欧州で人気を博したツーリングモデル、NT650/700Vの系譜を受け継ぐ新型車としてデビューしたNT1100。そのエンジン、車体のベースとなったアフリカツインのファンである伊藤さんは、その仕上がりに興味津々! 今回は2日間をかけて長距離を走って、ニューモデルの実力をじっくりと検証しました。
談:伊藤真一/まとめ:宮﨑 健太郎/写真:松川 忍

ワインディングしかり、高速道路しかり、スピードレンジが上がると魅力も増していく!?

おそらく前に試乗した方が前後サスのイニシャルをイジったのは、フロント側の接地感をもっと出したかったからなのかな? と想像しました。もっと舵が入って、より曲がるようにしたかったのかもしれません。標準設定にすると、正確に測ってはいませんがリア側は乗車位置が15mmくらい下がった感じで、バックミラーの映す像が標準に戻す前とがらりと変わりました。

一方フロント側は抜き過ぎだったようで、標準に戻すとノーズダイブの速さがなくなり、足着き性が良くなるとともにUターンも非常にやりやすくなりました。もしもフロントの接地感の希薄さが気になって、NT1100の前後サスを標準からイジるのであれば、リア側はちょっと絞めるくらい。そしてフロント側は標準のままか、そこからちょっと絞めるくらいがいいでしょうね。

NT1100が活き活きとするのは、低い速度域よりも高い速度域ですね。DCTをSモードにして、ワインディングをハイペースで駆けると、とても気持ち良いです。高回転域の排気音も心地良く、ツインスポーツ車らしいサウンドを楽しめます。エンジンも良く回って、トップエンド付近ではこんなに力があるの? さすが1100cc! と思うくらいパワフルです。

車重は248kgありますが、これくらい重いバイクですと一般的にどっしり、しっとりした乗り心地になることが多いものです。しかし、NT1100はスロットルを開けていけばきっちり曲がっていくので、峠道ではそのスポーティさを楽しめます。

ブレーキはフロント側については、減衰弱めなサスペンションなどの兼ね合いがあって、効き方は強烈ではないですが制動力は十分ある、という感じです。制動力の立ち上がり方も良くて、俗にいう「カックンブレーキ」ではないので扱いやすいです。リアブレーキは非常にコントローラブルで、とても気に入りましたね。

画像2: ホンダ「NT1100」インプレ(伊藤真一)

また高速道路でも、低速域よりも高速域の方がNT1100の良さが光る印象です。ただ高速域でNT1100を楽しんでいるときも、走行モードはツアーやアーバンではなく、自分好みに設定したユーザーモードを使っていました。いろいろと設定変更を試してみましたが、最終的にパワーは最弱の3、エンジンブレーキも最弱の3、トラコンはレベル最小の1にしました。

走行モード採用車の、パワーモード最強の「1」に対する、一般のライダーとプロライダーの感覚の違いとは?

本来ならば、NT1100のスポーツ性やポテンシャルを楽しむのであればパワーモードは最強の1、またはその次の2を選ぶべきなのでしょうが、自分としてはスロットルを開けていった後に、頻繁に戻さなくてもいいのが最弱の3だったので、それを選んだという感じです。

またエンブレもギクシャクした感じが1や2よりも緩むので、一番弱い3を選びました。そしてトラコンに関しては、制御が入ったときにレスポンスが悪くなるのが嫌なので、レベル最小の1を選んでいますが、これは路面などの状況に応じて2でも3でも良いかなと思いました。

NT1100に限らず、走行モードを選べるスロットルバイワイヤ採用車の場合、パワーモード最強の1はあまりスロットルを開けないタイプのライダーには、スロットルレスポンスが良くて、エンジンが元気あるように感じられて楽しめるのでしょう。

自分のようにロードレース歴が長く、スロットル開度が大きくて、馬力をフルに引き出す走らせ方が身に染み付いていると、パワーモード1が合わない印象になることが多いです。NT1100についても、1や2は自分のスロットルワークの感覚には合わなかった感じでしたね。

かつてのNT650/700系が欧州で高く評価されたこともあり、最新のNT1100もメインとなるマーケットはヨーロッパなのでしょう。欧州大陸をハイスピードで、快適に移動できるツアラーとしての造り込みですね。だから低速域の走り中心の街中よりも、高速道路やワインディングをハイペース寄りで走ったときの方が、活き活きとした印象を得られたのだと思います。

いろいろ難しい問題はあるとは思いますが、せっかく日本仕様を販売するのですから、もっと日本の道に合わせたパワーデリバリーと足まわりになっていたら…と思いました。あと、日本仕様には用意されていないMTモデルに試乗したら、どのような感想になったのか…とも思いましたね。

近年はアフリカツインのアドベンチャースポーツESなどの大型アドベンチャーがツーリング派のライダーたちにも人気ですが、オフロードを積極的に走ろうとは思わない、オンロードメインの使い方をする方にとっては、200万円前後のアドベンチャースポーツESに対して、160万円台と価格が大分安いNT1100は魅力的な選択肢になると思いました。

画像: 2日間のテスト中、初日はNT1100との付き合い方の探求に迷いを感じていた伊藤さんですが、次の日にはそのキャラクターを理解して、走らせ方を把握した様子でした。

2日間のテスト中、初日はNT1100との付き合い方の探求に迷いを感じていた伊藤さんですが、次の日にはそのキャラクターを理解して、走らせ方を把握した様子でした。

This article is a sponsored article by
''.