文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
※この記事は「ロレンス」で2022年5月29日に公開されたものを転載しています。
電動バイクメーカーも、アドベンチャーブームは無視できません・・・!?
近年世界で、最も売れているドゥカティがムルティストラーダであることが示すとおり、今アドベンチャーのカテゴリーは世界のモーターサイクル業界のなかでブームになっています。モーターサイクルの楽しみ方のメインストリームである「ツーリング」を楽しむのに向いている・・・というのが、昨今のアドベンチャー人気の理由でしょう。
そんなわけで、以前はあまりオフロード/デュアルパーパス系にはあまり熱心ではなかったメーカーも近年はこのジャンルに力を入れて、ニューモデルが続々登場して市場をにぎわせています。今まで、オンロードスポーツの電動車をリリースしてきたエネルジカが、初のアドベンチャーモデルである「エクスペリア」をリリースしたのは、この分野にも電動車の需要はある・・・と考えてのことなのでしょう。
最高出力は75kW(102hp)/7,500rpm!! 気になる航続距離は・・・!?
エネルジカがこのエクスペリアを造ることに対して、いかに気合を入れているのかはそのスペックから想像がつきます。車体、モーター、バッテリーはいずれもエクスペリアのために新開発したものです。大容量化・軽量化されたバッテリーは最大22.5kWh(公称19.6kWh)で、マスの集中と低重心化に配慮した車体に搭載しています。
新たに用意された永久磁石支援同期リラクタンスモーター(PMASynRM)もエネルジカ製の他車に比べ質量が軽く仕上げられており、これもバッテリー同様に低い位置に配置することで、操安性が不安定になりがちな低速域での扱いやすさに貢献しています。
エクスペリアは80〜102馬力という必要十分な出力を持っていますが、最高速度は180km/hでリミッターがかかるように設定されています。なお0〜100km/h加速は3.5秒というもので、アドベンチャーモデルの動力性能としては文句ないものでしょう。
現代の2輪電動車のウィークポイントといえば、バッテリー技術の問題からICE(内燃機関)搭載車には航続距離や補給時間にかなわないというものがあります。長距離ツーリングに使われることが多いアドベンチャーモデルゆえ、エクスペリアについても最も気になるのはこのあたりのスペックについてでしょう。
電動車の航続距離は使い方に大きく左右されるものですが、エネルジカの公表値はシティ420km、複合256km、エクストラ-アーバン208kmというもの。そしてWMTC(The World-wide Motorcycle Test Cycle)では222kmです。
充電については、急速充電(DCFC レベル3 モード4)で400km/時(6.7km/分)、低速充電(レベル2 モド2または3)で63.5km/時なので、エクスペリアはEVインフラが充実している国では実用的に使える仕様になっているといえるでしょう。
ICE搭載車に対する電動車の大きなアドバンテージ・・・電子制御に関しては、エクスペリアは6段階のトラクションコントロール、電気ブレーキを活用したクルーズコントロール、プリセット4種+ユーザーカスタム3種のライディングモードなど、非常に充実した仕様になっています。
なお現時点では価格が公表されていませんが、予約注文の受付はエネルジカの公式ウェブサイトでできるようになっています。エネルジカにとって最新の挑戦となるアドベンチャー分野への進出ですが、このエクスペリアが新しい市場をどのように開拓することになるのか・・・注目ですね!
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)