以下レポート:三橋 淳
【水馬洞林道】スキー場を走り抜けて出合った絶景
大谷大栃林道を抜けると再び郡上八幡方面へと戻る。同じ道は走りたくないので、県道52号から郡上大和を回り込んで、念願の郡上八幡へ。しかし、今回もかすめるだけでそのまま国道472号へと出てしまった。あれ、郡上八幡城は? と思ったら裏から回り込んでいるので全く見えなかった。ショック。
過ぎてしまったことは仕方がない。そしてまたランチも食わずに北上して高山方面へと戻る。なんか岐阜に入って変形8の字のようなルート取りをしているな。
目指すのはめいほうスキー場。スノーボードを嗜むのでスキー場にはある程度詳しい方なのだが、岐阜のスキー場はほとんど知らない。ダイナとかはこの辺では有名だし、夏でもオフロードバイクのイベントをやっていたりするので知ってはいるが、めいほうスキー場は恥ずかしながら知らなかった。
そのめいほうスキー場を登っていくのが今回目指す水馬洞林道だ。スキー場の中を走るのだから、かなりの絶景らしい。
スキー場の看板どおりに国道から外れて細い舗装路を登っていくと、ゲレンデが目の前に現れた。
リフトがある! まさしくスキー場の中を走っていくのだ。舗装路だけど、ところどころ舗装が荒れていて、砂利が出ている。
とにかく景色がいい。あの山は御嶽山か? 遠くまで見渡せる絶景ロードだ。
そんな道を数キロ走ってゲレンデを登っていくと、ダート区間が始まった。路面はフラット。絶景とフラットダート! これぞアフリカツインで求めていた林道だ。
スキー場を離れて数百メートル走ると小さな祠が現れた。これが山中峠らしい。
ここからは下りになるわけだが、果たしてどれだけの距離を楽しませてくれるのか? この時点でワクワクである。
ところが、林道には電信柱が並び、電気が通っていることがわかる。この先になんかあるのか? この先は深い山なんじゃないのか? と変に思ったら、あっという間に舗装路に出てしまった。
ダートの距離はわずか3km。短いよ~!
絶景に釣られてこの林道を選んだのだけど、こんなに短かったとは。とはいえ、スキー場の中を走れる道路なんてそうそうないから、それはそれでいい体験した。
【面谷鉱山跡】アフリカツインに似合う荒涼とした景色
時刻はまだ14時だ。もうひとつお目当ての林道へ向かおう。しかし、そこは谷間だから急がないと陽が当たらなくて真っ暗になる。
北陸自動車道の荘川インターから乗って、白鳥インターまで一気にワープ。高速道路で時間短縮だ。時は金なり。
国道158号を抜けて九頭竜湖に到着。左折して橋を渡ろうしたら、なぜだか人がいっぱい歩いていた。
岐阜県から福井県に突入した。この九頭竜湖の南側にある面谷鉱山跡へと向かう。
遺跡や廃墟が好きだ。そのため立ち入れる鉱山跡地も大好物。しかもこの面谷鉱山跡は、片道5kmの林道を走った先にあるという。ピストン林道は大嫌いなので避けてきたが、こういう場所は別だ。
林道入り口。ここから面谷鉱山跡へと進入する。
嬉しいことに超フラットだ。川沿いに伸びるフラットダートは治水工事のトラックによって造られたものと考えられる。だから平日はとくに対向車に注意する必要がある。
初めは広かった谷がだんだん狭くなってくると、いよいよ面谷鉱山跡が現れた。予想していたより痕跡は少なく、言ってみれば分かりにくい。
この後ろにある石垣のようなものが、その跡地だ。
ここで面谷鉱山がなんたるかを説明しよう。
諸説あるが、古くは平安時代から銅が取れたというかなり古い鉱山で、江戸時代には大野藩によって統治。その後、三菱合資会社(現、三菱マテリアル株式会社)によって採掘が行われた。全盛期の大正時代には3000人もの人々が住み、奥越の中心の大野町にさえなかった電気を、自家発電で賄い、電話まであったという最先端の町が、この跡地にあったというのだ。
ところが、大正7年。世界で猛威を奮っていたスペイン風邪(インフルエンザ)が日本に上陸。注意を促す診療所の院長の声虚しく、鉱山の劇場で家族の慰安会が催されたことで村民全員が感染してしまう。結果90名が死亡し、鉱山が一時閉山する事態になったという。
