文:太田安治、オートバイ編集部/写真:赤松 孝
ホンダ新型「スーパーカブ110」インプレ(太田安治)
大きく向上した制動力と洗練されたパワーフィール
60年以上の長きにわたって世界中で愛され続けているスーパーカブ。小型モデルのEV化が進めば50cc版の存続が危ういと噂されていることもあり、カブシリーズを代表するモデルとなりそうなのが110ccモデルだ。その2022年型はモデルチェンジによってエンジンと足回りが完全に一新されている。
カタログ数値ではエンジンの最高出力は同じで、トルクが僅かに増した程度。ロングストローク設定への変更は排ガス対策で燃料をきれいに燃やし、フリクションも低減することが主目的だと思うが、低中回転での力強さと粘り強さも増している。
逆にロングストローク設定は高回転で吹き詰まり感が出がちだが、新型のエンジンはリミッターが効くまであっけないほど軽く吹け上る。振動が減ったことと併せ、加減速フィーリングは前モデルより大幅に洗練された。
目立つ変更は前後の足回りだろう。キャストホイール化で乗り心地が若干硬くなってはいるが、ブレーキを含めたバネ下重量を抑えたことでハンドリングの軽快さは変わらない。チューブレスタイヤが装着でき、パンクによる急な空気圧低下が招くリスクが減ったことは世界的にも評価されるはずだ。
ドラムブレーキの前モデルはタッチの良さと引き換えに、レバーを握り込んだときの食い込み感が薄く、制動力自体も控えめだったが、新型が採用したディスクブレーキは入力に対する反応がリニアになり、握った分だけしっかり減速し、タッチも安定していて扱いやすい。
多様なスキルのライダーが乗ることの多い車種はABSの介入タイミングを早めに設定したものが多く、急制動では思いのほか制動距離が伸びる場合があるが、新型スーパーカブ110はその部分も念入りに設定したのだろう。介入に不自然さがなくギュッ! と止まる。
独特のロータリー変速は、停車時にトップギアの4速から踏み込むとニュートラルに入るため、シフトペダルの踏み込みだけで変速操作が済むというメリットがあるが、慣れないと停車時に何速に入っているのか判りにくい。それだけにシフトポジションインジケーターの新採用は大歓迎。燃費計の追加と併せ、メーター機能は大きく高まった。
スポークホイールにドラムブレーキというスーパーカブ伝統の構成が失われたことを寂しく感じる向きも多いかもしれないが、力強さと上質さ、実用性を総合的に高めた新型はまさに正常進化だと言えよう。
ホンダ新型「スーパーカブ110」カラーバリエーション
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