しかしバイクの免許を取得しても、初心者マークについての講習はない。それは、バイクの免許を取得しても初心者マークの表示義務がないからだ。
とはいえ免許を取得した直後の場合は、初心者マークを表示して周りに注意を促したい方も少なくないのではないだろうか。ここでは、バイクに初心者マークを貼る注意点や、どのような初心者マークが向いているのか、詳しく解説する。
文:小泉嘉史/写真:南 孝幸
バイクは初心者マークが義務ではない!その理由3つ
クルマの運転免許を取得すると初心者マークの表示義務がある(道路交通法第七十一条の五:初心運転者標識等の表示義務)。しかしバイクの場合は初心者マークの表示義務はない。
バイクでは初心者マークが義務ではない理由は様々だが、主な理由として以下の3つが考えられる。
- ①見えにくいから
- ②バイクの運転にすぐに慣れるから
- ③ファッションで表示する方もいるから
①見えにくいから
バイクに初心者マークが義務化されない理由の一つは、バイクのような小さい乗り物に表示する初心者マークは、かなり小型化されるので見えにくいことが原因と言われている。
道路交通法で定められた初心者マークは交通標識に相当するので、周りから見えやすくなければ意味がない。
道路交通法で定められている取り付け位置は「地上0.4m以上1.2m以下の見えやすい位置」となるよう定められている。このほか大きさも縦18.5cm、横11.6cmと決まっている(道路交通法施行規則 別記様式第5の2)ので、バイクに取り付けるのはかなり難しい。
仮に取り付け位置を確保できても、決められた大きさの初心者マークを前後に取り付けることは、バイクの形状から簡単ではない。そこで、定められた大きさより小さくすれば取り付けられるが、小さいと周りの歩行者や他の交通から認知されにくいだろう。
②バイクの運転にすぐに慣れるから
自転車に乗れなくてもバイクに乗れる方は多い。これは、自転車はクランクを漕がなければならずバランスが取りにくいことが一つの理由だ。バイクは自転車に比べて速度が出ると安定するため、バランスが取りやすい。つまり乗り方を覚えてしまえば、自転車に乗れない方でも乗れることは十分考えられるということだ。
クルマの場合は大きい車体を操作する技量が必要であることを、クルマの免許を持っている方ならわかるだろう。その分、運転に慣れるのにも一定の時間がかかる。
一方、バイクの場合はクルマほど運転慣れするのに時間がかからないはずだ。こうした背景も、バイクでの初心者マークが義務付けられていない要因と考えられる。
③ファッションで表示する人もいるから
バイクには、様々なファッションアイテムが販売されているが、なかには初心者マークをオマージュしたアイテムも多くある。そうした商品が多数あることから、初心者マークを取り付けても紛らわしいため義務化されないとも言われている。
現在、様々な大きさや色の初心者マークを模したステッカーが販売されている。ライダーの中には、そういった商品をファッションで貼り付けているのを見かける。もちろん、正規の初心者マークとは異なる大きさなので、知っている方なら初心者マークではないことに気が付く。しかし、それを一般に区別させるのは、ここまで様々な用品があると難しいと言える。
義務ではないが初心者マークを取り付けても良い
バイクの初心者マーク表示は義務ではない。しかし、道路交通法で定める正規の初心者マークを表示しても違反ではない。
初心者マークは、周りに自分が運転免許を取得したばかりで、運転が不慣れであることを知らせる役目がある。そのため、バイクの免許を取得して不安であれば周りにアピールすることは悪いことではない。
初心者マークは、普通自動車や準中型自動車免許を取得して1年未満の場合に表示していないと、行政処分点数1点、大型車(準中型のみ)6,000円、普通車4,000円の反則金が課せられる。しかし、初心者マークの義務がないバイクに取り付けても、こういった反則金や行政処分点数はないので安心して表示できる。
バイクに初心者マークを取り付けることで得られる効果
バイクの免許を取得したばかりで運転に不安があるなら、初心者マークを表示すると良い。表示することで、以下の4つの効果が期待できる。
- ①周囲に初心者であることが伝わることで保護される
- ②あおり運転に遭う確率が減る
- ③免許取り立ての自覚を高めて安全運転できる
- ④走行中に問題が起きても他のライダーから助けてもらえる
①周囲に初心者であることが伝わることで保護される
初心者マークの利点は、周りのドライバーや歩行者に運転が不慣れであることを伝えられることだ。初心者マークを見れば、とっさに車間距離を開けて初心者マークのライダーと距離を保ってくれることも期待できる。
教習所に通えば、初心者マークを表示したクルマを見かけたら、幅寄せや進路妨害などの危険な行為をしてはならないことを学習しているはずだ。つまり、初心者マークを表示したバイクが走行していれば、周りのドライバーやライダーは気を遣う運転をしてくれるはずなので、強引な割込みなどに合う可能性が少なくなる可能性が高い。
②あおり運転に遭う確率が減る
