文:宮崎敬一郎、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
ハーレーダビッドソン「ローライダーST」インプレ(宮崎敬一郎)
素直な走りと快適性の高さを両立した一台
現行のハーレーのクルーザーファミリーはソフテイル系のフレームをべースにしている。独特のスイングアーム形状から、リアがリジット風に見えるスタイルが魅力だ。
そんなファミリーの中で、ワイルドな雰囲気と、高級感溢れるフィニッシュで人気になっているのがこの「ローライダー」。今回試乗したのは昨年加わったSTというスポーツツーリングバージョンで、かつてのモデル、FXRTに似たデザインのフロントフェアリングと、スリムなサドルバッグを装備しているのが特徴だ。
ツアラー系の重厚豪華なツーリング装備に比べるとスッキリした印象で、装着による重々しさは全く感じない。ローライダーS同様のスポーティなたたずまいはそのままだ。
実際のところ、ローライダーにカウルとパニアを付けただけではなく、足回りには専用のセッティングが施されているようで、これがクルーザーとは思えないような素直なハンドリングと、ツーリングファミリーと変わらない上質な乗り心地も手に入れている。サス自体のトラベル量もソフテイル系としては多めなようで、どんな衝撃に対してもゆとりのあるしっとりとした動きで対応できる。肉厚のあるシートも心地よい。
だが、フワつくだけで簡単に突き上げられるような足まわりではなく、クルーザーとしては深めのリーンアングルをフルに使ってコーナリングもこなせるし、強力なエンジンを力の限り使ってもよく耐える。
搭載するエンジンはミルウォーキー・エイトの117。ハーレー空油冷Vツインの最強ユニットだ。どんな回転域からでもレスポンスはダイレクトだが、硬いものでブッ叩かれるような荒々しい反応はしない。適度に角が丸いレスポンスなのに、そこからのパワーの立ち上がり方は猛烈! 300kg以上ある車体をスポーツNKなどより素早くダッシュさせる。Vツインのパルスも迫力いっぱい。3000回転まで、生き物のようにスロットル開度で表情を変える。これも楽しい。
ローライダーSTは、このよくできた強力なエンジンと、新たに施された素晴らしいセッティングの車体回りによって、見た目の重装備を意識させない、スポーティな走りまでこなせるマシンに仕上がっている。その快適さもさることながら、扱いやすさも大きな魅力。バランスの取れた、使い勝手のいいモデルだ。