以下レポート:三橋 淳
林道を走っていると文字通り「道がなくなる」ことがある
雪の安房峠を堪能したのち、目指す岐阜の林道は、20km越えのロングダートだという。はやる気持ちを抑えながら、林道の入り口まで一般道を走る。
入口はやけに綺麗に整備されていた。道は噂通りのロング・フラット林道だ。
しかし、その道はわずか2kmで文字通り消えてなくなっていた。
何をどう足掻いても走れません。完全に道がなくなってしまっている。復旧は難しいんじゃないだろうか?
道がフラットだったのは重機が入ってきているからだったが、この崖崩れを修復する気配はまったくない。貴重な林道がまたひとつ失われるのか?
今回の1週間林道ツーリングで3回目のSS(スペシャルステージ)キャンセルである。
次に目指した大坊本谷林道は、入口からいきなりの通行止め。
なんということだ。この林道が通り抜けられれば絶景の鈴蘭高原を走り、さらに林道が続く県道437号林道下呂~小坂線へと繋げることができたのに。
この橋の下から見える林道こそが大坊本谷林道。見えているのに通れないなんて! ショックである。
しかし落ち込んでばかりはいられない。ならばと再び国道41号へと戻って県道437号林道下呂~小坂線への進入を試みる。
ところがこちらも通行止め!
これで3連続SSキャンセルだ。昨日の南アルプスの最後の林道通行止めも入れると4連続のキャンセルである。さすがにガックリくる。自分のリサーチ能力もまだまだなんだな。
とはいえ、いずれの通行止めも工事中のようなので、近いうちに開通するかもしれない。放置されるよりはマシだ。今後の期待だけを抱いて次に進む。
岐阜県ならたくさんの林道があるだろうと踏んでいた。ネットを使った事前調査の段階ではロングダートがたくさん見つかってもいた。それが岐阜県に入ってまだ一本も林道を走り抜けていないのだ。すでにお昼である。次の道にかけるしかない。
そこは中部エリアでは有名な中腹林道が走っているが、私が目指すのはその中腹林道のさらに上を走る木曽越林道。なんでも最近開通したというロング林道だ。これを外すと本日の予定は全滅になってしまう。無宗教だがこういう時だけは神頼み。お願い神様走らせて!
岐阜県の迷宮林道に突入!
木曽越林道に向かう前にガソリンを満タンにしておこうと、スタンドに飛び込んだ。
「あ、うちカード使えないんですよ」
なんですとー!
いまどきカードが使えないガソリンスタンドなんてあるのか!? もしかしたらたまたま末端の調子が悪かったのかもしれない。
いや、でもさっきの言い方ではそんな感じじゃなかった。現代社会でカードが使えないガソリンスタンドがあろうとは。
国道に出てガソリンスタンドに寄り、下呂方面に向かう。
今日は土曜日。週末である。だからライダーもたくさん見かけるのだが、これがまたみんな手を振って挨拶してくれる。中にはまるで犬が喜んで尻尾を振るみたいに大きく手を振ってくれるライダーもいる。これがヤエーというやつなのか?
私自身はこう見えて人見知りなので自分から手を振ることはないが、手を振られたらもちろん振り返すし、あんなに大きく手を振って挨拶されたら、それはそれで嬉しいものだ。
昔はピースサインなんていわれていたけれど、あれだけ手をブンブン振り回すライダーはきっと最近乗り始めた人なのかな。どうなんでしょうか。
そんなこんなで祈るように林道の入り口へ。
通行止めの看板はない。よかった~。これで今日の全滅は免れた。
しかし、目の前の分岐は両方ともダートだ。さて困った。いったいどっちに進めばいいのかしら? 右か左か? 看板を見てもどっちがどっちなんだかさっぱり分からない。
右手に小郷東林道とある。左手には全く表記がなく木曽越林道なのか中腹林道なのかもわからない。こういう場合は「勘に任せて走る!」ってやると迷うだけ。
Googleマップの衛星写真で道の様子を確認する。地図には載ってなくても、衛星写真に道らしき線が写っている場合がある。それをうまく辿っていくのだ。
確認すると左手は繋がっているのかどうか判別できなかったが、小郷東林道からなら先にいけそうだ。
目指すは木曽越峠だ。
幸いにもこの峠はグーグルマップにポイントとして載っていたので、そこをマークして走ることにする。だからナビはしてくれなくても、木曽越峠までの直線距離は把握できる。
ところが、走り出してすぐまた分岐である。こんなに分岐があったんじゃどっちに行っていいか分からないよ! そんなとき、前から2台のオフロードバイクがやってきた。
声をかける。こんにちは、これ、どっちがメインだかわかります?
「あ、僕ら中腹林道走ってきたんですよ。でも途中分岐だらけでかなり迷いましたよ」。もうひとりも言う。「そうそう、オレら林道にどのくらいいる? 3時間はいるよね」。
そんなに分岐があるのか……。まるで迷宮、ダンジョンだ。まだ進入して1kmしか走っていないのに、その恐ろしさを垣間見た。
「すみません。僕らもこれどっちが正解かわからないんですけど」
私は、左の方は今私が来た道ですぐに終わること、Googleマップを見たところでは真っ直ぐ進んでもぐるっと回って元の場所に戻りそうだということを伝えた。
「じゃあ長く走れる方行ってみます!」
30歳前後だろうか、若い2人が気持ちよさそうに走り去っていく。
さて、彼らが来た方向が中腹林道だということはわかった。しかし、私が目指すべきはそのさらに上を走る木曽越林道だ。
事前に調べた地図だと、中腹林道の上にある木曽越林道と木曽谷林道というのが以前は繋がっていなかったようなのだ。ところが数年前に開通したことにより、中腹林道と並行して走るルートが完成した。つまり、中原林道よりも標高の高いところを通る林道がもう一本できたということになる。
ということは、ここから先、分岐が現れたらとにかく登っていく方をセレクトする。そうすれば自ずとたどり着くんじゃないか。
そんな予想を立てて走り出した。
目まぐるしく現れる分岐。降りていく方の道を排除して高度を上げていく。しだいに道は狭くなり、路面も荒れ始めた。
アドベンチャーバイクでは、オフロードに慣れていないと難儀しそうだ。決して大きな石ではないが、浮石なのでフロントタイヤを取られやすい。
分岐ごとに確認しようとGoogleマップ立ち上げたのだが、ついには電波を拾えず、道の確認ができなくなった。
ついに当てずっぽうで走ることになってしまったぞ。
すでに林道に入ってから10kmを走っている。しかし木曽越峠までの距離がいっこうに縮まらない。本当にたどり着けるのか!?
レポート:三橋 淳