談:伊藤真一/まとめ:宮崎健太郎/写真:松川 忍/モデル:国友愛佳
伊藤真一(いとうしんいち)
1966年、宮城県生まれ。1988年ジュニアから国際A級に昇格と同時にHRCワークスチームに抜擢される。以降、WGP500クラスの参戦や、全日本ロードレース選手権、鈴鹿8耐で長年活躍。現在は監督としてAstemo Honda Dream SI Racingを率いてJSB1000、ST1000クラスなどに参戦中。
ホンダ「NC750X DCT」インプレ(伊藤真一)
新型エンジンの採用で、走りの印象が従来モデルから一変
この企画でNC系モデルを取り上げるのは、2017年のNC750S以来ですね。個人的にNC750Xは気に入ってたモデルだったので、新型がどのように仕上がっているかには、非常に興味があります。前回テストした、同じプラットフォームのX-ADVの出来映えが実に良かったので、期待はすごく高かったです。
新型NC750Xはフレームが新設計のものになり、車重が5kg軽くなっています。実際の寸法がどうなのかはわからないですが、新型に対して旧型は見た目的にもう少し大柄に感じた気がします。乗ってみての感想も、新型よりももうちょっと大きいものに乗っていたような印象でした。新型ではそれが、コンパクトに感じましたね。旧型ではフロントまわりのカウルの幅を意識したり、その重さを感じた記憶があるのですが、新型では見た目にも細身になって、それがなくなりました。走りも旧型より軽快になった印象で、そして全体のスタイリングが格好良くなりましたね。
走らせてみて軽快さを感じるようになったのは、新型のエンジンが変わって、電スロ(スロットルバイワイヤ)を採用したことも影響しています。新型のエンジンはレスポンスも良くて、旧型よりもシャープさが出ていますね。旧型のエンジン特性は4輪的で、トルクの出方がゆっくりしていて、スロットルを開けてから遅れてトルクが出てくる感じでした。新型は旧型よりも、スロットル操作に直結するようになっています。
旧型同様、新型のエンジンは低中速からトルクが出ており、さらに旧型よりレブリミットが高められ、最高出力が4馬力向上しています。でもキャラクター的には新型は、高回転域まで引っ張らなくてもいいエンジンになっていますね。旧型も低中速域のトルクが豊かでしたが、スピードレンジが高いシチュエーションではちょっとアンダーパワー気味だったので、レブリミットに当てて走ってしまうことがありました。車体が前に出ない印象からもっと回したくなる、という感じです。
一方新型は、同じナナハンのエンジンなのに全然違う印象で、旧型よりも余裕ができたというか…。旧型より高回転まで回せるけど、そこまで回さなくても不足を感じませんでした。新型のX-ADVもそうでしたが、旧型に比べると本当にナナハン? 800ccになっているのでは? と思うくらいです。数字上の出力アップよりも、力感が上がったような印象を受けました。DCTモデルは1~4速のギアレシオが、旧型よりローレシオ化されているいるのも、その印象に影響しているのでしょう。
新型は電スロを採用したことで、スポーツ、スタンダード、レイン、ユーザーと、4つのライディングモードを選べるようになっています。自分の走りでは、街乗りでもうちょっとレスポンス欲しいかな、と思ったときにスポーツを選択しましたけど、基本的にはスタンダードで十分、という感じでした。ツーリングのときは、あくせくしてモードを弄って走らせるよりも、何も考えずに景色を見て楽しむことに集中したい…そんなエンジン特性ですね。
パルス感、鼓動感が魅力の新型並列2気筒エンジンを採用!
軽量化ピストン採用、吸排気系の見直しで最高出力をアップさせた新型エンジンを搭載。「旧型と比較すると躍動感が出たというか、走らせていての小気味良さが増した印象ですね」と伊藤さんも、改良による効果を高く評価していました。