今やバイクライフに欠かすことができない便利な電装品。USB電源をはじめ、ETC車載器、グリップヒーター、ドラレコなどのおかげで充実したバイクライフを送ることができるようになった。でも、これらを使うには電源が必要。バイク屋さんにお願いするのもいいけれど、自分でやってみると意外なほど簡単なことがわかる。電装系のプロフェッショナル、デイトナの川崎さんにいろいろ尋ねてみた!
文:ノア・セレン/写真: 関野 温/取材協力:デイトナ

Q.11 圧着端子とギボシ端子はナニが違うの?

A.結合した配線の脱着が簡単にできるか否か

ギボシ端子のオスとメスは簡単に脱着ができるので、後付けの電装品などの取り外しが可能になるメリットがある。対して、圧着端子は線と線を直接端子でかしめるので、線を切らないかぎり電装品を外すことはできないが、面倒なギボシ端子のかしめ作業が少なくなる。

画像: 「結線圧着端子」は熱収縮チューブと端子が一体になっているので、上の写真のように左右から配線を中央の端子に押し込んでからかしめ、ヒートガンで圧着すると絶縁できる。

「結線圧着端子」は熱収縮チューブと端子が一体になっているので、上の写真のように左右から配線を中央の端子に押し込んでからかしめ、ヒートガンで圧着すると絶縁できる。


Q.12 ふたつの配線コードを簡単に結合できるグッズはないの?

A.ハンダゴテなしでも簡単に溶着できる!

配線を確実に結合させるなら、ハンダ付けは最適な方法のひとつなのだが、熟練の技が必要なのも事実。しかし、デイトナの「ハンダ入り熱収縮チューブ」は、熱収縮チューブ内にハンダが仕込まれているので、ヒートガンで熱を加えるとそれが溶け出し確実に芯線を結線するだけでなく、絶縁チューブの役目も果たしてくれる。

画像: チューブ内のハンダの左右には樹脂のリング(赤部分)があり、これが溶けることでしっかりと配線を固定してくれる。

チューブ内のハンダの左右には樹脂のリング(赤部分)があり、これが溶けることでしっかりと配線を固定してくれる。

画像: ハンダは80℃で溶け始めるのでヒートガンで十分溶かすことができる。動きのある配線部の結線にはとても便利だ。

ハンダは80℃で溶け始めるのでヒートガンで十分溶かすことができる。動きのある配線部の結線にはとても便利だ。


Q.13 エレクトロタップの使い方を教えて!

A.パチッと挟み込むだけです!

電源が流れている配線から分岐させて電源を取る場合、最も簡単な方法がこのエレクトロタップと呼ばれるグッズだろう。この中にはブレード状の接続端子があり、ここに配線を載せてからフタをしてペンチなどで挟み込む。すると小さな溝に芯線が押し込まれることで被覆が破れ、ブレード部に電気が流れて隣り合う配線が結線されるという仕組みだ。

画像: Q.13 エレクトロタップの使い方を教えて!
画像: 確実に押し込むためにペンチなどの工具が必要。エレクトロタップは振動に弱い面もあるため、注意が必要。

確実に押し込むためにペンチなどの工具が必要。エレクトロタップは振動に弱い面もあるため、注意が必要。

画像: 配線が押し込まれた状態。タップのブレード部の溝の幅は複数あるので、配線に合わせた正しいサイズを使用する。

配線が押し込まれた状態。タップのブレード部の溝の幅は複数あるので、配線に合わせた正しいサイズを使用する。


Q.14 エレクトロタップに書いてある数字はナニ?

