文:太田安治、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
ヤマハ新型「XSR700 ABS」インプレ(太田安治)
あらゆるシーンで楽しめるレトロ・ロードスター
街乗りからスポーツライディング、長距離ツーリングまで、幅広い使い方に応えるミドルクラスの優等生がMT-07。そのエンジンや車体といった主要コンポーネントを活かしながら、ヤマハの謳う「ネオ・レトロ」ルックに仕立てたのがXSR700だ。
2022年型は排ガス規制ユーロ5をクリアし、フロントブレーキのディスク径を282mmから298mmに大径化。標準装着タイヤもツーリング性能とスポーツ性能のバランスが絶賛されているミシュラン・ロード5となった。ほかにも灯火類のLED化、新型液晶メーター採用など細かく改良され、1980年代の名車「RZ」を彷彿とさせるグラフィックを採用して魅力をアップしている。
XSR700の走行性能で際立っているのは低中回転域での乗りやすさ。アイドリング回転のまま苦もなく発進でき、早め早めにシフトアップしてもグズらず、粘り強さを見せつけながら加速する。270度クランクを採用しているため排気音や振動の質はVツインエンジンに似ていて、どこか牧歌的なこともライダーに心理的な余裕を与えてくれる。
普段使いのペースだとシフトアップのタイミングは4000回転前後。最大トルクの発生回転数は6500回転だが、3000回転近辺から実用領域だ。6速・100km/hの高速道路クルージング時は約4200回転でエンジンは静かに回っているが、追い越し加速もシフトダウン不要。
こう書いてくると楽なだけで面白味が薄いのでは? と思う人もいるだろう。だが1〜2速での全開加速ではフロントタイヤが浮くほどのダッシュ力を見せ、レッドゾーン近くの高回転域でもフリクションを感じさせず軽やかに回る。スポーツ性能を求めるライダーを失望させない爽快さも秘めているのだ。
柔らかめにセットされた前後サスペンションと、公道走行速度域で受ける荷重に合わせた車体剛性により、ハンドリングも穏やか。タイヤがロード5になって乗り心地と安定性、絶対グリップが上がった。ブレーキディスク径が大径化されたが、公道走行で制動力や熱容量の違いに気付くほどの変化ではなく、レバーヘの入力に応じてリニアに制動力が増すので、ビギナーでもスムーズに扱える。
市街地からワインディングまで、多様なシチュエーションで乗るほどに魅力を再認識させるのがXSR700。ミドルクラスの良さを実感できる仕上がりだ。
ヤマハ新型「XSR700 ABS」カラーバリエーション
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