フロント21・リア18インチホイールを採用したオフロードモデルRX125の兄弟車が、この「SX125」。水冷単気筒DOHC4バルブエンジンを搭載し、ヨーロッパのA1ライセンス上限の15PSをマーク。のんびり走るよりギンギンに飛ばしたいモデルだ。
文:中村浩史/写真:森 浩輔
画像1: Aprilia SX125 総排気量:124.2cc エンジン形式:水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒 シート高:880mm 車両重量:134kg 税込価格:45万1000円

Aprilia SX125

総排気量:124.2cc
エンジン形式:水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒
シート高:880mm
車両重量:134kg

税込価格:45万1000円

現在の原付二種の人気について

新規免許所得者も増加中、原付ニ種がまだまだ元気だ!

月刊『オートバイ』でもたびたび取り上げている通り、やっぱり今でも、原付二種人気が止まらない。

かねてからのコロナ禍の影響もあって、人気モデルは軒並みバックオーダー。それは日本だけにとどまらず、海外生産モデルが多いこのクラスでは、その生産地の人気もあって、日本への割り当て台数もなかなか確保できず、買いたくても買えない、なんて状態が続いている。

『二輪車新聞』によると、警察庁がまとめた二輪免許の新規取得者数にも原付二種人気は証明されている。

2021年は、大型二輪から原付まで、全カテゴリーの二輪免許の新規取得者が増加して、前年比でも10.2%増加。普通二輪免許は13.6%の増加で、中でも原付ニ種に対応する小型限定は22.8%アップで過去最高の取得者数約3万5000人を記録したのだ!

これで小型免許の新規取得者数は12年連続の増加。逆算して、原付ニ種ユーザーが増加し始めた2010年といえば、ホンダスーパーカブがフューエルインジェクションの110cc、型式で言うとJA07となって発売され、市場に行き渡り始めた翌年、というのはこじつけすぎかな。

けれどちょうどこの頃、2011年にはKTMの125DUKEが衝撃の世界デビューを飾り、2013年にCBR125R、GROMとクロスカブ110という、ホンダの原付ニ種トリオがデビュー。よって、日本で原付ニ種が盛り上がり始めたターニングポイントは、2010年ってことにしましょう!

それからまだ10余年。今では原付ニ種は、スーパーカブからハンターカブ、クロスカブを含めたカブファミリー、原付ニ種スクーター群、GROMやモンキー、Z125PROといったミニサイズ、そしてGSX-R/S125やCB125R、DUKEのようなスポーツモデルと、カテゴリーの選択肢も豊富なクラスになった。

そして、そのスポーツカテゴリーに異色モデルがひとつ。それが、イタリアのガチスポーツブランド、アプリリアのSX125だ。2018年に登場、オフロードモデルのRX125との兄弟モデルであるモタードモデルで、今では日本発売はなくなってしまった、フルカウルスポーツである125RS4の水冷単気筒DOHC4バルブエンジンを使用したガチスポーツだ。

登場から4年。現行モデルは排出ガス規制に対応した仕様で、ハッキリ言って「目立たない」モデルなのである。

画像: Aprilia RX125 税込価格:44万円

Aprilia RX125 

税込価格:44万円

アプリリア「SX125」インプレ(中村浩史)

画像2: Aprilia SX125 総排気量:124.2cc エンジン形式:水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒 シート高:880mm 車両重量:134kg 税込価格:45万1000円

Aprilia SX125

総排気量:124.2cc
エンジン形式:水冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒
シート高:880mm
車両重量:134kg

税込価格:45万1000円

ビギナー向けとは言えないイタリアンな125ccモタード

モタードとは正式な定義こそないながら、オフロードモデルにオンロードタイヤを履かせたもの、というのが一般的。かつては舗装路もダートも走れるオンオフモデル、スーパーバイカーズなんて呼ばれてた時期もあった。

少し前のモデルだとホンダCRF250M、カワサキDトラッカー、ヤマハWR250X、スズキDR-Z400SMといったあたりで、オフロードモデル特有のスリム&軽量で、サスペンションストロークが長い車体で、オンロードを自由自在、縦横無尽に走る、という狙いで生まれたモデルたちだ。

ロードスポーツ一辺倒のイメージが強いアプリリアも、Vツインエンジンを搭載したSXV450/550やドルソデューロといったモデルを販売、スーパーモトと呼ばれた世界選手権にエントリーしていたこともあった。つまり、このモタードもアプリリアのお家芸みたいなものなのだ。

そのモタードの125cc版とくれば、これはもう手強さが極力少ないストリートバイクと思われがちだけれど、これがなかなかに手強い。

画像1: アプリリア「SX125」インプレ(中村浩史)

