AMAフレディ・スペンサー車に近づけることを至上とする

CB-Fをカスタムしようと思った時に誰もが1度は考えるのは、’82年のアメリカ、AMAスーパーバイクシリーズでの開幕戦となった「デイトナ100マイル」で優勝したAHM=アメリカン・ホンダ・モーターのエース、#19フレディ・スペンサー車だろう。このCB900Fも見て分かるように、そこを目指した1台。その成り立ちをオーナー・長谷川さんに聞くと……。

「高校時代の友人にいろいろ無理を言って仕立ててもらったんです。あの車両に合わせてフロントは16インチ、リヤは18インチ。スチールメガホンマフラーはSSPファクトリーさんでスペンサーレプリカタイプを作ってもらったんです」

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スペンサーCB-Fという強烈な目標に向かってのオーダー。当時の最高峰レース、世界グランプリ500クラスでマシンの旋回性を高めるべく採り入れられてきたフロント16インチもあえて再現し、ルックスのバランスも現車に近づけている。こうしたトータルでのバランスが取れるということは、長谷川さんの言う友人はさぞかし腕のあるプロショップの方かと思いきや……。

「それが、国産車メーカーのファクトリーチームでチーフメカニックをしてるんです。Mさんとしておきましょう。それで、そのつてでエンジンは北海道・富良野のプラッツさんでフルオーバーホールと1000cc化をしているんです」

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プラッツも幅広い車種を扱うことや鈴鹿8耐参戦等で知られるショップだが、それならエンジンも車体も文句なしの仕上がりのようだ。ちなみにスペンサーCB-Fも当時のレギュレーションいっぱいの1023cc(Z系の純正1015ccを勘案して、1025ccが規則上限)だったから、この内容もそれを踏襲していると言える。撮影日の2022年4月3日、CBミーティングの現場にも長谷川さんは東海から千葉へと雨中をレザースーツ着用(これもスペンサーレプリカ)で自走してきたから、実走面のバランスも推して知るべしだ。

「作ってくれたMさんからは、“同じ仕様でもレーサーを作った方がずっと楽。ストリート仕様は(保安部品や電装などもあって)本当に大変なんだよ”って言われてますけどね」。そう笑う長谷川さん。それにしてもこの作り、いい人たちに頼めたなと思うばかりの見事なものなのだ。

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メーターは北米仕様CB750Fの純正で、外形があればいいというAMAスーパーバイクレーサーと異なり、当たり前だがきちんと作動する。左に見えるのはデイトナ・MOTO GPSレーダーLCD3.0。フロントマスターはブレンボ・ラジアルポンプで、ステムはXJR1200を加工流用している。

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フレーム前端にダンパーユニットを横置きし、ステム下から延ばしたバーで作動させるステアリングダンパーもスペンサーCB-Fを再現している。“できるだけ本物に近づける”という観点から、ヘッドライトはゼッケンを切り抜きマウント、オイルクーラーも同位置に置いた。

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エンジンは北海道のプラッツでオーバーホールと1000cc化を行うが、これは本家750FがCB900Fベースに1023cc化したRS1000(CB-Fベースの市販レーサー)エンジンを積んだのにも似ているか。キャブレターはTMRをエアフィルター仕様でセットしている。

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メガホンエンドの4-2-1スチールマフラーはSSPファクトリーによるスペンサーレプリカで、1番エキパイの曲がりなどもうまく表現している。

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スペンサー車のNS500用SHOWAφ41.3mmに近い太さを持ったφ43mmフロントフォークや大径φ320mmブレーキディスクなどのフロントまわりはXJR1200がベースで、フロントキャリパーはブレンボ・アキシャルキャストP4 30/34。フェンダーステーもモチーフに近づけている。

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#19車に同じ16/18インチとしたホイールはフロントが3.50幅のCBR900RR純正、リヤもホンダ車流用による5.50インチ幅だ。スイングアームはXJR400にスタビライザーを追加する。リヤブレーキはブレンボ・キャストP2 32キャリパー+サンスター・ワークスエキスパンドディスクと現代的構成にしている。

取材協力:車両オーナー・長谷川さん

レポート:ヘリテイジ&レジェンズ編集部

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