A.使える線の太さ。バイクは赤がメイン

エレクトロタップをよく見ると表面に数字が書いてある。これは使用できる配線の径を示している。配線が細すぎると抜けてしまうだけでなく、ブレードの溝で被覆が破れずに通電しないことがある。逆に太すぎるとそもそもブレードに入らないのと、無理に入れると芯線が切れることもあるので注意しよう。

画像: 表面に書いてある0.5〜0.85とは、このサイズの配線に対応することを示す。より太いのは青、より細いのは白で識別する。

表面に書いてある0.5〜0.85とは、このサイズの配線に対応することを示す。より太いのは青、より細いのは白で識別する。

画像: ブレードの溝がポイント。この幅に合わせた配線を使わないとトラブルのもとになる。

ブレードの溝がポイント。この幅に合わせた配線を使わないとトラブルのもとになる。


Q.15 熱収縮チューブってなんのために使うの?

A.確実に絶縁させるだけでなく、接合部が補強される

かつてはハンダなどで接合した部分を絶縁テープで巻いたりしたこともあったが、今はこの熱収縮チューブが一般的になった。接合部に被せてヒートガンであぶるとギュッと収縮して接合部を絶縁するだけでなく、内側についているノリが溶けることで配線の被膜にぴったりと接着し補強も兼ねる。年月が経ってもベタベタするようなこともなく非常に便利なアイテムだ。

画像: カラフルな熱収縮チューブもある。配線の色や電子機器の種類によって使い分けることが可能。

カラフルな熱収縮チューブもある。配線の色や電子機器の種類によって使い分けることが可能。

画像: 左端が収縮前、右端が完成。ヒートガンで全体をゆっくり確実に収縮させていくのがコツ。ライターであぶりすぎると穴が開くので注意。

左端が収縮前、右端が完成。ヒートガンで全体をゆっくり確実に収縮させていくのがコツ。ライターであぶりすぎると穴が開くので注意。


Q.16 常時電源とアクセサリー電源ってナニ?

A.メインキーONで通電するのがアクセサリー電源

常時電源とは、常に電流が流れている電源のこと。例えば時計機能のあるメーターやドラレコ、防犯アラームなどに使われる。バッテリーに直接つながっていれば、それも常時電源となるため「バッ直」と呼ばれることもある。対してアクセサリー電源は一般的にメインキーをONにした時にのみ電流が流れる配線系統で、後付の電子機器はここにつなぐことがほとんどだ。

画像: メインスイッチをONにして初めて電流が流れるのがアクセサリー電源だ。エンジンを始動しているときしか使わない機器はこれに接続する。

メインスイッチをONにして初めて電流が流れるのがアクセサリー電源だ。エンジンを始動しているときしか使わない機器はこれに接続する。

画像: バッテリーのプラス端子に直接つながっていればそれは常時電源。シンプルだが、常に電気を使っているためバッテリー上がりに注意。

バッテリーのプラス端子に直接つながっていればそれは常時電源。シンプルだが、常に電気を使っているためバッテリー上がりに注意。


Q.17 アースはどこにつなげばいいの?

A.バッテリーのマイナスかセルモーターのボルトが確実

電源を取ることに気をとられがちだが、同じくらいに大切なのがアースの確保。基本的にボディならどこにでもアースできるが、塗装された面のボルトでは通電しにくいため、アース不良で電子機器が作動しないこともある。既にほかのアース配線が接続されている場所を見つけて割り込ますのが最適だが、バッテリーのマイナスやセルモーター部のボルトなら確実だ。

画像: アース接続する場所も大切だが、確実なアースを確保するためにはこういった丸型端子を使うことも重要だ。ホーンのマイナス端子をアースとして使うことも可能。

アース接続する場所も大切だが、確実なアースを確保するためにはこういった丸型端子を使うことも重要だ。ホーンのマイナス端子をアースとして使うことも可能。


これぞ技アリ!

下の写真は黒い配線の間に赤い配線を絡みこませ、その上からハンダ付けした、デイトナ川崎氏の熟練の技。これだけ綺麗にできたら気持ちいい。

画像1: Q.17 アースはどこにつなげばいいの?