しばらくして再開するものの、第一次世界大戦後の銅需要の減少と安価な輸入銅に押されて採算が取れなくなり、大正11年に閉山した。
この歴史は、コロナ禍の今の日本に通じるものがある気がする。
かつて賑わったという面影はどこにもない。さらに進めば、荒涼とした景色が広がるだけだ。
色の乏しい景色にアフリカツインの赤が映える。
あまりにいい景色だったので撮影に夢中になってしまった。すると一台のバイクがトコトコとやってきた。よく見るとアフリカツインじゃないか。声をかけられる。
「いっぱいいじってるアフリカツインですね」
「ありがとうございます」
「あれ? もしかして、有名な方ですか?」
「そうでもないですよ」
「いや、なんか見たことある、えーっと誰だっけ」
まぁ私の知名度なんてそんなもんです。元々有名になろうなんて思ってないから気にもしていません。
それよりも林道で、オフパターンのタイヤを装着したアフリカツインユーザーに遭遇したのが嬉しい。しばらく話し込んでしまった。
ピストンの林道を戻りがてら、途中にあった河川敷でちょっと遊ぶ。簡単そうに走っているが、実は石ごろごろで苦戦しています。
夕陽とともに九頭竜湖の橋に戻ってきた。さすがに誰もいない。
後で調べたら、この橋は「夢の架け橋」と呼ばれているんだとか。正式名は箱ヶ瀬橋で、本州と四国を結ぶ瀬戸大橋のプロトタイプとしてかけられたんだそう。
いろんなところにいろんな歴史があるんだね。
この旅はじめての雨キャンセルで連泊
さて、今夜の宿を決めなくては。現在16時30分。福井県に入ってきているのだから、そのまま西に進むのが順当だ。近くの大きな町といえば大野市。もう少し距離を伸ばせば県庁所在地の福井市もある。
九頭竜湖周辺は電波が入りにくいので先を急ぐ。
大野市に入ってまずはガソリン給油。同時に宿探し。今回は1発で見つかった。
福井市のビジネスホテルに泊まることにした。駐車場があり、しかも屋根付き。完璧だ。
翌日。
東京を発って6日目となる。雨が降っていた。雨の中は走る気がしない。というわけで、連泊することに。これで今日はホテルに引きこもりだ。
本当はアニメでも見てのんびりしたいところだったが、溜まった写真の整理を忘れないうちにやっておく(当連載、第一回東京発の原稿はこの日ここで書いた)。
部屋はこの有様である。
ダカール・ラリーには中間日に休息日があるのだが、泊まったホテルではこんな感じだったなぁ。大体洗濯で1日終わっちゃうのだ。
さて、昨晩の夕食の話を割愛したのには訳がある。見事に外したのだ。飛び込みで行けばそうなることもあるさ。
で、雨で連泊となった2日目の福井である。時間はあった。徹底的にリサーチをして「猿の盃」というお店を選んだ。
ミシュランプレートを獲得した店だという。
ミシュランプレートとは何か。ミシュランガイドで星が付くというのは、そりゃ高級で美味しいレストランだろうというのは大体わかるはずだ。でミシュランプレートはというと「星獲得には至らなかったが、ミシュランの基準をクリアしている」。なんだって。調べたらそう書いてあった。
つまり星はないけどうまいよ! ってことだろう。しかも比較的値段がカジュアルだという。だったら期待大というわけで、意気揚々と出かける。
しかし店に入って驚いた。メニューに値段が書いていない。全て時価。そんなの怖くて頼めないよ。恐る恐るお店の人に尋ねてみる。
「あの~、この店で一番高いのってどのくらいするんですか」
「高いのねぇ~。ノドグロは高いですよ。1匹2000円かな」
に、2000円ですか、ノドグロが!?
ノドグロといえば有名な高級魚ですよ。それが一番高い値段だって聞いて、気が強くなる。当然ノドグロを注文する。
半身もできるというのであえて半分。1000円なり。なんで半分にしたかというと他のものもいっぱい食べたかったから。私は欲張りなのです。
地酒と海鮮も頼んだ。最高です。
ワタリガニもいただいちゃいました。
昨夜のリベンジとばかりに食べて飲んで満足です。値段も四桁台でリーズナブル。来てよかったぁ。
リベンジは叶った。明日の天気予報では朝から晴れるというので、備えて早く寝ますか。
レポート:三橋 淳