昨今問題になっているあおり運転は、いつ自分の身に降りかかるかわからない。特にバイクは車体が小さいことから、クルマから執拗に煽られるとかなりの恐怖を感じる。ましてバイク免許取得して間もなければ、重大事故に発展する危険すらある。そこで、あおり運転被害に合わないためにも初心者マークは有効だ。
残念ながら、あおり運転は何もないところで起きない。必ず煽るきっかけがそこにある。つまり、被害者にも運転に何らかの不手際があるかもしれないということだ。
これについて、損害保険会社のチューリッヒで実態調査をしている。それによれば車線変更やスピードにまつわる行為があおり運転に繋がっていると答えた方が多かった(全国のドライバーに「2022 年あおり運転実態調査」を実施)。つまり、運転に不慣れなライダーが、強引に車線変更したつもりがなくても、相手の解釈によっては強引に入られたと受け取られてしまう。また、ゆっくりとバイクが道路の真ん中を走行していると、邪魔と感じるドライバーも少なくない。
このようなときに初心者マークがあれば、強引な車線変更ではなく不慣れな車線変更と相手のドライバーは納得する。道路の真ん中をゆっくり走行しても、初心者だから「道路の端を走れないのだ」と理解してもらえるだろう。
ドライブレコーダーの装着も良いがコストもかかる。初心者マークのほうが手っ取り早いだろう。周りに気を遣ってもらえるので、マイペースなツーリングがしやすくなる可能性が高い。
③免許取り立ての自覚を高めて安全運転できる
初心者マークを表示する意味として、周りに知らせるほかに自分への戒めもあるだろう。まだ自分はバイクの免許を取ったばかりであることを認識し、安全運転に徹することが可能だ。
「初心忘れるべからず」ということわざがあるが、初心者マークを表示してツーリングすれば、周りのペースに惑わされることなく、自分の技量に合わせたライディングを心がけられる。
初心者マークを取り付けることで、自分がまだ運転に慣れていないことを自覚し安全運転を励行できる。そして、ライディングテクニックも、基本を忠実に守ることで上達も早くなるはずだ。
④走行中に問題が起きても他のライダーから助けてもらえる
初心者でもバイクに慣れてくれば少し遠くまでツーリングに出かけたくなるだろう。仲間とツーリングに出かけているなら安心だが、ソロのツーリングではトラブルが起きやすい。そんなときに初心者マークがあれば、周りから助けてもらえる可能性がある。
よくあるのが立ちゴケだが、周りの安全を確認して進行方向の右側に倒れたならサイドスタンドを出して起こせばよい。しかし、交通量があると焦って自分ひとりでは上手くできないこともある。そんなとき頼りになるのが周りの人だ。
初心者マークがあれば、周りにいるライダーだけでなく、クルマのドライバーも助けてくれる可能性があるだろう。
また、バイクにトラブルが発生して立ち往生しているときも、心優しいライダーが停車して、状況に応じて助けてくれるだろう。
バイクに初心者マークを効果的に表示できる場所
バイクに初心者マークを表示するなら、できるだけ周りにわかりやすい場所にしたいはずだ。どんな位置が適しているのか、決められた規制はないか気になるだろう。そこで、効果的に初心者マークをバイクに貼るなら以下の5つに注意しよう。
- ①バイクには表示位置の規制はない
- ②バイクの前方と後方に1枚ずつ表示する
- ③後方へのアピールが効果的
- ④とにかく目立つ位置に貼りつける
- ⑤バイク本体に取り付けなくても問題ない
①バイクには表示位置の規制はない
バイクに初心者マークを取り付ける場合、どこにすればいいか迷うだろう。
法律で表示義務はないので、基本的にどこに取り付けても問題はない。ただし、ナンバープレートの文字が見えなくなるような取り付けや、バイクの操作性に支障をきたす取り付けは不可だ。例えば、ウィンカーやブレーキランプが見えなくなってはいけない。
このほか、すぐに走行風などで外れてしまうようでは周りに危険を及ぼすので、外れないように取り付けなければならない。取り付け位置よりも、取り付け方法に気を遣ったほうが良い。
②バイクの前方と後方に1枚ずつ表示する
初心者マークは、クルマの前後に取り付けてアピールするよう法律で定められている。そこで、バイクも前後に表示すれば、後続車だけでなく前方からのクルマにも初心者であることをアピールできる。
後方は、それほど大きくなくても後続車が長い時間見られるので、初心者マークであることを認知する。しかし前方からくるクルマは、バイクとすれ違いざまに初心者マークを確認できなければ意味がない。つまり、それ相応の大きさが必要だ。
そこで、前方に初心者マークを取り付ける場合は、できるかぎり大きな表示が良いだろう。ただし表示することでヘッドライトの光を遮るようでは、本末転倒なので注意したい。
③後方へのアピールが効果的
バイクを走らせていると、後方からクルマに追いつかれることが多い。そのときに認知されやすい位置に初心者マークを取り付けると効果的だ。また、後方のクルマなどへ初心者であることがアピールできれば、迷惑をかけていることへの申し訳なさも伝わるだろう。