ハンダゴテは慣れとテクニックが必要

確実な接着・接合・結線という意味では昔ながらのハンダ付けに敵うものはないだろう。配線の間にハンダが入り込むことで、2本の線が一体化するのだから間違いない。ハンダは常に高熱な部分が露出しているため危険が伴う。

そして間違いやすいのが、ハンダ付けはハンダを溶かして載せるのではなく、配線を温めてから、そこにハンダを溶かし込むのが正解。なのでけっこう熟練の技が必要なのだ。これが上手くできないとハンダが玉になって転がり落ちてしまうので、上級者向きと言えるだろう。

画像2: Q.17 アースはどこにつなげばいいの?

Q.18 アクセサリー電源はどこにあるの?

A.あらかじめ用意されている車両もあるが、自分で探すのが一般的

メインキーONで電流が流れる箇所は車体のあらゆる場所にあるため、どこからでも電源を取ることは可能だ。しかし、数ある配線の中からアクセサリー電源の配線を探すには、テスターを使って探り当てるしかない。

しかし、近年のバイクはシート下やライト下などにあらかじめアクセサリー電源用のカプラーが用意されていることもあるため、それを活用すれば簡単だ。この他、ブレーキスイッチなどに割り込ませるワンタッチ装着商品もある。

画像: ヒューズ部にもメインキーONで電気が流れる箇所が多々ある。探り当てればその裏の配線を利用すればいい。

ヒューズ部にもメインキーONで電気が流れる箇所が多々ある。探り当てればその裏の配線を利用すればいい。

画像: ホーンも一部の車両を除いて、アクセサリー電源を取ることができる。端子が二つあるのでプラス側に配線しよう。

ホーンも一部の車両を除いて、アクセサリー電源を取ることができる。端子が二つあるのでプラス側に配線しよう。

画像: 最近はオプションのグリップヒーター用のアクセサリー電源カプラーが標準装備されていることが多い。

最近はオプションのグリップヒーター用のアクセサリー電源カプラーが標準装備されていることが多い。

画像: デイトナでは、ブレーキスイッチから簡単にアクセサリー電源が取れる商品が発売されている。

デイトナでは、ブレーキスイッチから簡単にアクセサリー電源が取れる商品が発売されている。


Q.19 検電テスターはどうやって使うの?

A.ワニグチをボディアースして測定用の針をプラスに接続するだけ

アクセサリー電源はメインキーがONの時だけ流れるので、ペン型の検電テスターならワニグチをボディアースして、測定用の針をカプラーの付け根の金属部分や、配線の中に針を刺して検電するのが一般的。通電していればLEDが光る仕組みになっている。ダイヤル式のテスターも同様だ。ヘッドライトのロービーム配線は、ハイビームにすると電気が流れなくなることがあるので、何の配線なのかを把握しておく必要がある。

画像: 液晶タイプのテスターなら流れているボルト数も表示される。写真はブレーキスイッチを確認中。

液晶タイプのテスターなら流れているボルト数も表示される。写真はブレーキスイッチを確認中。


Q.20 ヒューズからアクセサリー電源は取れるの?

A.ヒューズを差し替えるだけで簡単に電源が取れる

アクセサリー電源から配線を割り込ませて電源を取る作業を面倒と感じる人もいるだろう。そんな人には、ヒューズから直接電源を取り出すことができるヒューズ電源がオススメ。ヒューズを差し替えるだけで電源を確保できるので面倒な配線加工は不要だ。

しかし、デメリットもある。ヒューズボックスから配線が伸びるので、ホコリや水分が侵入してほしくないヒューズボックスに配線用の穴を開けなければならないのだ。ここの処理だけは注意が必要。

画像: 様々なアンペア数と形状のヒューズ電源が用意されている。純正ヒューズと差し替えるだけなので作業は簡単だ。

様々なアンペア数と形状のヒューズ電源が用意されている。純正ヒューズと差し替えるだけなので作業は簡単だ。

画像: ヒューズ電源にはメスのギボシ端子があらかじめ装着されているので、オスのギボシ端子と接続すればすぐに電源が取れる。

ヒューズ電源にはメスのギボシ端子があらかじめ装着されているので、オスのギボシ端子と接続すればすぐに電源が取れる。

文:ノア・セレン/写真: 関野 温/取材協力:デイトナ

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