文:太田安治、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
SYM「JET X125」インプレ(太田安治)
スタイリッシュなボディと爽快な走りの注目モデル!
125~200ccクラスのスクーターを主力商品とし、多くの車種を展開しているSYM。スクーター大国である台湾屈指のメーカーだけに、各モデルの完成度とコストパフォーマンスの高さにも定評がある。この「JET X」は登場したばかりの新型だ。
車体のサイズはホンダのPCXやヤマハのNMAXよりわずかに大きい程度。ライディングポジションはPCXのように車体に潜り込むようスタイルではなく、ライダーが上から押さえ込んで積極的に操れるタイプ。ステップフロアの前側まで脚を伸ばすこともできるから、大柄なライダーでも窮屈さは感じないだろう。
水冷単気筒のエンジンは振動/騒音とも抑え込まれていてガサ付き感はなく、信号待ち時やクルージング中の感触は日本車にも引けを取らない上質なもの。
クラッチが繋がり始めるのは約3500回転で、全開加速では6000回転台後半をキープし140kgの車体を押し出すスポーティーなセッティングになっている。その車格から、試乗前はもっと穏やかな反応を想像していたが、発進停止の多い市街地を俊敏に駆け回れる設定だ。
感心したのは操縦性と乗り心地の見事なバランス。前後14インチのホイールにやや細めのタイヤをセットしたことでハンドリングが軽くて素直。スラロームのように連続して切り返しても前後タイヤがバラバラに動く感触がなく、フレーム剛性の高さを実感できる。
加えて前後サスペンションがストローク量を有効に使って衝撃を吸収するから車体がピョコピョコ跳ねることがなく、荒れた路面や段差越えでの安定性と快適性が素晴らしく高い。台湾やヨーロッパのライダーは荒れた路面でも遠慮なく飛ばすから、SYMとしては普通の設定なのだろうが、日本の道路環境にもマッチしている。
試乗車は登録したての新車だったのでブレーキのストローク奥での食い込み感こそ薄かったが、前後連動ブレーキの配分や、ブレーキ自体の効きは文句なし。濡れた路面でも安心してレバーを握り込めた。
JET Xのキャラクターは、ラグジュアリーなPCXとスポーティーなNMAXの中間で、少しNMAX寄りといったところ。長時間ライディングでの快適性と、市街地でのキビキビとした機動性、どちらも欲しいライダーを満足させてくれる「いいとこ取り」の仕上がりになっている。