文:太田安治、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
ホンダ「フォルツァ」インプレ(太田安治)
上質なレスポンスを楽しめる完成度の高い「円熟の一台」
2000年代、各メーカーが複数車種の250ccスクーターを矢継ぎ早に投入し、「ビッグスクーター・ブーム」が巻き起こった。だが2006年からのオートバイの駐車違反取り締まり厳格化で「足」としての利便性が削がれ、排ガス規制強化や景気の後退などもあって、多くの車種が生産を終了したが、フォルツァはその中にあって2000年登場の初代からマイナーチェンジ/モデルチェンジを重ね、国内250ccスクーターを代表する存在となっている。2023年型は最新排ガス規制に対応し、外装デザインも一新された。
エンジンは排出ガス規制対応でマフラー形状が微妙に変わっているが、フィーリング的には同じ。約2500回転で遠心クラッチがジワリと繋がって穏やかに動き出すため、歩くような極低速での速度コントロールがしやすく、Uターンも不安なく行える。
スロットル全開でフル加速すると、最大トルクを発生する6250回転あたりをキープして一定の加速感で速度を乗せていく。高回転域の伸びやかさはないが、100km/hクルージングは余裕たっぷり。どの回転域でも振動が少なく、吸排気音も静か。前後サスペンションがしっとりと動き、スクーターの弱点であるギャップ通過時のドタドタ感も抑えられているから乗り心地は極めて上質だ。
このクルージング適性をさらに引き上げるのが考え抜かれた防風性能。ハンドル左側のスイッチ操作で上下する電動スクリーンは180mmもの可動域があり、最も高い位置ではヘルメットの頭頂部をかすめるように風が流れる。この位置では走行風圧によるヘルメットの揺れと風切り音が消え、上体の負担も激減し、逆に最も低い位置にセットすれば風を切る爽快感が得られる。
徹底的な空力解析により、どの位置でも背中を押すような風の巻き込みが少ないことも美点。下半身もほとんど風圧を受けないから、雨にも濡れにくく、冬場の耐寒性も抜群にいい。この圧倒的な防風性能が生む快適さ、疲労の少なさは大型ツアラーと比べてもひけを取らない。
こうした快適性に加え、ロードスポーツモデル的なダイレクトさを持つハンドリング、フルフェイスヘルメットが2個入るシート下スペースに代表される実用性の高さがフォルツァの魅力。装備の充実度を考えると、レブル250より約8万円高い車両価格もお買い得にさえ感じる。改めて「ホンダの良心」を感じさせる一台だ。
ホンダ「フォルツァ」カラーバリエーション
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