文:宮崎敬一郎、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
トライアンフ「タイガー1200GT」「タイガー1200ラリー」インプレ(宮崎敬一郎)
乗ってすぐ進化を感じる史上最高のタイガー!
新しいタイガー1200は劇的に生まれ変わっていた。まず、跨がった瞬間、そのスリムさが分かる。というか、バイクを支えたとたんに分かるほど軽くなっている。前モデルからマイナス25kgの威力は絶大だ。
今回、オールマイティアドベンチャーモデルの「GT」とオフロード性能を強化した「ラリー」に試乗したが、ともにフレーム、足回りに大幅な変更を受けている。車体はコンパクトでスリムに、そして軽くなった。
エンジンはタイガー900にも採用されたTプレーン(1、3番シリンダーが180度配置で2番がその間に90度で位相しているクランクを採用)エンジンの3気筒1160cc。不等間隔爆発による粘りと味のある吹けを実現する。パワーモードの味付けも一新、上級グレードのエクスプローラーにはミリ波レーダーを備えた死角検知機能も搭載した。
従来モデルからマスバランスを変更し、フロントにより荷重が掛かるようになっているほか、リアアームが右サイドからも保持される両持ち懸架に。シャフトの駆動トルクリアクションによるアクスルの上下動を抑えるためのリンク構造も追加され、独立したリンクとして右側にも装備している。
そんな構造変更が効いているのだろう。高い速度で車体が浮くほどのうねりをリーンしたまま通過した時、従来モデルのような横方向の揺動がほとんど起きない。快適で、常に高い接地性を実現するショーワのセミアクティブサスもスゴくいい仕事をしている。衝撃を上手く逃がすので、ダートでも安定性、走破性ともに良くなっているが、特に高速で遭遇する路面の荒れにとにかく強い。
コケがむしたような滑りやすい路面では、意識してリアを振り気味にして走らないとフロントが逃げる。だが、そうなっても応答は従来より軽くなっているので焦らずに済むし、舗装路での安定性、運動性能、どうにでも自在に操作できるハンドリングなど、ライディングの気楽さは「ビッグタイガー」史上最高のレベルに仕上がっていると思う。
フロントが21インチになり、足回りもGTとは違うラリーのPROにも乗った…。しかし、残念ながら試乗開始後すぐにコースが激しい雨でマディになってしまった。アイドリングで発進してもカウンターを当てる必要がある状況になり、ギブアップ。「おおっ、凸凹に強い!」「エンジンが扱いやすい」という印象が残っただけだった。