文:山口銀次郎/写真:西野鉄兵
ホンダ「リード125」通勤インプレ
ファミリーバイクの誕生から端を発した日本のスクーター文化は、「家庭に一台」の存在から、家族それぞれの用途に合わせ細分化され、多くの個性的なモデルが生み出されていった。そんなファミリースクーター創成期の1980年代初頭にリリースされたリードシリーズは、名称こそ先駆的だが落ち着いた佇まいで、幅広い年齢層に受け入れられロングセラーモデルとなっている。
また、現在でも排出ガス浄化の一端を担うキャタライザーといった、環境性能に配慮した機能をイチ早く採用する『率先』した姿勢が伺えるモデルともいえる。
1980〜2000年代を知る者として「LEAD」と聞くと、“ドッシリ落ち着いたアンコ型”のコンサバティブなフォルムといった印象が強いが、今回試乗した2017年デビューのリード125はとても先進的かつ先鋭的なデザインで、軽快感ムキ出しのスタイリッシュ番長となっている。
足着き性&足出し性を考慮しスリム化が図られたフットボードスペースや、跳ね上がるラインを描くボディライン、ボリュームを抑えたフロントカバー等々、排気量からするとワンサイズ下の車格と言っても過言ではないかもしれない。
乗車姿勢はオーソドックスな設定で、前後長のあるシートのお陰で自由度が高くなっている。この事からも見た目だけではなく、乗車姿勢で強制される圧迫感やワイドな操作系による取り回し辛さがないため、125ccスクーターのサイズとは思えないコンパクトな車格といった印象が強い。
しかも、フットボードの前面は切り立っており、ゆったりと前方に足を投げ出すような姿勢が取れず、ある意味“お行儀の良い”足元事情ゆえにコンパクトなイメージに拍車がかかっていたのかもしれない。
そんなダウンサイジングな車格に対して、エンジンはパワフルで実に味わい深いものとなっている。突出した加速力やトルクの太さがあるワケではないが、全体的に穏やかなツキで滑らかな速度上昇をみせる。ある意味、穏やかな性格といった印象を受けてしまいがちだが、しっかりと速度管理&認知しておくべき! と、強調したくなる。
というのも、ゼロ発進時にアクセラレーター4分の1程度の開度といった「焦らず、ゆったりのんびりスタート」のはずが、5〜6秒後には60km/h以上の速度に到達している、いわゆるアクセラレーター全開スタート時と「あまり変わらないじゃないか!」状態に。
他のスクーター同様に無段変速Vベルト式ミッションを採用するが、通常ならとりあえずブン回るエンジン回転数に対してワンテンポ遅い速度のノリをみせるが、上昇するエンジン回転数に合わせるかの様に速度がノッてくるのである。それは、大排気量車が体重+車重に対してなんの抵抗もなく軽やかにフワリと押し進めるといった雰囲気に近く、125ccという排気量のイメージを覆す大きな底力(大きなトルクなんでしょうね)を感じた。
というワケで、エンジン回転数上昇と共に速度もノるということで、あっと言う間に法定速度上限に達してしまうのだ。無論、そこからさらに、本領発揮と言わんがばかりに元気ビンビンに速度を上乗せしていってしまう……。なので、トバしているつもりがなくてもビックリ速度が出てしまっているかもしれないので、速度管理&認知を徹底してくださいね〜、と念押し。
また、半分以下のアクセラレーター開度で十分過ぎる速度にノせることができるのであればと、燃料補給の1回分の走行距離をアクセラレーターの半分以下の開度での走行を徹底してみると、通常走行時と比べ約10km/L以上もの低燃費を実現することに。これは、とてもお得である。ちなみに、デジタル目盛りの燃料計表示は、最後の一目盛りが点滅しつつ完全なガス欠になるので、「最後の目盛りが点滅したら即給油!」を心がけましょう。←身をもって体験したと言わざるを得ない。
先祖代々受け継がれる老若男女に愛される特徴のひとつとも言える、リア10インチタイヤ採用の低重心ならではのとっつきやすさは健在だ。
また、125ccモデルとして落ち着いたハンドリングを提供するべく、フロントに12インチタイヤを装備し前後異径コンビネーションタイヤ設定で、切込む様なクイックリーなクセは皆無となっている。フィーリング的にはフロントタイヤのサイズ以上の「粘りある」とも言える安定感あるハンドリングとなっている。
フロントはディスクブレーキで後輪はドラムブレーキといったブレーキシステムに、安定したブレーキングを実現する前後連動コンビブレーキシステムを採用している。コンビブレーキは左ブレーキレバーのみの操作で、絶妙かつ適切な前後制動力配分が自動的に行われるので、スマートなブレーキングを補助してくれるのだ。
ただ、スラロームなどで車体を寝かしこみつつリアブレーキにて減速調整をする際には、フロントにも制動力が発生するために車体が起き上がる傾向に。
スタイリッシュになってもリードらしさを大切に、そして熟成と進化を続けてきたからこそ現在ある絶頂。そんな姿に感慨に耽って走行していると、前後を走るバイクもリード125だったというのが都内の日常だ。さすが人気者! ちなみに、その脇をPCX150/160がドえらい勢いで追い抜いていくといったシチュエーションも度々あった。