125ccといえばやっぱり「便利な」原付ニ種スクーターが大人気。
けれど、今はマニュアルミッションのスポーツ125㏄が元気だ。
スピードだってそこまで出ないし、高速道路だって乗れないけれど
なーんだかやめらんないのだ。
文:中村浩史/写真:島村栄二
ホンダ「グロム」インプレ
不自由さを楽しむ今の時代に合ったあそびツール
いま一番人気の125ccスポーツといえば、GROMだろう。ミニサイズながら大柄なライダーも許容するライディングポジションで、21年にマイナーチェンジを受けた現行モデルは、4速から5速ミッションに進化し、さらにロングストロークの新型エンジンを搭載。持ち前のストリートでの機動力と、長い航続距離を両立するスポーツバイクへと進化した。
もちろん125ccゆえ、高速道路には乗れないけれど、往復300kmのショートツーリングだって充分こなす──ことの証明に、寒風吹きすさぶ1月にツーリングに出かけたのだ。
目的地は東京よりも温暖(なはず)の房総半島。ちょうど春から開始する「RIDE189ツーリングラリー」でお世話になる、ツーリングラリー本部のクラブBIG1にでも顔を出そう。
走り出したのは、新年早々に関東を襲った大寒波の日。事実、この数日前には数年ぶりに本格的な雪が降り、最低気温は0度を下回っていた。
防寒ウエアをきちんと着込んで、GROMで走り出す。GROMは何の苦もなく房総半島を南下、5速ミッションとなった新型ロングストロークエンジンは街中の法定速度60km/hがまるで平気で、周囲のクルマの流れに乗ってのクルージングでも、エンジンがうなる苦しさも感じさせない。
東京新橋の編集部からだと、大型トラックも多い湾岸線の国道357号から国道14号を走るんだけれど、唯一の心配は「サイズが小さすぎてガンガン飛ばす大型車から見えにくいんじゃないかな」と怖くなるくらいで、快適に距離を稼ぐことができる。
前後12インチタイヤは、エイプ以降のホンダミニバイクの定番。現在ではモンキー125もこのサイズで、身長178cmの僕も、ライディングポジションに窮屈さを感じないものだ。
ハンドリングはあくまでも軽やか。路面温度が10度を下回るようなコンディションでもグリップ低下の云々を感じさせず、何の苦もなく片道150kmのツーリングを走破。房総半島中央を縦貫する小さなワインディングを楽しむ余裕すら楽しみながらのショートツーリングだった。
125ccなんてビジネスバイクの延長で、50ccのちょっと豪華版、おじさんのたちの近所のアシ的バイク、と言われていた時期は確かにある。
けれど、そんなの今は昔。高速道路に乗れない、下道オンリーのツーリングという新しい楽しみを、より強く感じられるツールなのだ。