文:太田安治、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
カワサキ「エリミネーター SE」インプレ(太田安治)
ネイキッド感覚で乗れる自然体が楽しいクルーザー
ロードスポーツモデルをベースとした1970年代後半からの「アメリカン」に対し、専用の長く低い車体、ネイキッドモデル的なポジションによる「ストリートドラッガー」スタイルでヒットしたのが1986年デビューの初代エリミネーター400。新型エリミネーターもそのイメージを受け継ぎ、長いホイールベースと前18/後16インチのホイールに履いた太いタイヤが醸し出す重厚さで、400ccモデルとは思えない存在感が漂っている。
ところが跨がってサイドスタンドを払うために車体を起こすと、拍子抜けするほど軽い。足つき性が抜群にいいことに加えて車重が178kgと軽量なことを実感できるし、跨がったままの前後移動も楽々と行える。
「クルーザー」スタイルだけに、エンジンは低中回転域での鼓動と太いトルク重視、ハンドリングは直進安定性が高い落ち着いたもの…という想像は見当違い。乗ると意外なほどネイキッドスポーツ並みに軽快で、素直な特性に仕上がっているのだ。
開発陣に聞くと、エンジンはニンジャ400/Z400と共通で、ドリブン(リア)スプロケットを2丁増やして少し加速型にしているだけとのこと。もともと低中回転トルクが太いニンジャ/Z系のエンジンなので、吸排気系やインジェクションの設定を変更する必要はなかったのだろう。乗ってみてもその判断に異論はない。2気筒の鼓動感こそ薄いものの、力強くて扱いやすい特性でとにかく街乗りが楽。高速道路の6速・100km/hクルージング時は約5700回転で、不快な振動もなくスムーズに回っているし、追い越し加速での伸びやかさも文句なしだ。
もうひとつ素晴らしいのが乗り心地の良さ。車高の低いクルーザーはリアサスペンションが短く、ストロークを大きく取れないにも関わらず、ギャップを越えた際のリアからの突き上げが抑えられている。サス設定の巧みさだけではなく、座り心地のいいシートも衝撃吸収性に貢献している。
コーナリング性能が問われるモデルではないが、上体を伏せ気味にしてフロント荷重を増やすとネイキッドに近い旋回力も出せる。ステップ位置が低く、バンクさせると早めに接地することさえ頭に入れておけば、峠道も積極的に楽しめる。
既存のクルーザーよりもネイキッドに近いキャラクターで、様々な使い方に対応できる高い適応力と快適さを備えているのが、新型エリミネーターの魅力だ。