全国的に不安定な天候に悩まされ、あちこちでライダーが雨に降られたゴールデンウィークも終わり、世の中は通常営業へ。今週末5/14-15は、埼玉県・オフロードビレッジで「全日本選手権モトクロス第2戦」、そして茨城県・筑波サーキットでは「テイストofツクバ 皐月の陣」(=TOT)が行なわれます。で、こちらではTOTの事前情報を! そのTOT、外出自粛要請も解除で、久々にフル入場OKです。21年神楽月の陣は各曜日2000人制限でしたもんね。
ご存知のとおり、年に2度行なわれる「絶版車の大運動会」ことTOT。決勝レースは2day制になっていて、14日(土曜日)に■ストリートファイター■ZERO2■ZERO4■モンスターA■モンスターBの決勝レースが、そして15日(日曜日)に■DOBAR1/2■ZERO3■ZERO1■モンスターEVO■F-ZERO■ハーキュリーズ/スーパーモンスターEVOの決勝レースが行なわれます。
注目は、土曜日に行なわれる、2022年からのニュークラス「ストリートファイター」ですね。これは現行モデルを中心とした、ストリートとかネオクラシックのマシンが出場するレースで、KATANAやZ900RS、MT-09/10、Z-H2やドゥカティ・ストリートファイター、BMW S1000Rが参加します。
事前エントリーでもトライアンフ・スピードトリプルやMT-09、Z900RS CafeやGSX-S1000がエントリーしているようで、改造制限も厳しく、この先の人気クラスになりそうな気配ですね。
そしてTOTの象徴クラスともいえる「モンスター」も土曜日が決勝。今回も50台以上のエントリーがあり、カタナがZがCBが、その空冷ヨンパツエンジンを唸らせ、鉄フレームと2本サスを軋ませて激闘を繰り広げます。
日曜のメインイベントは、やはりハーキュリーズ! これは全日本ロードレースに参戦している国際ライセンスクラスのライダーが出てもいい、鉄フレーム車ならばなんでも出場していいクラスで、行ってみれば何でもあり! 今回もNinjaH2&H2Rはいるわ、OVERレーシングフレームのオリジナルマシンはあるわ、それに鐵隼……?なんて読むの?って、これが2018年からTOTにチャレンジを始めたTeamKAGAYAMAと加賀山就臣の新しいオリジナルいマシンなんです。
2018年からカタナルックスのオリジナル鉄フレームマシン「カタナ1000R」をTOTに持ち込んだユッキー。やっぱりロードレースのライダーとしておなじみのユッキーですが、実は近年、ストリートでも乗るバイク乗り。たまーに自らのショップ「RIDE WIN」のお客さんとツーリングに出たりしていますしね。
もちろんユッキー自身、サーキットがメインだし、全日本ロードレースからの引退を宣言した今は、ヨシムラスズキRIDEWINの監督として、ヨシムラの全日本ロードレース活動の運営をしているから、街乗りは時々ね、っていうレベル。全日本ロードレース参戦を退いたいま、自分が走る場としてTOTに全力投球しています。
「カタナではハーキュリーズクラスのコースレコードも作ったし、ポールポジションも獲って優勝もした。ひととおりやり遂げたな、と思って次の展開を考えたとき、ハヤブサを思いついたんです」とユッキー。実はTeamKAGAYAMAのメカニックであるN氏が、いつだっけ何を思ったか、パーツをかき集めて1台ハヤブサを作る、ってことをやり始めたことがあったんです。
「そのハヤブサに乗せてもらったとこがあって、うわぁハヤブサ面白いな、速いじゃん、いいエンジンだねぇ、って思ったことがあって、そうすると僕、サーキット走らせたくなっちゃうんです」
もちろん、1300ccの水冷並列4気筒エンジンをアルミフレームに抱くハヤブサに、TOTに出られるクラスなんてない。
「でも鉄フレームに積めば出られるんでしょ?」というのがTeamKAGAYAMAのスゴいところ。GSX-R1000Rのエンジンを鉄フレームに積んだカタナ1000Rを作った時のように、鉄フレームのハヤブサエンジンのオリジナルマシンを作り始めたのだ。この行動力、いいねぇ!
方法論はカタナ1000Rの時と同じ。TeamKAGAYAMAの完全自社製で車体設計値を出し、鉄パイプを曲げ、溶接してオリジナルフレームを製作。カタナ時代よりも溶接跡が美しく、ステアリングヘッドやスイングアームピボットの完成度も高いオリジナルフレームを作り上げた。
そのオリジナルマシンのプロトタイプを、5月はじめの「ランドシャークレーシング」走行会に持ち込んでシェイクダウン! ハヤブサエンジンをサーキットで、しかも自分とこでつくったオリジナルフレームで、というトリッキーなマシンで、なんとユッキー、0分59秒台に突入! 今週末の決勝レース本番にスタンバイしているのです。
「やっぱりハヤブサの1300ccエンジンは、サーキットのことまったく考えてない特性だけあって、なかなか思うようには走れないね。なんていうか、低回転のトルクがすごくて、高回転を回したときにパワーが湧き出てこないんです。トルクありすぎて、シフトアップのたびに、タイヤがズルッとスピンしちゃう。いやぁ、なかなか強敵だよー!」
そう話すユッキーが、なんとも楽しそう。ちなみにオリジナルフレームに関しては「ビックリするほど普通に走る」そうで、TeamKAGAYAMAのフレーム製作スタッフをベタボメしていました。
ちなみに鉄フレームのハヤブサってことで鐵隼=テツブサと読むんだそうです。
その鐵隼シェイクダウンの模様が↓コチラ。この辺の手際よさが、さすがプロのレーシングチーム!
さすがにできたてホヤホヤのハヤブサでのデビューウィンは難しいかもしれませんが、そんな鐵隼が光元康次郎+H2RやOVERレーシングのオリジナルマシン、さらにハーキュリーズ表彰台の常連である山根光宏+900ニンジャ、松田光市+1000RX<RXが鯨っぽいから「鐵鯨=テツクジラって呼んでくれ」(松田コーイチ)だそーです笑>、新庄雅浩+ZRXらとバチバチの戦いを繰り広げるTOTが楽しみです!
ちなみに、外出自粛要請も解けたので、TOTは久々に当日券も販売します! 詳しくは下を!
もうひとつ! ユッキーがTOTを走るのは、もちろん「自分が走りたい」からなんですが(笑)、サーキット育ちのライダーとして、サーキットに一般のバイク乗りを呼び込みたいって思いがあるんです。21年11月の「TOT 神楽月の陣」では、カタナオーナーの専用パーキングも作って、カタナオーナーたちに来場を呼び掛けたこともありました。
今回も、そのカタナオーナーたちと、ハヤブサオーナーたちにも来場を呼び掛けてます。もちろん、その専用パーキングも作って、レース後にはパレードランもやる、しかもその集まりにユッキーも顔を出す「ハヤブサミーティング」的なものもやるんです。こういうとこが、ニクいとこだ!
それでは、今週末は筑波でお会いしましょう! 雨よ、降るな!
写真/小縣清志 文責/中村浩史