当時の愛車は走行距離4万kmオーバーのリトルカブだった。
その後、原付二種の免許を取得し、ハンターカブを購入!
心境にどんな変化があったのだろうか?
文:中村浩史/写真:森 浩輔
プロフィール
鰻 和弘(うなぎ かずひろ)
2005年結成、銀シャリのボケ担当。漫才日本一決定戦「M-1グランプリ」の2016年チャンピオンで、20年近い原付免許オンリー生活から、2022年1月に「小型AT限定」免許を所得。ハンターカブ購入で、ツーリングの行動範囲がぐんと広がったそう。ちなみに「うなぎ」はれっきとした本名です!
愛車紹介
鰻 和弘さんの愛車 ホンダ「CT125・ハンターカブ」
ホンダドリーム鈴鹿で購入したCT125・ハンターカブ。リトルカブ50の頃から使っていたフロントキャリア、スマホホルダー、車載用灰皿を装着。シートは、ややソフトで足つきのいいKスピード製品に換えている。もう少しソフトな乗り味を目指して、リアサスも換えたいかなぁ、だそうです。
インタビュー
リトルカブ50で十分だったのにハンターで世界が広がりました
以前2018年春、月刊『オートバイ』に登場いただいた時に、鰻和弘さんにびっくりしたことが2つ。それはクルマの免許どころか原付免許しか持っていなかったこと、そして愛車であるホンダ・リトルカブ50に15年4万kmも乗り続けていたこと! なにせ、新登場となったクロスカブの試乗をお願いした2018年、50と110を用意して行ったのに、110には乗れなかったのだ(笑)。
「あの頃は、あのバイクが欲しい、中型がいいな、大型がいいな、なんて思ってもいなくて、カブがあればどこにでも行ける、って思ってたんです。実際よーく走り回りましたねー」
鰻さんは、相方の橋本直さんとコンビを組む「銀シャリ」で漫才師日本一決定戦・M-1グランプリの2016年大会で優勝。17年春に活動の拠点を大阪から東京に移した。大阪で乗っていたリトルカブも東京に自走で(!)持ってきて、あちこち走りに行くエリアを、関西圏から関東圏にスイッチしたのだ。ちなみに東京に拠点を移してからも、一度大阪までの往復があって、これで東京→大阪間を一往復半したことになるのだ!!
「僕とカブは、チョイ乗りなんて使い方はせず、ほぼツーリングです。東京に来て思ったのは、どこかへ遊びに行くのも、なかなか走って気持ちのいいエリアにたどり着かないことでしたね」
鰻さんがいう「気持ちのいいエリア」とは、信号も少なくなり、の~んびり走れるエリア。東京を中心に、東西南北、どの方向へ走ってもそうだった。
「大阪で暮らしてると、30分も走れば奈良の山だし、兵庫方面は三田っていう田舎道。でも東京だとそうはいかないんですよね。2時間は走らなきゃかな。原付の30km/h制限が、そろそろ辛くなってきちゃって」
鰻さん、リトルカブとの20年近い生活で、スピード違反で捕まったこともほぼなく、ずっとゴールド免許! けれど、原付のリミット30km/hでの走行2時間はさすがにつらく、ようやく大きなバイクに乗りたい気持ちがわいてきた。
「免許、取りに行きましたよ! 教習所に行って、あまりにも教習内容がクルマ寄りだから、時間の無駄だって退所して、試験場でイッパツ取得です! 教習所の入学金、損してもーたぁ」
おぉ、やりましたねぇ、って言ったものの、取った免許は小型AT限定。ウーム、クルマとか普通二輪だとばっかり思ってたのに(笑)。
「50で走り回ってた時、ハンターカブを見かけることが日に日に増えたんです。僕、世の中の製品って、よく見るようになると売れているいいモノ、って考えることがあって、ハンターカブっていいなぁ、と。125だから小型、じゃあAT限定でいいか、って」
そのあたりのいきさつは、銀シャリの公式YouTubeチャンネルに詳しいです。
折しもコロナ禍の真っ最中、イッパツ試験は2回で合格したものの、交付手続きが順番待ちで数カ月かかってしまい、夏に注文、納車を確保したハンターカブは、免許が手元に来た年明けまで数カ月、ドリーム鈴鹿の展示車として活躍することになる。それはそれで、実車が品薄のハンターカブ展示車を確保できたドリーム鈴鹿に感謝されたんだそうだ(笑)。
──スーパーカブの故郷だけに、鈴鹿で購入するとはやりますねぇ!
