文:太田安治、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
スズキ「アドレス110」インプレ(太田安治)
一層優しく快適になった名車アドレスの最新型
アドレス125とスウィッシュの生産終了により、スズキの原付二種スクーターで現在唯一の存在となったアドレス110。同社のインドネシア工場で生産して製造コストを抑え、東南アジアやヨーロッパ、オセアニアでも販売されているグローバルモデルだ。
アドレス110という車名から、強力なスタートダッシュと軽量コンパクトな車体による俊敏さで「通勤快速」と呼ばれていた2ストモデルを思い出す人も少なくないはず。しかし、最新のアドレス110は車名こそ同じでも設計コンセプトからして、まったく異なる別モデル。エンジンは穏やかな加減速特性が与えられた4ストロークで、前後タイヤは大径の14インチを採用。今回試乗したのは前後連動ブレーキを新装備した2021年型のスペシャルエディションだ。
走り出しから50km/h程度までの加速はスムーズのひと言。排気量の小さなスクーターはパワーを有効に引き出すため高めの回転でクラッチミートし、ポンッ! と飛び出すようにダッシュするものが多かったが、このアドレス110はスロットルを一気にひねり上げてもふんわりと動き出し、ライダーに負担を掛けない。
とりたてて速くはないものの、軽やかな回転フィーリングのまま高回転まで伸び、最高速は100km/hを超える。法定最高速度の60km/h巡航には余裕があるし、タンデムや登り坂でパワー不足の苛立ちを感じることもないはずだ。
好印象なのは安定性と軽快感をバランスさせたハンドリング。市街地に石畳舗装が多く残っているヨーロッパでは、段差の乗り越え性能を高めるため「ハイホイール」と呼ばれる大径タイヤ採用のスクーターが人気であり、生産国のインドネシアをはじめとする東南アジア諸国は路面状態の悪い道や未舗装路も多い。
となればスタンダードなグローバルモデルには道路状況に関わらず安心して走れるハンドリングが重要。アドレス110で市街地を走り回っていると、足着き性やシート下スペース容量低下というネガ要素より、大径タイヤがもたらす安定性を優先した開発コンセプトに納得させられる。しかもタイヤ幅が細めで寝かし込み、切り返しも軽快そのもの。渋滞路も文字どおりスイスイと走れる。
かつての「通勤快速」から「通勤快適」へと大きく転換したのが現在のアドレス110。高い人気を保ち続けている理由は、リーズナブルな価格だけではない。
スズキ「アドレス110」カラーバリエーション
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