文:太田安治、オートバイ編集部/写真:赤松 孝
カワサキ「KLX230SM」インプレ(太田安治)
ストリートでも楽しいソリッドな走りが魅力
オフロード車をベースに足周りを変更し、舗装路で機敏な運動性を発揮するスーパーモタード。2000年代には国内4メーカーも50cc〜400cc車を揃えていたが、続々と生産を終了。新登場のKLX230SMは現在の国内市場で唯一の現行モタードとなる。
ベースはオフロード車のKLX230。フロントフォークを倒立タイプに、前後ホイールを17インチに換装し、装着タイヤも完全なロード仕様。ヘッドライトのデザインも変更され、ぐっと引き締まったルックスになった。
136kgという装備重量で取り回しやすさは抜群。走りもヒラヒラ軽快かと想像したが、これが意外なほどに落ち着いている。フロントタイヤにしっかり荷重が掛かる車体姿勢に倒立フォークの高剛性が加わり、接地感が高いのだ。バンク開始時にリアタイヤがスパッと向きを変えようとするが、フロント周りがステアスピードを抑えて旋回力と安定感をバランスさせている感覚。タイトターンが続く峠道での運動性能は俊敏そのもので、少々乱暴に扱ってもフロントからスリップダウンする気配がなく、安心して攻め込める。
エンジンはフラットなトルク感で、特定の回転域で弾けるように回るとか、高回転でさらに伸びるといったエキサイティングさはないが、4000〜7000回転あたりを使っていれば19馬力という数値以上に元気に走る。感心したのはその回転域でのレスポンス。スロットルを急激に開閉してもギクシャクせず、微妙な操作に忠実に反応する。ゼロ発進の力強さと併せて扱いやすく、5速・40km/hで流すことも可能。ただし高速道路ではエンジンの回転数が高くて気ぜわしく、上体に受ける風圧も大きいので、ストレスなく走れるのは100km/h以下になる。
モタードらしさを感じるのは足周りの設定。フロントブレーキはΦ300mmの大径ローターで、入力初期からリニアに効力が増してコントロール性も上々。ブレーキでリアを振り出す操作を織り込んであるのか、ABSの介入タイミングは遅めになっている。前後サスのストローク量は大きいが、減衰の効いた設定でフワ付きがなく、乗り心地は硬め。一人乗りの普段使いならリアのプリロードを抜けば乗り心地も軽快性も増すはずだ。
街乗りに適したキャラクターだが、舗装林道のような、やや荒れた路面の峠道で積極的に操ることで本領を発揮しそう。モタードらしい魅力が光る1台だ。