「いや、芸人仲間に紹介してもらって、納車まで半年待ち、なんて言われてたから『ショップはどこでもいいよ』って言ってたら、たまたま鈴鹿になっただけです。鈴鹿がカブの生まれ故郷なんて、後から知ったんです(笑)」
ドリーム鈴鹿への引き取りも、大阪の仕事を終えて電車で鈴鹿入り、そのまま自走で東京まで走ってきた。
「ハンターカブ、スゴいですよ! もう速いし、加速エグいし、ロングランもまったく苦じゃない。50の頃からロングランには慣れてたんですけど、125は快適っすねー! 鈴鹿から500kmかな、夜になって静岡で1泊しましたけど、体ぜんぜん疲れないんです」
ハンターカブとの生活をスタートさせた頃、鰻さんはBS放送のバイク番組『モトライズ』の125ccツーリングの回に出演。スタッフさんとの雑談でSSTRのことを知ることになる。
「長距離走るの好きなんですよ、じゃあSSTRなんかも出られるんですか?って。え?SSTRって何のことですか?って教えてもらったんです」
太平洋側で朝日が昇るのを見て、日本海側で夕陽を見る、2022年で10回目を迎えた風間深志さん提唱のツーリングに、一般参加で申し込み。きちんと料金を支払って参加した。
「もともと距離を走るのはまったく苦じゃないんで、品川ふ頭から石川・千里浜まで片道500kmくらいですかね、ぜんぜん平気でした。もう楽しくて楽しくて、朝、登るとこ見た太陽が沈むの見に行くなんて、すごい素敵な旅じゃないですか!」
もともとひとり旅が好きで、リトルカブであちこちを走り回ってきた鰻さん。大阪にいる頃は、大阪から奈良和歌山、三重名古屋に、滋賀京都、岡山広島も、フェリーで宮崎まで行っての九州ツーリングもやったし、東京で暮らし始めてからは、神奈川静岡、山梨長野、千葉埼玉に、栃木群馬──。
歴史好きで旧所名跡をまわり、あそこからの景色を見よう、あれ食べに行こう、と目的地を設定して走るのが好きな、そんな原付ツーリングを楽しみまくってきたのだそうだ。
「ただね、関東近県はなんかひと通り回った気がして、あぁ次どこ行こうかなぁ、って迷い始めてたんです。でも、ハンターカブ来て、気分一新ですね! 今まで回ったところ、もう1回行ったろか、と。今年は夏に北海道に行こうかと思ってるんです。目標は青森でリンゴ食べて……今んとこ決まってるのそれだけですけど(笑)」
リトルカブで走っている頃より数倍増しで、走るのが楽しくなったという鰻さん。今までの「カブがあって当たり前の生活」から「カブを含むバイク全体が好き」になってきているのだという。
22年2月に手元に来たハンターカブは、もう3000kmを突破。これ、毎日のように乗り続けての距離じゃなく、たまの休みにロングランするだけでこの距離。ハンターカブのオーナーらしく、まぁまぁ距離感がマヒしているみたい(笑)。これを、カブ関連業界用語で「距離ばか」と呼ぶのだ。
「僕にとってはハンターカブが最高のバイクです。これ以上のものはないし、大きい排気量のバイクも要らないなぁ、って思います。ずっと走ってると、だんだん体がバイクの一部になってくる感覚があるんですよ。振動とか、風とか、匂いとか。僕そういうのが大好きで、長時間ずっと乗りっぱなしの旅してるんですかね~」
鰻さんのバイクライフは、銀シャリYouTube公式チャンネルで!
文:中村浩史/写真:森 浩輔