登場当時からの憧れ、ビモータKB1を身近に置く
独創的なフレームワークのモデルを1970年代から送り出してきたスペシャルモデルビルダー、ビモータ。最近ではカワサキNinja H2エンジンを積んだテージH2やNinja1000 SXエンジンを積んだKB4を送り出し、改めてその名を思い起こさせている。
そんなビモータの名を世界に知らしめたモデルが、KB1だ。カワサキの空冷Z系・直4エンジンを積んだオリジナルコンプリート車。それでも総数1000台に満たない希少なKB1だが、PMCの代表・正本さんは3台保有している。なぜ複数台を持つに至ったのだろう。
「KB1は、私がバイクに興味を持ち始めた少年の頃に出会ってから、夢のまた夢。当時雑誌で見た、エンジンが吊り下げられたダイヤモンドフレームと、機能美溢れる複雑な作り込みに魅了されました」と正本さん自身が言うように、理由はストレート。格好いい、そこに尽きた。実際に手に入れたのは10年少し前からという。
「最初に買ったのはこの、ハーフカウルの車両。それから海外サイトとかで探してたら、オランダだかにあるフルカウル車を見つけて、知り合いのドイツ人に“ebayでKB1を見つけたので買ってくれないか”と頼んだら、出品者が彼の知り合いだった。それで“分かった、何とかするよ”と現地まで買い付けに行ってもらって、こっちに送ってもらった。レストア済みって車両でしたけど。
KB1は、それぞれ仕様が微妙に違うんですよ。それで何がどう違うのかも確かめたくなってもう1台って、3台になったんです。KB1には6Vのバッテリーがふたつ付いているというのだけは昔の印象として覚えていて、それが3台目を見た時に“うわ、これ、バッテリーがふたつ付いてる”って、答え合わせできました。その意味では、この3台目が一番、オリジナルに近いKB1なのかもしれません。最初のフルカウル車はZ1000Aのエンジン。ハーフカウル車はヨシムラのスムーズボアキャブレターが付いてますから、もしかしたらヨシムラチューンのエンジンかもしれないですね。ただ、もうオブジェにしていますから、開けるつもりはないです」
そう言う正本さん。ところで憧れのバイクというKB1、乗ったことはあるのだろうか。そこも気になってくる。
「ただ一度、ハーフカウル車に乗りました。若い頃の夢のバイクに乗ってみたけど、今のバイクの視点で見ると“なんじゃ、こりゃ”って(笑)。でも、このスタイルといい、ポジションといい、自分が若い頃に憧れて、絶対手に入らないだろうなって思ってたバイク。それが手に入ったんですから、ここ(社内ショールーム)で飾られて、それを見て喜んでいるだけ。でもそれでいいんですよ(笑)」
憧れは美しいままに。時の流れの中で、多くの同年代車を見てきたからこその気持ちかも知れない。では、KB1から40年超、直近のカワサキ空冷直4搭載車、KB3からも38年を経た今現れた新しいカワサキ・ビモータ、KB4は正本さんにはどう見えるのか。
「テージH2は“さすがビモータ”でしたけど、KB4は庶民的で、デザインも保守的かなと。当時のZ1、Z1000とKB1で感じたほどの違いは感じませんでした。当時は両車で価格もかなり違ってて、それはビモータというブランドの価値だったんでしょう。そこは今後どう考えるか。KB4は普通の方でも手が出しやすそうで、ツーリングバイクと思えばOKでしょう」
夢のバイク、ビモータ。だからこそ特別な価値を持っていてほしい。そんなエールということだ。
▶▶▶ヘリテイジ&レジェンズが取材した最新のカスタム・バイクはこちら!
Detailed Description 詳細説明
この車両は正本さんが本文で試乗したというハーフカウル仕様。アッパーカウルにほぼ一体成形となるアンダーカウルを加えたフルカウル仕様も存在した。ようやく一部欧州車にカウルが付き始めた1970年代後半、こうしたスポーツライクなカウル装着車自体珍しく、ビモータの狙いも表現されていた。
シートはシングルタイプでシート本体もクッション+表皮の構成。わずかだがタンデムステップも備えて二人乗りを可能にした“ビポスト”という仕様も製作・販売された。シートレールまわりはメインフレーム部同様にビモータオリジナルで赤塗装仕上げされている。
フロントマスターシリンダーはブレンボ横置き。セパレートで角度変更可能なハンドルもビモータ。上下のフォークブラケットは前後分割の2ピース式で、後ろ面のボルトを緩めればステムを支持しているセンターのカラーが交換でき、フォークオフセットを変更することができた。
KB1は空冷Z系(903ccまたは1015cc。調達車両の年度によるため、Z900とZ1000にまたがっている)エンジンを積むが、この車両はヨシムラチューンと思われるエンジンが載っていた。キャブレターもこれと対になるヨシムラ・ミクニスムーズボアキャブレターだった。
エンジン上部を囲うようにレイアウトされた、ビモータオリジナル・鋼管ダイヤモンドタイプフレーム。バッテリーはここでは12V(MFタイプ)で、エンジン左下に置かれる。初期モデルでは6V鉛バッテリーがフレーム前側の左右に1個ずつ、計2個配されていた。
スイングアームピボットを偏芯(エキセントリックカム)式とした初期ビモータの特徴も分かる。ステップやエンジンマウントもビモータ。
リヤサスは車体中央近くにショックを寝かせたカンチレバー式モノサス。スイングアームエンド(チェーンアジャスター)も偏芯式。フロントフォークはマルゾッキ。ホイールは5本スポークキャストで前後18インチ。ブレーキは前後キャリパー/ディスクともブレンボ。