文:小松信夫
何かに似ているようで、何にも似ていない不思議なデザインの125ccスクーター
前回のホンダSH350iに続いて、日本では顧みられないモデルシリーズです。今度はですね、日本向けにも「ジョグ125」とか「シグナス・グリファス」とか「X FORCE」とかの人気モデルを生産・供給してる、台湾ヤマハの125ccスクーター「Limi」です。私は存在を意識したことなかったよ、このモデル。台湾でのみ販売されてるらしい。
色気というかスポーティさというか、そういう部分はどっかに置いてきた感じの、シンプルな直線基調なデザインの「Limi」。最も派手なレッドでコレですからね。微かに先代シグナスX風味を感じるけど、ちょっとホンダの50ccスクーターの「ダンク」にも似てるか? うーん、やっぱり方向が違う。
個人的に「Limi」には、なんか文房具的な手触り感じるんだけど? 台湾でのキャッチコピーは「揮別標籤,自成一格」、直訳すれば「レーベルに別れを告げ、自分のスタイルになる」。多分、シンプルなスタイルだから、乗り手が自分のスタイルを表現できる、ということかな。
そもそも「Limi」が登場したのは2017年、その初代モデルがコレ。ちなみに初代は115ccですね。なんというか、こちらの方がデザイナーが描いたオリジナルコンセプトに近いんでしょうけど、その分アクが強いというかなんというか。「マグザム」から連なるモチーフがある…と思うのは考えすぎ? 2022年モデルで今のスタイルになったんですけど、コレをみると現行モデルは大分丸くなったんだなぁ、という印象。
ヘッドライトなどの灯火類にLEDを使うことで、スマートでシンプルなスタイリングを実現したことをアピールしてます。
「自造時尚 車身美學」は、「シンプルで緊張感のあるデザインで、自分らしいスタイルに」とかいう意味でしょうか。で、全体的に低くデザイン、前後10インチ径のホイールってこともあってシート高755mmで足着き性の良さも重視しているよ、というのが「極佳足着性」ってことですな。
フロントのインパネに設けられた給油口とか、蓋付きの充電用USBポートとか、使い勝手の良さは、長年スクーターを作ってる台湾ヤマハらしいところ。エンジンだって空冷だけど高効率なブルーコアエンジンを搭載、「平均燃費58.1km/L」だそうで燃費も良いし。フロントにディスクを備えるブレーキはCBSだよ。
いろんな状況の変化で、日本でもシティコミューターの本流はかつての50ccスクーターから、今や125ccスクーターへ移りつつあるわけですが。こういう「Limi」のような質実というか、無印良品的な125ccスクーターが日本でも受けるかも? あれ、それが今度出る「ジョグ125」なのか? 「Limi」は台湾の市場へ特化した結果こうなったってこと? ううむ、マーケティングって難しいなぁ。
文:小松信夫