歴代TZRを乗り継いできて残した1台を維持する
「元々TZR250シリーズは好きで、初代1KTから乗って、後方排気もV型もと全型式を揃えていた時期もあったんです。でもいろいろ整理することになって、それで残したのがこの3XV。SP仕様を元に友達の作業ガレージで手を入れていって、ここまで仕上げました。この友達が器用で、いろいろ細かいことまでやってくれたんです」
こう言うのは、1990年代初頭のWGP500、マールボロ・チーム・ロバーツカラーで仕上げられたTZR250R SPのオーナー、RAINEY HIRφさん。サイドの白抜き#1とDUNLOPロゴで分かるように、’93年のYZR500=0WF2、ウェイン・レイニー車がモチーフだ。
「2年連続チャンピオンを獲った後でしたけど、その年の3戦目だった日本GPの生中継を見てたら、途中までどうにも勝てそうにない展開(スズキRGV-Γの#34シュワンツが終始リードする中で#4ダリル・ビーティーと#6伊藤真一の2台のNSRが付き、その後ろに#1レイニーという状態。終盤に前に出たレイニーが3人を僅差で抑えきった)。それを執念というか、とにかく熱い走りで勝ちきったのに感動したんです。アクシデントでこの年に引退してしまうんですけど、あの時の輝きはもう、僕にとっては神。ですからレプリカを作って、レイニーさんに見てもらおうと思ったんです」
改めて現車を見ていくと、ブラックフレームに黒いホイール、当時の蛍光レッドを艶まで再現したカラーリングにステッカーワーク。オーリンズステダンやブレンボキャリパー、TZ用ステップも付く。基本は2気筒の3XVなのだが、右2本出しとしたチャンバーもあってか、雰囲気はまんまV4の’93レイニー車だ。
「きれいな状態のままでいさせたかったので、ホイールはダイヤモンドコート、各部はアルマイト、カウルもクリアコートなど、気を遣いました。アルミは手入れしていてもすぐ白サビが出るので、それを避けるのが大きいです。車両自体はもう20年近く経つので、パーツの心配がないうちにオーバーホールしようと、付き合いのあるチャレンジさん(オートショップ チャレンジ)に作業をお願いしました。
最近では乗る機会は減りましたけど、ライバルに比べてパワーがなくて、それをコーナーでカバーするというTZRの感覚も、YZRに近かったのかなと思います。できたらヤマハさんに保管してあるYZRと並べてみたくもあります。まあ何にしても、レイニーさんのあの熱い走りが、今も僕を支え続けているんです」ともHIRφさん。資料だけでなく想像力や熱意の強さがリアル感を形作る。この3XVは、2ストロークレプリカが熱かった時代をそのまま投影した、熱いレプリカとしても心に残るはずだ。
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Detailed Description 詳細説明
スクリーンのWayne文字なども、本物をそのまま持ってきたかのように再現。ヘッドライトからも分かるように外装は3XVのノーマルだ。
ステムやセパレートのハンドルは'93TZR250R・SP(3XV7)のノーマルで、上下フォークブラケットにはダイヤモンドコーティングを施す。フロントマスターシリンダーはブレンボラジアル。フレーム左にオーリンズ・ステアリングダンパーを追加するなど、レプリカ度を追求する。
シートカウルは3XV7でシートパッドおよびフェンダーレスキットはともにオリジナル製作品。テールランプなど灯火類はフルLED化してある。
マットブラックのアルミデルタボックスフレームはTZR250R SPノーマルで、モチーフのYZR500同様にMarlboroロゴを貼る。エンジンも'93年型SP仕様(3XV7)のノーマルで、φ32mmボアのキャブレターはリセッティング。エンジンも含めて、この撮影後にオーバーホールを受けた。
フロントフォークはTZR250R SP純正のφ41mmフルアジャスタブル倒立で、アウターチューブ内部にカシマコート、インナーチューブにチタンコーティングを施す。フロントフェンダーはTZタイプのカーボンをオリジナルで製作、フロントキャリパーはブレンボAxial P4だ。
チャンバーはアルファーレーシングにYZRの形状でと依頼した特注の右2本出しブラック/カーボンサイレンサー仕様。リヤブレーキはノーマルディスクにニッシン2ピストンレーシングキャリパーを組み合わせている。ステップはTZ250用をダイヤモンドコーティングした。
スイングアームはTZR250R SP純正。リヤショックはオーリンズのTZ250用で、シリンダー内部にカシマコート、ロッドにチタンコーティングを施す。3.00-17/4.50-17サイズのホイールはTZR250R SPの純正をダイヤモンドコート。ドライブチェーンは当然レジーナ製だ。