一般的に後方へのアピールには、泥除けが添付場所として適している。また、ナンバーボルトからステーを出して、そこに初心者マークを取り付ける方法もある。
このほかリアボックスを取り付けているなら、そこに初心者マークを貼り付けても良いだろう。ヘルメットの後部に貼るという手もある。
④とにかく目立つ位置に貼りつける
バイクは小さい乗物なので、初心者マークを表示するなら目立つ位置にしよう。そこで、クルマのドライバーの目線の位置に来るように初心者マークを貼ることをおすすめする。
最近は車高が高いSUVが流行っているので、少し高めの位置が効果的だろう。とはいっても、クルマの運転席から見えるアイポイントの高さは1.2mとされているので、バイク後方の目立つところは地上から1.2m以上の高さになる。
つまり、あまり低い位置に初心者マークを貼っても周りのドライバーから認知されないので、その点も考慮しながら表示する位置を選ぶと良いだろう。
⑤バイク本体に取り付けなくても問題ない
バイクに初心者マークを表示する場合、バイク本体に表示する必要はない。例えばヘルメットやリュックに表示しても良いだろう。特にヘルメットであれば、バイクに乗るときに必ず被るので、貼り付けておけば間違いない。
このほか、ジャケットの背中に初心者マークを表示すれば、後方からかなり目立つはずだ。
様々なアイディアで、バイク本体以外に初心者マークを貼り付けられる点は、バイク乗りがアクセサリーにしてしまう原因の一つである。しかし、周りから認知しやすい位置に貼るのは効果がある。
バイク用の初心者マークにおすすめのタイプ
初心者マークは、法規で決められた大きさではバイクに大きすぎる。しかし、市場には小型化された初心者マークが多数販売されているので、バイクにも取り付け可能だ。その中で以下の4つのタイプがおすすめだ。
- ①マグネットタイプよりステッカータイプがおすすめ
- ②バッジタイプの初心者マークならステッカーのノリ残りの心配なし
- ③ナンバーフレームに取り付けるタイプも好評
- ④制限がないのでちょっと面白い初心者マークも効果的
①マグネットタイプよりステッカータイプがおすすめ
初心者マークの売り場を見ると、マグネットタイプが多い。これはボディがスチールのクルマへの取り付けを目的にしているためだが、バイクにはスチール部分が非常に少ない。そこでおすすめなのがシールタイプの初心者マークだ。
シールタイプのステッカーには様々な大きさが用意されており、バイクの大きさや取り付ける位置に合わせられる。また、最近はボディにアルミや樹脂を使用したクルマが増えたので、何度でも貼って剥せる粘着タイプもある。
ただし粘着タイプの初心者マークはクルマ用の規定の大きさなので、バイクに取り付ける位置に苦労する。大型バイクなら添付できる部分が広いので、利用しても良いだろう。
②バッジタイプの初心者マークならステッカーのノリ残りの心配なし
クルマの場合は初心者マークを1年間表示する義務がある。しかしバイクには表示義務がないので、自分の好きな時期に取り外しても良い。そこでバッジタイプならシールタイプと違って取り外しが簡単だ。バッジタイプをリュックやジャケットに取り付けても良いだろう。
バッジタイプにも様々な種類があるので、ファッションに合わせていくつか揃えて取り替えるのも面白い。また、缶バッジタイプの初心者マークも販売されており、それを数個並べてバッグなどに取り付ければ、小さいバッジも大きく周りにアピールできるだろう。
③ナンバーフレームに取り付けるタイプも好評
シールだとバイクに剥がし跡が残るので、取り付けに躊躇する方もいるだろう。また、バッジタイプは針で衣服などに穴を開けるので、これも嫌だという方も少なくない。そこで、糊残りや衣服の傷みが気になる方には、ナンバーボルトに共締めで取り付ける初心者マークがおすすめだ。
ステンレスステーをナンバープレートのボルトに共締めして、ステーに専用のステッカーを貼るだけ。とても簡単なところが商品の特徴だ。これなら取り付けたことで発生する不具合に悩まされることはない。
ステーは、少し器用な方なら自作も可能だ。ホームセンターなどでステンレスステーを購入して取り付け、ステッカーを貼ると良いだろう。
④制限がないのでちょっと面白い初心者マークも効果的
バイクには初心者マークの表示義務がないので、デザインも自由に選べる。そこで初心者マークの硬いイメージが好みでないなら、初心者マークを模ったカスタムステッカーにしてみてはどうか。
デザインだけでなく粋な文字を表示し、後続車も思わずニッコリしてしまうステッカーも多い。また、法規では左が黄色、右が緑になっているが、その色合いもカラフルにして楽しませる初心者マークもある。
このほかホログラムを使用してきらきら光らせ、後続車にアピールするステッカーもあるので、じっくり探せば好みのデザインが見つかるだろう。
様々なアクセサリーの初心者マークが販売されているが、規定がないバイクならオリジナルで初心者マークを作成して貼り付けても問題ない。お気に入りがなければ、世界でたった一つの初心者マークで街を走るのも、安全向上だけでなくお洒落で良いのではないだろうか。
初心者マークは免許取得後1年以上でも表示できる?
