文:小松信夫
Xが先かFORCEが先か、車名は似ているけどまったく異なる2台を比べてみた!
2022年6月28日に発売された、ヤマハの新しい軽二輪スクーター「X FORCE ABS」。"Master of Street Scooter"をコンセプトに、モタードっぽさを盛り込んだ斬新なスタイリング、前後13インチ径ホイールを採用する足回り、力強さと燃費を両立する最新の155cc水冷ブルーコアエンジンを組み合わせ、通勤・通学を快適かつ便利、そして楽しく使えるように開発された新世代モデルだそうですが。
一方、日本ではほとんど知られておりませんが、中国でも2022年の春に新しい125ccスクーターとして「FORCE X」というモデルが登場しておりました。日本でも売り出した「X FORCE」じゃなくて、「FORCE X」なんですよ。Xが先かFORCEが先か、非常に紛らわしい。現地での車名は正確には「福颖 FORCE X」で、「福颖」の発音を日本語表記にすると多分「フーイン」とかになるのかな。
名前似てるんだから、この2台には何か関連があるのか? と思っても、見るからにスタイリングが全然違う。モタード風味な「X FORCE」はデュアルヘッドライトで精悍なイメージだけど、「FORCE X」はX字形状のモノヘッドライト。ちょっぴりクチバシっぽいノーズと、ヘッドライト上のスクリーン風カバーとかは、アドベンチャー風味を取り入れてるということらしい。タイヤもちょっぴりオフっぽい。
中身のメカニズムも全然違うんだよね。「X FORCE」は可変バルブ機構のVVA付いてる水冷ブルーコアエンジンだけど、「FORCE X」のエンジンは空冷でシングルカム2バルブ。ボア×ストロークからして長年熟成を重ねてきたシグナスX系のヤツらしい。ホイールも前後10インチ径と小さくて、安定性やハンドリングというより、街中での取り回しの良さを重視。ちなみにABSは備えてないのね。
フラットフロアであるだけでなく、スクーターとしての使い勝手の良さも共通。シート下の収納スペースをどちらも備えてます。上が「X FORCE」、下は「FORCE X」。現代のスクーターなら必須の装備だから当たり前か、造りには直接の共通点はないし。
ハンドル周りは「X FORCE」がスポーツバイク的なバーハンドルなのに対して、「FORCE X」はスクーターとしては一般的なボディにカバーされてるデザイン。
メーターもスポーティなデザインにこだわってる「X FORCE」とは全然別物だけど、「FORCE X」だってコンパクトだけど実用的な液晶メーターを装備。
あと、ボディカラーも今時な雰囲気に洗練されたデザインを6タイプも用意してたり。こういうところを見ると、「福颖 FORCE X」は、小回りが効いて使い勝手が良くて、気軽に日常の中でアドベンチャー風味を感じさせてくれる、実用的でちょっと楽しいスタンダードスクーターっていう存在のようで。ここんとこあたりは微妙に「X FORCE」のキャラクターと共通してるような気もする。中国と日本、それぞれの国情に合わせたらこうなった、というね。
あと定価が8980人民元(日本円だとおよそ18万円)というのも、ヤマハが中国で売ってるスクーターの中では低く抑えられてて、その立ち位置を表してるのかな。
にしては「FORCE X」のイメージ画像、なんかイカツいヘルメットとウェアを着込んだお兄ちゃんが勢い良く走ってたりしてね。やっぱりこういうイメージが、この手のスタンダードモデルをアピールするのには効くのかなぁ、どこの国でも。
ドーンと筆文字で書かれてる「极能覚醒」ってコピーも、「有能さが目覚めた」みたいな強気な意味だもんなぁ。日本における「X FORCE」どころじゃない、中国のヤマハ的には非常に重要な戦略車種なんだろうか。
まとめ:小松信夫