクリックとは違ってこちらのエンジンは空冷ですが。そしてヤマハはミオ・シリーズ!
ヤマハも多彩なモデルを用意!
この14インチのアンダーボーン的スクーターの争い、東南アジア市場を重視するヤマハも当然無視できず、様々なモデルを揃えております。
フィリピンで売ってるスタンダードモデル的な存在がミオ・スポーティ。115cc空冷エンジンを搭載、しかしデザイン的にあんまりアクが強くなくて、普通にちょっとスポーティなスクーターというレベルですな。
しかし、こちらのミオi125(インドネシアではミオM3/Z)になると、装飾過剰気味なデザインとインパクトの強い色使いが、いかにも東南アジア風味あふれる強烈な存在感。エンジンは空冷125cc、ヤマハお得意のブルーコアエンジンを採用。
これはインドネシアのXライド125。バーハンドル化、フロントマスクの大胆なデザインなどでアドベンチャーモデル風味を強調。宣伝コピーも「Live In The Adventure」。ローカルモデルながら、しっかり世界的な流行も取り入れられてます。
そしてフロントマスクだけ見ればまさにアンダーボーンスポーツにしか見えないような、イカつく個性的なスタイルが特徴のソウル125(フィリピンではミオ・ソウルi125)。ソウル125GTなんていう、スポーティイメージをさらに強調したモデルも用意されてますよ。
そして今年デビューした最新モデルがミオ・ギア(インドネシア版はギア125)。スリムでスマートなスタイルやボディカラーが特徴で、上級モデルにはアイドリングストップが装備されていたり、充電用USBポートを備えていたりと、洗練された雰囲気と造りを兼ね備える1台。でもリフレクター・グラフィックを採用したモデルが設定されてたりと、独特なセンスは健在。しかしホンダ、スズキと比べれば、ヤマハのこの手のモデルは、全体にやや落ち着いたイメージが強い印象かな。
このように東南アジアで局地的に花開いている、14インチのアンダーボーンスポーツ的スクーターたち。過激に進化して実用性を失っていったアンダーボーンスポーツに対して、こっちの方が便利で快適で、適度にスポーティな雰囲気を感じさせるという点において、普通の若者に強く支持されている、ということのようで。そしていかに若者にアピールするか、という開発競争が3メーカーの間で行われてると。といっても、主としてフロントマスクのデザイン競争なんだけど。派手なキャンペーンもやってるねぇ。
文:小松信夫