初心者マークは、普通自動車免許や準中型自動車免許取得後1年未満の方は表示義務があるが、期間を超えて取り付けても罰則はない。もちろんバイクにはもともと表示義務もないので、何年取り付けても問題ない。その理由や表示する意味には以下の3つがある。
- ①法律的に規制はない
- ②運転に不安があるなら1年以上でも表示するのもあり
- ③ペーパーライダーなら取り付けて安全確保
①法律的に規制はない
道路交通法で、初心者マークは免許取得から1年間表示する義務になっており、それが励行されないと罰金や罰則がある。しかし、表示期間を過ぎて表示している場合の規定は何も記載がないので、1年以上初心者マークを表示しても問題ない。
つまりバイクの場合は、表示する義務もなければ表示してはならないといった規定も道路交通法にないので、初心者マークをいつまでも表示していても罰せられることはない。
②運転に不安があるなら1年以上でも表示するのもあり
初心者マークを免許取得後1年経過しても表示する意味は、まだバイクの運転に慣れることなく周りの交通が怖いと感じる場合に有効だ。
このほか毎日使用するのではなく、1カ月に1回や数カ月に1回程度のバイクの運転では、なかなかバイクに慣れることはできないだろう。そんな方は、初心者マークを運転が慣れるまで表示することで、周囲に初心者がバイクを運転していることをアピールできる。
周りにいるドライバーは、初心者マークを見れば配慮した走行をすることが殆どなので、危険を回避した運転ができるだろう。
③ペーパーライダーなら取り付けて安全確保
バイクの免許を取得したものの、何らかの理由で長い期間バイクに乗れずにいる方もいるだろう。そんなペーパーライダーにも初心者マークはおすすめだ。
バイクには、様々な排気量によって免許の種類も分けられる。排気量の小さいバイクは常に乗っているが、大型バイクは免許を持っていても長い期間乗らずに過ごしている方も多い。しかも数十年の時を経てリターンライダーとなる方も増えている。
そういった方は、普段乗る小排気量の運転は慣れていても、大型バイクの操作は忘れているだろう。そこで、大型バイクに乗るときだけ初心者マークを添付することをおすすめする。そうすることで、自分を守り安全なツーリングを楽しめるだろう。
バイクの初心者マークでよくある質問
Q.初心者マークをバイクに貼ろうとしたら、ムダだからやめたほうが良いと言われました。やめるべきでしょうか。
A.法律で定められていないので、クルマのドライバーなどは本気で見ない方もいるかもしれません。しかし全ての方がそうではなく、初心者マークのバイクを見かけると車間距離を空けて、追い越す際も感覚を取っている方が多いのも事実ですから、全く無駄ではないでしょう。
Q.バイクは初心者マークの表示義務がないので、どんなデザインでも良いとのことですが、貼らないほうが良いデザインなどはありますか。
A.やめたほうが良いデザインは、光の反射が激しく、周りを幻惑させるような商品でしょう。そういった商品を見たことはありませんが、自作の場合に使用する素材には注意が必要です。
まとめ
初心者マークは、普通自動車免許や準中型自動車免許取得後、1年未満は表示する義務があるが、バイクはどの種類の免許を取得しても表示義務がない。
しかし、バイクの免許を取得しても運転に不安がある方も多いだろう。そんなときは初心者マークでアピールすることで、周りのクルマなどが運転に配慮してくれることが多い。
走行の邪魔にならない目立つ場所に初心者マークを表示すると効果が高いだろう。そして忘れていけないのは、初心者マークは運転を上手にするわけではない。常に初心を忘れずに安全第一で運転することを心がけることが重要だ。
文:小泉嘉史/写真:南 孝幸