文:山口銀次郎/写真:柴田直行
ホンダ「PCX160」通勤インプレ
見た目は125と同じでも走り方は大きく変わる!
PCX3兄弟で最大排気量を誇るPCX160は、125と同一のコンパクトな車体としながら高速道路走行にも対応するといった、シティコミューターの枠を超えたモデルとなっている。また、ETC2.0の車載器やアンテナの取り付けが可能な内部構造になっているのも160の特徴。
PCX160のエンジンは、アイドリングからワイルドな鼓動感があり、そのハッキリとした手応えで125とは異なる排気量であることがわかる。ホンダ独自の高い環境性能と静粛性に富んだ「eSP+」シリーズエンジン搭載モデルの中では、エンジンの主張が強めの設定かもしれない。さらに、走り出しからゴリゴリとワイルドな雰囲気で、エンジン回転上昇に伴ってチカラを増してゆくのも珍しい部類かも。
もちろん、存在感をアピールするエンジンだが振動などは不快なレベルではなく、心地良いフィーリングといった具合に抑えられているので、操縦空間の快適性が損なわれることはない。ハイブリッドモデルや電動モーターモデルに乗る機会が多くなってくると、100%レシプロエンジンのフィーリングも貴重に思えてきてしまうのは時代の流れなのか?
絶妙なサイズ感とパワフルなエンジンなどで通勤街道の人気者となっているPCXの125は、熟成を重ね“通勤快速モデル”として絶頂に達している観があるが、あまりにも余裕綽々かつ大らかな一面もある車体作りなので「高速道路での走行も可能では?」と思うことも。
そこで、PCX160だ。元々160のエンジンを搭載することを前提に組み上げられたといっても過言ではない車体は、160ではベストバランスプラスαといった具合のパッケージとなり、125を知る者としてはボーナスタイム突入と言わざるを得ない。その優位性は光栄である。
街乗り通勤路での走行では、軽量な車体に対して排気量の持つ余裕なのか、eSP+エンジンの脅威なのか、エンジンの吹け上がりや加速力がワイルドな割に、スロットル開度はかなり抑えめで済んでしまうのである。
ほんの少しのスロットル開度で、ドーンと加速して他車をリードする速度にノることができるので、街乗りではフルスロットル状態になるのはほとんどなかった。そう、頑張らなくてもスマートに先行逃げ切りなイメージなのだ。よって、ストップ&ゴーが繰り返され、燃費を悪化させると思いがちの街乗りが、意外に燃費がよかったりする。
かなり燃費を気にして、それも大げさなほど、1cmにも満たないスロットル開度で街乗りをすると、極めて自然に交通の流れに乗ることが出来た。これは、相応な余裕綽々感ですよ!
そんな低燃費走行を心がけていると、リアルタイム表示の平均燃費計では43km/Lの好燃費を叩き出すまでに。単純計算で、満タンでガス欠するまで350km弱走行できるということ! とはいえ、低燃費走行を維持し続けることができずに、街乗り総距離439kmで、なんだかんだで燃費37km/Lといった感じに落ち着いていた。
ではではということで、高速道路ではちょっと意地悪に最高速付近フルスロットル状態で巡航してみると、一番悪いと思われる燃費で23km/Lといった具合に。
今回の通勤では、高速道路を約368km走行し11L弱の給油で、燃費33.7km/L。街乗り一般道では約440km走行し12L給油で、燃費36km/L。トータルの走行距離は807.6km、23.15Lの給油で、燃費は34.8km/Lといった塩梅。
最後に、PCX160の最高速度は、新東名高速道路の最高速度120km/hに届かなかった。高速道路の流れにノることが出来ても、100km/h以上からの加速力はさすがに俊敏さに欠けるものとなる。
しかし、車体自体に安定感や、どっかり身体を預けられる快適な居住空間があるので、週末の越境ツーリングの相棒としてもオススメできる。高速道路を降りた後の軽快さが、不慣れで知らない土地での走行によるストレスを軽減してくれることだろう。