文:太田安治、オートバイ編集部/写真:赤松 孝
アプリリア「SR GT 200」インプレ(太田安治)
ワイルドでスポーティなアプリリアらしいモデル
MotoGPシーンでの活躍、RSVシリーズとトゥオーノシリーズに対する高い評価で、スポーツ性の高いブランドとして認知されているイタリアのアプリリア。スクーターはかつて50ccから850ccまでラインアップしていたが、久々の完全新型モデルとして2021年登場したのがSR GT 200だ。
無骨ささえ感じる外装デザインとセミブロックパターンの純正装着タイヤ(ミシュラン・アナキーストリート)が醸し出す雰囲気はまさにアドベンチャー。エキゾーストパイプを可能な限り上側に寄せて最低地上高175mmを確保し、前後サスペンションストロークも122mm/102mmと長い。このあたりはライバルとなるホンダADV150よりもオフロード適性にこだわった結果だろう。車格はADV150よりもやや大きめで、足着き性も良くはないが、オフロード走破性と引き換えと考えれば納得できる。
タフなルックスで高い走破性を謳っているモデルだが、実情はストリートバイクとして使われることが多いだろう。そこで重要になるのはスロットルワークに対して違和感なく加減速する走行特性だが、これは小排気量スクーターが苦手とする部分。最大トルクの発生回転近辺を積極的に使う設定ゆえにゼロ発進が唐突だったり、常用回転域が高いことでせわしく感じる車種が少なくない。
しかし、SR GT 200は約2500回転で遠心クラッチが繋がり初めて穏やかに発進し、80km/hオーバーまで力強く加速する。100km/h時は約5800回転で、高速道路クルーズも快適。17.4HPという数値から想像する以上に余裕のある動力性能だ。
タイヤは前14・後13インチで、ハンドリングはニュートラル。ライダーの着座位置が高い割にヒラヒラ感が薄くて直進安定性もいい。コーナリング中の接地感の高さ、リニアな効き味のブレーキと併せ、「無理が利く」車体に仕上がっている。
ただしオフロードでのサスペンション底着きを防ぐためか、リアサスは硬めで、セミブロックパターンのタイヤからは低速域でゴロゴロとした感触が伝わってくる。市街地メインで乗るなら、プリロードを弱くセットしてスタンダードなロードタイヤに履き換えると、乗り心地全体がぐっと優しくなるだろう。
「高速道路も使いたいが、フルサイズの250ccスクーターは…」というライダーなら是非検討すべき一台だと思う。