文:宮崎敬一郎、小松信夫、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
ヤマハ「MT-10SP ABS」インプレッション(宮崎敬一郎)
スタイルもその走りもただものではない!
個性的なフェイスデザインで注目を集めたMT-10がモデルチェンジした。タイプは変わったが、ロボットに変身しそうな、個性的な面構えは健在。そもそもMT-10はYZF-R1のメカニズムを持つスポーツネイキッド。エンジンやフレームにはYZF-R1のDNAが濃密に注入されている。見た目の面でも「タダモノではないぞ」感を漂わせたいのだろう。
今回の新型は、エンジンの吸排気系やFIセッティンングなど、パワーや、ドライバビリティに関わるパートを大きく進化させている。最高出力は6PSアップの166PS! 強烈な走りのスパイスも健在だ。
このMT-10はストリート、峠道など一般路ユースが大前提。しかし、減速比などを大人しくロングにするのかと思っていたら、とんでもないワンパクなセッティング。低中速から使えるエンジンにした上に、そのパワーバンドを峠道でフルに使えるようにしてある。
仮に120km/hほどで立ち上がるコーナーがあったとしよう。YZF-R1だとローギアでも最も強力な領域は使えないが、MT-10はしっかりと回すことができるのだ。
MT-10はこのクラスのスポーツネイキッドの中でも傑出した運動性能が魅力。身軽で、よく曲がって、優れたスタビリティが武器。そんな速度レンジの峠道ならR1よりずっと速く走れる。理由はその瞬発力。タダモノではない。ちなみに、6速での120km/hは約5200回転。一方のYZF-R1は約4500回転だ。常用域に力を集約したMT-10が、どれほど強烈な瞬発力を発揮するか想像できると思う。
この新型のすばらしい点は、そんなパワーなのにすごく扱いやすいこと。スロットルを開けていくと、どのパワーモードでも、あるアクセル開度以上で急に力強くパワーが立ち上がる2段ロケットのようなレスポンスは旧型と同じだが、その繋がり方が滑らか。リニアに呼応して従順、格段に扱いやすくなっている。
今回試乗したSP仕様は、オーリンズの電子制御サスペンションが付いている。これも同種のサスペンションを使用するYZF-R1M同様、3種のオートとマニュアル設定が選べる。峠道でワンパクな走りをするときにはライディングモード「A」にデフォルト設定されているパワーモード1、サスはオートの1で走ったが、移動中はサス設定をより快適なオートの2や3にしたところ、まるでツーリングスポーツのような快適さ。今回は、主にそんなセッティングで東京〜富士山の往復を楽しんだ。