文:太田安治、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
ヤマハ新型「TMAX560 ABS」インプレ(太田安治)
足回りとエンジンのフィーリングが上質に
「スクーター」に分類されるオートバイは排気量125cc〜200cc程度の小型車が主流という中にあって、孤高かつ異端の存在として世界中にコアなファンを持つのがTMAX。2001年の登場以来、たゆまぬ進化を続け、この2022年型は8代目となる。
560ccの2気筒エンジンをアルミフレームに搭載した車体は前モデルから受け継がれているが、ヘッドライト回りとフロントカウル全体のデザインを一新。前から見た姿はスポーツバイクそのものだ。
走り始めて改めて感じるのが市街地走行での自然な加減速フィーリング。遠心式クラッチが2000回転弱の低い回転で繋がり初めるから、停止状態からの動き出しがスムーズで、減速時も停車寸前までクラッチが繋がっているので唐突にエンジンブレーキが切れて滑走することがない。とかくスポーツ性能に注目が集まるTMAXだが、市街地のスムーズな走行特性もしっかり備えている。
スロットル全開加速時のエンジン回転数は速度によって変わり、公道の速度域で3500〜4500回転、高速道路なら6000回転近辺を保って豪快に加速する。加速中に響く360度クランクの等間隔爆発らしい揃った連続音も魅力のひとつだ。D-モードは2種類あるが、「S」モードだとピックアップが良過ぎてスロットルワークに気を使う。サーキットライディング以外なら「T」モードのままで不足はない。
市街地と峠道ではっきりと進化を感じたのが足回りの動き。前モデルはギャップの乗り越え時にホイールがドタドタと動いて接地性が薄れる感覚があったが、新型はこれが改善されて安定性が増し、乗り心地全体が良くなっている。新採用のスピンフォージドホイールに加え、専用に開発されたタイヤも軽量に仕上がっていることが要因だろう。
インナーチューブΦ41mmの倒立フォークとアルミダイヤモンドフレーム、通常のスクーターとは異なる独立式のスイングアームにより、ブレーキングから寝かし込みまでの安定感、旋回中の安定性は生粋のスポーツモデルにひけを取らず、スクーターにありがちな退屈さは皆無。
今回は多様なシチュエーションで走ったが、特に峠道と高速道路を含めたツーリング適性の高さに改めて感心させされた。ヤマハのWEBサイトで「スポーツツーリング」に分類されているように、スポーツマインド溢れる仕上がりだ。
ヤマハ新型「TMAX560 TECH MAX ABS」の特徴
「TECH MAX」はダーク系のボディカラーを与えられた上級グレード。電動スクリーン、グリップヒーター、シートヒーター、クルーズコントロール、ワンプッシュスタート機能も備えた、クルージングがより快適な仕様だ。