文:宮崎敬一郎、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
ホンダ「NT1100」開発者インタビュー
NT1100の開発者の皆さんに開発時の想いについて伺ってみた。ライダーがいかに気負うことなく走りを楽しめるか、ということにフォーカスした、彼らの「おもてなし」の気持ちの結晶、それがNTなのだ。
上質なフィーリングを徹底した大人の1台
「次世代のスポーツツアラー、という企画が立ち上がったのはコロナ禍が広がる前くらいの時期でした。ユーザーの方への調査などを行ないながら、こんなツアラーがあったらいいね、というのをカタチにしていきました」
そう語るのはNT1100のLPL、清野さん。日本ではあまり馴染みがないかもしれないが、実はこのNT1100は、ドゥービルという愛称で親しまれたNT650V/700Vの流れを汲むモデルなのだ。
「NTシリーズは、快適性が非常に高く、使い勝手に優れていて、欧州で高い評価をいただいていました。そうした魅力を引き継いで、幅広いシーンで快適に楽しんでいただけるバイクを目指しました」
NT1100を語る上で重要なキーワードが「快適」と「上質」。開発チームの中でも、この2つのテーマは徹底して意識されていたようだ。林さんはこう語ってくれた。
「快適性にこだわって、ライディングポジションはシートやステップの位置を一から考えました。アフリカツインより若干前傾ですが、お尻が痛くならないよう、ステップ位置を若干後退させています」
さまざまな条件の道を踏破し、時にはタンデムや積載もこなすNT1100のサスセッティングについて、野々山さんに聞いてみた。
「ひとつの目的に特化するのではなく、幅広い用途に対応できるセッティングを目指しました。フロントにはトリプルレート、リアにはダブルレートのスプリングを採用し、サスストロークも長く取ることで上質なフィーリングを実現しています」
快適で上質、というとエンジンのセッティングも重要になる。飯干さんに聞いた。
「ギクシャクしてしまうと車体の姿勢変化が大きくなってしまうので、ピックアップのきつくない、スムーズな特性を目指しました。ツイン特有のパルス感も、あまり強調しすぎると疲れてしまうので、適度に抑えました」
エンジン同様、DCTもスムーズな変速を目指したそうだ。大山さんが語る。
「目指したのは気持ちのいいつながりです。より自然に、ストレスなく変速できるようなセッティングを目指しました」
パニアケースをつけた姿もよく似合う、大人のライダーが旅を楽しむための上質な相棒。NT1100の醍醐味は、より遠くに、より長く乗ることで堪能できるのだ。
「目線を上げて、周りの景色を味わいながら、楽に移動を楽しんでいただけたら嬉しいです」(大山さん)
ホンダ「NT1100」主なスペック・価格
全長×全幅×全高 | 2240×865×1360mm(スクリーン最上位置・1525mm) |
ホイールベース | 1535mm |
シート高 | 820mm |
車両重量 | 248kg |
エンジン形式 | 水冷4ストOHC(ユニカム)4バルブ並列2気筒 |
総排気量 | 1082cc |
ボア×ストローク | 92×81.4mm |
圧縮比 | 10.1 |
最高出力 | 102PS/7500rpm |
最大トルク | 10.6kgf・m/6250rpm |
燃料タンク容量 | 20L |
変速機形式 | 6速DCT |
キャスター角 | 26゜30′ |
トレール量 | 108mm |
タイヤサイズ(前・後) | 120/70ZR17・180/55ZR17 |
ブレーキ形式(前・後) | ダブルディスク・シングルディスク |
メーカー希望小売価格 | 168万3000円(消費税10%込み) |
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文:宮崎敬一郎、オートバイ編集部/写真:南 孝幸