文:中村浩史/写真:松川 忍
ペアスロープ 取材レポート
経年変化ではなく革は経年「美化」する
「革ジャンは10年〜20年もの、30年だって持つよって言い続けてきましたけど、ようやくそれが実証できてきましたね。うちは2023年で創業40周年。初期に発売した革ジャンを、今も着続けてくれている人がいるんです」と言うのは、革ジャンを作り続けて40年、ペアスロープの三橋さん。このところ、革ジャンの「経年変化」ならぬ「経年美化」に注目、あらためて革ジャンの良さをアピールしている。
ペアスロープの革ジャンは、創業から一貫してメイドインジャパン、それどころか店舗2階の工房で、職人が一着ずつ手作りしている。
「大量生産なんてできませんから、1日で一着と少し、2日で三着というペースですかね。おかげさまでいつも納品に追われてます(笑)」
革ジャンの人気上昇は肌で感じているという三橋さん。それでもペアスロープはずっとマイペース。安い買い物ではないから、購入いただいたお客さんの革ジャンを、ずっと着てもらえるようにヘルプもしている。
「革ジャンをていねいに着る必要なんてないですよ。通気性がいいように、クローゼットにしまい込まないで部屋にかけます。ハンガーも肉厚幅広を使ってあげるといいですね」
それでも、10年〜20年も着るとなると、革のメンテナンスも必要になる。これも、難しいテクニックは必要ない。定期的なオイル=保革油の補給だ。
「うちの製品で言うと、購入して1〜2年はオイルを塗る必要はありません。その後、年に一度くらい保革油を補給してもらえればいいんです。よく擦れる箇所は指でオイルを塗り込むことで削れ防止になります。表面に薄く延ばして、乾拭きするとなおいい」
そうやって使い込んだ革ジャンは、何とも言えない風合い、色の深み、表面のツヤを持つようになる。愛用すればするほど味わいが深まるのが革ジャンなんだ、と三橋さんは言う。
「ショップに私やスタッフの私物革ジャン、それも20年以上も着続けてきたものを展示してみたんです。その風合いで、あらためて革ジャンのファンになってくれるお客さんもいて、あぁ革ジャンを作り続けてきてよかったな、と。やっぱり革ジャンっていいよな、って再認識してますね」
形をじっくり吟味して、一生ものの革ジャンを手に入れてみて、と三橋さんは言う。ライダーと同じように、革ジャンも「大人」になるのだ。
ペアスロープ製革ジャンの素材となるのが牛/馬/鹿といった原皮。
下写真の上から順に牛革よりも軽く、着心地のいいソフトホース、一番メジャーな素材と言えるステア(生後約2年の牝の成牛)牛革、柔軟伸縮性に優れ、引き裂き強度の強い鹿革。タイプや使用用途などによって、適材を使い分ける。
ペアスロープ おすすめレザージャケット
生後約2年のステア牛革を使用した、表面の張り感も美しいシングルライダース。バイクを離れても違和感のないシルエットで、サイドにアジャスタベルトを採用。背中には可能な限り大きな面積の革を使用。引き裂き強度も強い。
約10色から選べるカラーを、ボディと袖で組み合わせられる、オールレザーボディのスタジャン。裾と袖に耐久性の高い丈夫なリブニットを使用し、明るい配色ならばカジュアルなスポーツに、ダーク系の組み合わせならバイク用、と選択肢も広い。受注生産品。
30年以上も作り続けている、耐久性のある、革ジャンの定番素材であるステア牛革を使用した、スウィングトップ型の革ジャン。バイク用と意識させないスタンダードなスタイルで、裾のフィットラバー、襟のスタンドカラーも流行に左右されず、長期間の愛用に耐える一品。
文:中村浩史/写真:松川 忍
※この記事は月刊『オートバイ』2021年12月号の特別付録「RIDE」に収録した内容を一部再編集して掲載しています。