文:濱矢文夫、アドベンチャーズ編集部/写真:柴田直行
ヤマハ「トレーサー9 GT ABS」各部装備・ディテール解説
エンジン
"Multirole fighter of the Motorcycle”のコンセプトの具現化のため、ボア・ストロークの変更による排気量拡大、燃料霧化促進のためのインジェクター位置の変更、電子制御スロットル・YCC-T採用など、初代MT-09から大幅な改良を受けた888cc水冷並列3気筒エンジン。軽量鍛造ピストン、FSコンロッドなど細かなパーツも見直され、力強さと同時にフレキシブルなトルク特性も実現。
マフラー
車体下部に収まるコンパクトな1.5段膨張室、左右シントメリーレイアウトの排気口を持つサイレンサーなど、ユニークな形状の排気系はMT-09と共通。
フロント 足まわり
サスペンションは前後ともKYBと共同開発された電子制御サス・KADSを採用。IMUとECUなどの情報にもとづき、減衰レベルを最適化。減衰力の調整機構はヤマハとしては初めてソレノイド駆動を用いて行う。スポーティさを主眼とするモード、長距離走行時などでの快適性を重視したモードを選択可能だ。
リア 足まわり
ヤマハ独自の“スピンフォージドホイール”技術によって、鋳造ホイールでありながら鍛造ホイールに匹敵する強度と靭性のバランスを達成したホイールが装着されている。先代モデルのトレーサー900から前後で約1kg軽量化を達成し、同時に慣性モーメントも低減されて運動性能を向上させている。スイングアームは専用品で、MT-09より60mm長い。
ヘッドライト・スクリーン
大型スクリーンの下に見える2眼式ライトは、実はヘッドライトではなく夜間走行でバンク角に応じてイン側を照らすコーナーリングランプと、ポジションランプを一体にしたもの。ヘッドライト本体はさらに低い位置、左右のシュラウド前端にモノフォーカスLEDライトを装着。ロービーム時は右側が点灯、ハイビーム時には両側が点灯する。
メーター
3.5インチサイズのフルカラーTFT液晶パネルを左右に並べたメーターパネル。左のメインメーターは、デジタルバータコメーター、燃料計、平均燃費、水温計、外気温計、ギアポジションインジケーターなどを表示。右側のメーターは、様々な情報から任意で4種を選び、拡大表示でより多くの情報も表示できる。
燃料タンク
長距離走行を前提とするスポーツツアラーだけに、燃料タンクは容量18Lを確保している。
シート
バックスキン風の滑りにくい表皮を使ったセパレートデザインのシートは、ダブルステッチを施した高級感ある仕上がり。クッション性も良好でタンデムシートも含めて快適性は高い。ライダー側はシート高を2段階に調整可能な構造になっている。
テールランプ
テールランプの光源はLEDだが、1つ1つのLED素子の粒感を感じさせない面発光的で立体感のあるデザインになっている。
トップケース・サイドケース(オプション)
専用のサイドケースは容量片側30L、トップケースは容量50L。サイドケースとトップケースの同時装着のために、メインフレームやリアフレーム、スイングアームなどを最適化されている。サイドケースの振動を抑えるためダンパー内蔵取付け用ステーを備え、高速走行での優れた直進安定性にも寄与。
ヤマハ「トレーサー9 GT ABS」主なスペック・価格
全長×全幅×全高 | 2175×885×1430mm |
ホイールベース | 1500mm |
最低地上高 | 135mm |
シート高 | 820-835mm |
車両重量 | 220kg |
エンジン形式 | 水冷4ストDOHC4バルブ並列3気筒 |
総排気量 | 888cc |
ボア×ストローク | 78.0×62.0mm |
圧縮比 | 11.5 |
最高出力 | 88kW(120PS)/10000rpm |
最大トルク | 93N・m(9.5kgf・m)/7000rpm |
燃料タンク容量 | 18L |
変速機形式 | 6速リターン |
キャスター角 | 25°00′ |
トレール量 | 108mm |
タイヤサイズ(前・後) | 120/70ZR17M/C 58W・180/55ZR17M/C 73W |
ブレーキ形式(前・後) | ダブルディスク・シングルディスク |
メーカー希望小売価格 | 145万2000円(消費税10%込) |
文:濱矢文夫、アドベンチャーズ編集部/写真:柴田直行