アプリリアにしてみれば、125cc版を発売しているのは、ヨーロッパのA1ライセンス、日本でいう原付免許に対応するためのもので、そこに「初心者にもやさしく扱いやすく」なんて狙いは少ないように思う。A1ライセンスとは、比較的簡単に免許が取れる、排気量125cc/出力15PSまでのモデルのための免許だ。

初心者に必要以上に優しくないのは、もう車体サイズから現われている。乗車写真でもわかるように、178cmの成人男性が跨って、このサイズ感。シート高880mmは、軽量な車体だとはいえ、あのハイシートでおなじみのヤマハ・テネレ700と同レベル。ちっともビギナーに優しくない。シートはモタードモデルらしく、上面がフューエルタンクからシートカウルまでフラットなタイプだ。

さらにホイールトラベルはフロント240mm、リア210mm、つまり前24cm/後21cm。フロント、リアとも採用されているサスペンションはグッとコストがかかっている高品質なもので、ストロークする感触が、ちゃんとバネレートの高い、伸び側も縮み側も減衰の効いた手応え。動きをソフトにしておかないとビギナーが…という思慮も多くないんだと思う。

走り始めると、そこは125ccなりのパワーとトルクに気づくことになる。スロットルレスポンスのいい水冷単気筒のDOHC4バルブエンジンは、発進トルクからやや心許ないのだ。

現在の国産125ccモデルのように、回転を上げずにゆっくりクラッチをつないでみると、クラッチミートの瞬間にグッと失速してしまうので、車体サイズやサスペンションの感触とのギャップを感じてしまう。

けれど、そこはアプリリア。発進トルクが心許なければ、回転を上げてクラッチをつないでやればいいだけで、そうすれば元気よくスタートダッシュを決めることができるのだ。

モノクロ液晶メーターにタコメーターはついていないので、そこはフィーリングで。ちょうど、ついつい1980年代の125cc、それも2ストロークの単気筒エンジンを思い出すような回し方で走り回るとシックリくる。

画像2: アプリリア「SX125」インプレ(中村浩史)

手軽にエキサイティングな走りを楽しみたい人に最適な1台

走り出しに回転がドロップしないよう、やや回転を上げながらスタート。軽量な車体は、トルクが乗る回転数でクラッチミートすれば、鋭いスタートダッシュ! 早めにシフトアップするのではなく、各ギアを引っ張ってギアをつないでいくのが気持ちいい。

タコメーターがないからハッキリとはわからないけれど、8000回転といった回転域に力があるエンジンだ。シフトワークも6000回転くらいという、まずまずの高回転域でシフトしないと、クラッチミートの瞬間にいったん回転がドロップして加速し直すフィーリングになってしまう。

こういう回し気味の乗り方だと、公道でリミットの60km/hまで達するのが速い! もちろん、のんびり走ることもできるけれど、そんな走り方は得意じゃない、それもアプリリアらしい! のんびり乗るための125ccが欲しいなら他のモデルがいいだろう。

モタードの特徴のひとつである動きのよさは、さすがの車体構成だ。前後ともストロークのあるサスペンションだが、決してフワフワした乗り心地ではなく、減衰の効いたシャキシャキとした走りが楽しめる。

画像1: アプリリア「SX125」インプレ(2022年)最強125ccの街乗りモタード【現行車再検証】
画像2: アプリリア「SX125」インプレ(2022年)最強125ccの街乗りモタード【現行車再検証】

ちょっとずつペースを上げて、フロントタイヤを路面に押し付けるようなブレーキングをしても、テールリフトを抑えるアンチロールオーバー機構を持っているのも、ガチなモタードを思わせてくれる。もう少しパワーがあればなぁ、と思ってしまうほど、いわゆる「車体が勝っている」動きを楽しむことができるのだ。

もちろん、あちこちでギャンギャンに回すだけじゃない快適性だって持ち合わせている。各ギアを引っ張ってシフトワークすれば楽しいエンジンだけれど、トップ6速に入れての定速クルージングだって可能なのだ。

もちろん、これも低回転でのんびり、というフレキシビリティがあるというよりも、ほどほどの回転キープは必要。その時には、高いシートが下半身の窮屈さを感じさせなくて、今回の試乗では、1時間ほど連続走行したけれど、張りのあるシートも、そうお尻が痛くなるタイプではなかった。

けれど、やっぱりSXは、回転を引っ張ってキビキビ走ると楽しさが倍増するタイプだ。125ccとはいえ、快適さとか、誰にでも乗れる、ってタイプでは決してないけれど、125ccモデルが欲しい、でもエキサイティングさは失いたくない、という選択肢としては唯一のモデルだと思う。

Rの大きなコーナーを、フロントタイヤを押さえつけながらイン側の足を出してコーナリング、そんな125ccがあってもいいじゃないか!

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