撥水と防水は割と違う
撥水と親水
最近はワークマンなんかで撥水性能を持つアイテムがたくさんあるけど、撥水と防水は意味合いが違うのね。
「撥水」ってのは、水が乗っかったときに生地表面に馴染みにくいのね。定義としては、水との接触角が90°以上ってことらしい。表面になじまず、水滴のままだから、球状のまま転がり落ちてくのね。
とはいえ、「馴染みにくい」ってだけなので、受ける水量が多いとなすすべなく染みこんでくる。なので、生地自体が水を通さない「防水」とは違う概念。
逆にいえば、素材自体が水を通さないシールドとかなら、撥水性を持たせるだけで付着した水をどんどん弾いて落とすことが出来る。なので、こういった商品も。バイクのシールドだと風を受けるので、水を弾く効率も良いってワケね。
ちなみに撥水に関連する用語としては「親水」。水が表面に思い切り馴染むのね。
バックミラーを見やすくするためのコーティングとかで使われてるやつ。撥水処理だと雨粒が形成されちゃうので、あえて親水性を持たせることでミラーを見やすくするって発想ね。
ミラーは風を受けにくいので、表面に水滴が残って視認性が悪くなる。だからあえて水をなじませて見やすくするって発想ね。
レインウェアに大事なのは防水性
まとめると、「撥水」だと水が転がり落ちやすいってだけで、生地が水を通すかどうかは別問題なのね。生地が水を通しやすいかどうかの目安は「耐水圧」。耐水圧性能があるのがいわゆる「防水」ってわけ。
なので、少し水がかかったとか、ごく少量の雨なら撥水でも効果があるかもだけど、レインウェアとして使用するなら防水性能のあるウェアじゃないとなのよ。
実際に撥水ジャケット&超撥水デニムで雨の中ツーリングしたらこうなった。
防水で大事なのは「耐水圧」と「透湿性」
お次は防水について。防水性能というのは、「耐水圧」なんだけど、それと同時に「透湿性」という数値もたいてい併記されてるのよね。防水ウェアにおいては両方とも大事な性能。
耐水圧とは
その名の通り水圧に対して、どれくらい水を通すかっていう値。防水で一番重要な部分ね。
計測方法としてはJIS規格などがあるけど、基本的には水圧をかけて計測。
ちなみにJIS=日本工業規格だと思い込んでたら2019年に日本産業規格って名称変更してた。ミリバールとヘクトパスカルみたいなもんだね。昭和生まれには覚えることが多いですわ。
一般使用のカッパとかだと8000~10000mm程度のものが多いけど、バイクの場合は雨に対してぶつかっていくので、求められる数値も通常のものより高い水準が必要になるのよ。
あくまで自分の経験と印象だけど、耐水圧8000mmのレインウェアで1時間ほど田舎道を走ったら胸部分から染みてくることが多かった。個人的には、20000mmくらいあるとだいぶ安心。
透湿性とは
ただ完全防水にするだけなら、水を通さない素材(塩化ビニル樹脂コーティングとか)にすれば良いんだけど、そうすると今度は内部の水分(水蒸気)がたまって水になっちゃうのよね。
なんせ中身が人間なので汗をかく。ポカリで有名な大塚製薬のサイトによると、四時間座ってるだけで200mlの汗が出るらしいのよ。
そうして出た汗が、防水素材の内側に引っ付いて水滴になる。実に不快だし、なにより汗冷えするのね。雨を防いだから内部で水が発生するって本末転倒じゃん。
そこで大事なのが「透湿性」。
透湿性、読んで字の如くで湿度を透過する性能ね。つまり水蒸気を外部に排出する能力が重要になるのよ。快適性はもちろん、汗冷えで風邪ひくのを避けるためにもね。
水は通さないけど水蒸気は通すってのは、都合良すぎに思えるけど,サイズの違いを活かしてるのね。
雨粒の定義は、0.1mm以上らしいんだけど、気体化した水蒸気の粒子サイズは0.0004μm。雨粒にあわせてミリでいうと0.0004*0.001なので0.0000004mm。
あってるのか不安になってgoogleで計算したら4eー7ってでた。わからん。
で、透湿性能はグラムで表される。これは24時間で排出する水蒸気の重さね。例えば透湿性5000gってあったら、24時間で5kg分の水蒸気を排出してくれるのね。
ちなみに透湿性については、レインウェアの場合は5000gくらいから効果を実感した。外側はびしゃびしゃになっても、内部が結構さらさらしてて快適なのよね。
最近のレインウェアはレイヤー構造も重要
昔のカッパとかは塩化ビニールコーティングした一枚布だったけど、今どきはいろんな機能の素材を組み合わせた複数レイヤー構造が主流なのね。レイヤーってのは重なりね。
具体的には2レイヤー、2.5レイヤー、3レイヤーの3種類が比較的定番。
レイヤー構造は、例えば3レイヤーなら「表地・防水透湿素材・裏地」みたいな感じ。
2レイヤーそこから裏地をなくしたもので、2.5レイヤーは防水透湿素材にさらにコーティングを加えたものと考えれば良さそう。
昔ながらの一枚布ビニール合羽は、レイヤーでいうと1レイヤーね。
防水透湿性で選んだレインウェア
せっかくなので、防水性、透湿性にこだわって3点ほど紹介。
デイトナ ヘンリービギンズ レインウェア
耐水圧10000mm、透湿度10000gという高い数値に、バイク用ブランドならではの、3Dカット仕上げや止水ファスナーなど、バイクに最適化されてる。ヒップ部分がシームレスなのは、数値以上に差が出るはず。2.5レイヤー採用なのもポイント。
ゴールドウイン Gベクター コンパクトレインスーツ
耐水圧はなんと20000mm。透湿度は8000g。高い防水性能と豊富なサイズ展開が魅力。もちろんバイク専用レインウェアなので、ヒップ部は縫い目無し。バタ付防止面ファスナーやベンチレーションなど、機能充実。
ミズノ ベルグテックアクアブロック
バイク用では無いものの、耐水圧約15000mmで透湿度約10000gというのは相当な数値。しかも上下で約1万ってのは性能からするとなかなかお買い得。でもバイク用ではないので、ヒップ部に縫い目アリ。尻から水がしみるかも。
まとめ
防水性や透湿性だけじゃなく、値段や収納性など、人によってレインウェアに期待する部分は色々あると思うけど、そうしたレインウェア選びの参考になれば幸い。
レポート:若林浩志