文:太田安治、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
ホンダ「CT125・ハンターカブ」インプレ(太田安治)
走る場所を問わず楽しめる、タフで愛らしいトレール
ハンターカブのルーツは1963年登場のC105H。スーパーカブ55からレッグシールドを取り去り、ブロックタイヤとアップマフラーを装備した独自のコンセプトが話題になった。その後1968年に副変速機付きのCT50が、1981年にはCT110が販売された。
かつてCT50やCT110に乗ったことがある僕から見ると、CT125は大きくてガッチリした印象だが、無骨なルックスはまさにハンターカブ。エンジンを始動させると、スーパーカブC125とは違った野太い排気音をアップマフラーから響かせる。
前側のシフトペダルを踏み込み、アクセルを開けるとグイッ! と力強く動き出す。エンジンはC125より低回転/高トルク型の特性。発進加速、登坂性能はC125より力強い。1速のギア比がショート(加速型)なので、動き出したら早めにシフトアップすると遠心クラッチ特有の変速ショックが抑えられる。
シフトダウン時にはさらに大きなショックを与えてしまいがちだが、マニュアルクラッチと同様にシフトダウンの瞬間にブリッピング(素早くスロットルを開閉する操作)してやればスムーズだ。最終減速比もショート設定なので最高速は100km/hを超える程度。もちろん、街乗りに不足はない。
荷物の積載を考慮したスーパーカブはリアサスのスプリングがかなり硬めだが、CT125はストロークを有効に使えるソフトめのセッティング。シートも肉厚で乗り心地は快適。あえて弱点を挙げるなら、細かな振動で長時間乗ると手がしびれるぐらいだ。
気になるオフロード走破性だが、しっかりストロークを確保した前後サスペンション、165mmの最低地上高により、トレッキングペースなら大きめのギャップ越えで下回りを打つことなく進んでいける。
オン/オフ両用タイプの純正タイヤはぬかるんだ場所だとタイヤの溝が泥で埋まってグリップが落ちるが、ブロックタイヤに交換すれば林道ツーリングも楽しめる。マフラーは出口の高さが約65cmあり、多少の水深なら走破できそう。電装系トラブルを起こす可能性があるので推奨できないが、これも心強いオフロード性能の一つだと思う。
「125ccで44万円は高い!」という声もあるが、CTの作り込み、上質な仕上げを見れば納得できるはず。しかも耐久性に定評のあるカブシリーズの一員だけに、間違いなく長く穏やかに付き合えるのだから。