談：伊藤真一／まとめ：宮崎健太郎／写真：松川 忍／モデル：国友愛佳
エンジン特性の変化が、ハンドリングにも影響している？
エンジンが旧型よりスポーティになったこともあって、新型のハンドリングの印象も旧型から変わりました。旧型はエンジン搭載位置の低さから重心がかなり低く、ホイールベースの長さもあって、フロント側から回り込むスーパースポーツ系の操安性とは異なる、リア側から回り込むフィーリングでした。旧型はピッチングが出ないので、フロントの旋回がさせづらかった。
新型はそういうイメージがなく、いい意味でフロントにウエイトが乗りっぱなしになっていると言うか、ある意味普通のバイク…いつものホンダ車のハンドリングという感じになっています。足まわりのコンポーネントは旧型も新型も一緒で、セッティングを変更しているとのことで、キャスターもトレールも数値は変わっていません。でも走らせて見ると、新型はキャスターが立った、というよりエンジンとフレームが近くなった…ようなイメージを受けましたね。
あとDCTモデルはどうしてもUターンでブレーキを使うことになりますが、リアブレーキを使いつつ、フロントブレーキも引きずってUターンするのが、新型は旧型よりもやりやすくなっていました。多分、フロント側の接地点に荷重が乗っていなかったのが、旧型の曲がりづらさに結びついていたのかもしれません。ブレーキについては、フロント側はちょっとタッチとコントロール性があまり良くない印象でした。一方リア側については、タッチもコントロール性も両方良かったです。
タイヤ空気圧は前250、後290kPaですが、パンパンで跳ねるような印象はなく、素晴らしく乗り心地が良かったですね。今回は未舗装路を試すことはなかったのですが、採用しているOEMタイヤの舗装路での接地感はとても良いです。あのパターンで良いフィーリングを出すのは難しいと思いますが、上手くまとめ上げています。コーナーでの楽しさは、確実に新型は旧型より上がっており、スポーツバイクとしての出来も良くなっています。
NCシリーズは、ダミータンク部のラゲッジスペースが特徴ですが、あそこに最大積載量の5kgのウエイトを積んだ場合、どんな風に走りが変わるか試してみたかったですね。重心の変化で、どのようにハンドリングが変わるか試すことができますから。
新型NC750XのDCTを経験すれば、MT好きもDCTを選択するかも？
まぁそんなことを試して面白がるのは、自分くらいかもしれませんね（苦笑）。2020年にNC750Sが廃盤になり、現在一般向けにはこのXだけが販売されていますが、新型のエンジン特性とハンドリングが生み出すレスポンスの良さと軽快感は、ネイキッドのNC750Sによりマッチするかも、と思いました。今後NC750Sが復活するかどうかは、定かではありませんけど…。
前回紹介したX-ADVは、新型になってその中身が大きく進化した印象を受けました。そのことに、感動を覚えたくらいです。一方、NC750Xについては、スタイリングが良くなって、質感が良くなって「クラス感」が上がった印象があり、エンジン・車体ともにスポーツ性が高められています。でもX-ADVのように、変わったことによる感動というものは正直薄かったです。
どちらも正常進化、ということには代わりはないのですが、NC750Xについては旧型でもそうだったように、「必要十分」さがより強化されたという感じです。バイクから乗り手へ訴えかけるような「主張」は薄いですが、街乗りやツーリングなどで走らせているときに、バイクの「主張」が走らせている人の気持ちの邪魔をしない、と言いますか…奥ゆかしいけど、しっかり高性能という感じです。
NC750Xを選ぶ方は、バイクに走りやスタイリングなどの強烈な個性を求めるタイプというより、バイクを使って行うこと…街乗りでの扱いやすさを重視したり、ツーリングでの景色を楽しめるとか、そちらの方に重きを置くタイプなのではないかと思います。後者の方にとってNC750Xのようなモデルは一番望ましいバイクでしょう。バイクが主役ではなく乗り手が主役で、バイクを走らせているときの気持ちを、阻害する感じがNC750Xには一切ありませんから。
個人的には、クラッチレバーを握って、左足でシフト操作することが苦になることは全くないので、MT（マニュアルトランスミッション）とDCTが両方設定されているときはいつもMTを選んでいました。
でも新型のDCTモデルに今回乗ってみて、新型のMTに乗って比較したわけではありませんが、自分がどちらかを選ぶ場合に、DCTの出来の良さから特にMTを選ばなくても良いかな、と思いました。今まで色々なDCT採用車に乗ってみましたが、新型NC750XではDCTの違和感みたいなものは、全然覚えることがなかったです。このあたりは、新型の進化を感じましたね。
