打倒CBRの新顔が続々
この週末は宮城県・スポーツランド菅生で全日本ロードレース第4戦が行なわれています。開幕戦もてぎ大会のあとの鈴鹿→オートポリスは2&4レースだったため、開催されたクラスはJSB1000のみ。他のJP250/J-GP3/ST600/ST1000は、この菅生大会が2か月ぶり、開幕戦に続く2レース目、ということになります。
2&4レースでは、JSB1000は1戦につき2レースを消化して来たんですが、この菅生大会ではJSB1000だけじゃなく、ST600も2レース開催。いつも土曜に決勝レースがあるJP250を入れると、きょう土曜日には、JSB1000のレース1/ST600のレース1/JP250と3つの決勝レースが行なわれました。1戦に2レースを消化しなきゃいけないチームは、単純に仕事量が倍になってタイヘンだけど、ライダーは忙しいけどやりがいがあって、お客さんも土曜から3レースも観られておトク、ってことですね。
JSB1000/ST600のレース1は下に結果を載せておきます。そう、WebオートバイといえばJP250クラスをがっちり応援しているので、土曜のレポートはJP250最優先なんです、ごめんなさい^^
JP250は、この菅生大会からちょっと動きがありました。というのも、今シーズンから従来の2気筒250ccマシンに加えて、KTM RC390とヤマハYZF-R3が参加OKになったんですが、21年シーズンから参加OKになっていたカワサキの4気筒マシンNinja ZX-25Rを含め、いよいよ「ホンダCBR250RRじゃないやつ」がそろい踏みしたのです。あ、BMW G310はまだだった!
これまでのJP250の歴史といえば、2016年に全日本選手権の併催イベントとして「MFJカップ」って名前でスタート。そう、実はJP250は全日本ロードレース選手権じゃないんです。優勝者も国内ライセンス/国際ライセンスと2名いますしね。
このJP250の初年度16年は、5戦中(ってことは優勝者10名)Ninja250が5勝、YZF-R25が3勝、CBRはまだ単気筒エンジンのCBR250Rでしたから、戦力均等の名目で300ccがOKで、このCBR300が2勝を挙げました。
これが17年には、シーズン途中からCBR250RRがデビューしたことで、6戦中(優勝者12名)CBR250RRが5勝、CBR300Rが4勝、YZF-R25が3勝。
18年にはいよいよCBR250RRの強さが飛びぬけ始めて、7戦中(優勝者14名)CBRが13勝、R25が1勝、19年には7戦中(優勝者14名)R25が盛り返して5勝、Ninja250が1勝、CBRは8勝。そしてコロナ禍が始まった20年は4戦しか行なわれず、最終戦の国内ライセンスクラスでNinja250が勝ったほか、CBRが7勝。そして21年は、ついに7戦14人の優勝者はすべてCBRでした。
これはイカン。CBRばっかりじゃないか。間口を広く、ローコストでイコールコンディションでやろう、と始まったJP250なのにCBR250RRのワンメイクになったらダメじゃんか、と「CBRじゃないやつ」の参加もOKになったわけです。
もちろん、CBRやホンダが悪いわけじゃない。ヤマハもカワサキも悪くない。こういう市販車改クラス、特にスーパースポーツ性能ばかりを狙わない250ccともなると、戦力均等策をレギュレーションで決めればいいんです。
その証拠に、世界スーパーバイク選手権(=WSBK)の併催イベントとして行われている世界スーパースポーツ300(=WSS300)では、YZF-R3を基準に、Ninjaは400でOK、KTMは390ね、ホンダはCBR500Rでいいよ、となっています。
もちろん、ここでも戦力不均等を防ぐべく、いくつか勝ったら回転数制限でマイナス500rpmを勝った回数、という風にハンディをつけられます。
つまり、日本はJP250がようやくそこへ向かって動き出した、ってことです。250RRを基準にヤマハはR3で、KTMは390、BMWは310でOK、と。ここでR3とかRC390が勝ちまくっていったら、そこでハンディをつけていけばいいんです。
そんなウヨキョクセツで参加OKになったNinja ZX-25R、RC390、YZF-R3が出揃ったのが、この菅生大会、というわけなんです。それでも、CBR250RRの17台に対して、YZF-R3が3台、RC390は2台、っしてNinja ZX-25Rが1台とはちょっと寂しい。ここは、マシン開発が進めば台数が増えてくる、と期待しておきましょう。
その菅生大会は、YZF-R3の独走で幕を開け、幕を閉じました。JP250初登場のYZF-R3は、これまで最強CBR250RRを送り出してきたTEC2で、ライダーは2006年の全日本ロードレースGP250クラス&2015年ST600チャンピオン、横江竜司(TEAM TEC2 & MOTOTEC-R4 & YSS)! ヤマハのホームコース菅生で、地元仙台でバイクショップを営むチャンピオンがTEC2のYZF-R3に乗るんですから、これは最強パッケージでしょう!
レースはポールシッターの#62横江がスタートから飛び出し、#56山根昇馬(KIJIMA KISSレーシング)、#73中村龍之介(ENDLESS TEAM SHANTI JP)、#27石井千優(SDG N-PLANレーシング)が2番手争い、というフォーメーション。YZF-R3にCBR250RRが3台で包囲網を作っていく--そんなレースになるかと思われたんですが……。
レースは、横江が序盤から2番手以降をグイグイ引き離し、独走状態! コースで見ていると、この4台のバトルでは、トップスピードはまだCBRが少し上なんだけど、250ccと320ccの排気量差か、やはりR3のトルクがCBRを引き離し、特にコーナーの立ち上がりですこーしずつ差がついていた感じでした。
「R3は1回シェイクダウンだけして、タイム出しするのは今回が初めてです。CBRと一緒に走ってみてわかるのは、CBRの方が回転がシャープで、上まで回るんですよね。トップスピードもヨーイドンしたら届かない。その代わり、320ccのトルクがあるので、アクセル開け始めで少し前に出られる。それが積み重なって勝てた感じですね。特にJPみたいな混戦のレースでは、ちょっとずつでも前に出ると展開が作りやすい。おととしはYZF-R25で出場して転んじゃったから、今回は走り切って、しかも勝ててよかった!」と横江。YZF-R3も、この後の開発次第ではCBR250RRを打ち負かせるマシンになるかもしれませんね。
JP250みたいに、間口が広く、ローコストでイコールコンディションを目指すレースなら、やっぱり出場マシンはたくさんあった方が楽しいものね! これでR3が連戦連勝しないよう、ハンデも上手につけてあげて、Ninja ZX-25RやRC390に関しても、もう少しコンセッションをつけて、BMWのG310Rも、もてぎでやっているG310トロフィのマシンが早くエントリーしてこないかなぁ!
写真・文責/中村浩史