※本企画はHeritage&Legends 2022年4月号に掲載された記事を再編集したものです。
車種を超えて出てくるネガをつぶしていく(6.冷却系、7.エンジンまわり①吸気系)
後半はまずは、冷却系から。もちろん、空冷の場合はスルーしてOK。ここは対象車がGPZ900Rだから起こるネガと言うより、水冷車なら気をつけたいことだと意識するのがいい。
中村さんはサイドカバーを外して車体右側のリザーバータンクを出し、作業をしやすくするために燃料タンクも外してくれた。
「冷却系でまず見ておきたいのは、冷却水がちゃんと入っているかです。リザーバータンクがあるから大丈夫と思っていても、そのアッパー~ロアレベル内に冷却水がないことも多く見られます。
ここだけでなく、冷却水通路の冷却水が足りないこともありますから、確認してラジエーターから補充。冷却水自体も車検ごとなど交換時期が指示されていますから、定期的に換えましょう。ウォーターホースの冷却水にじみもチェック。クランプの締め癖が付いて変形してにじみ出していることもありますから、クランプの締め位置を時々変えるといいでしょうね」
実際に漏れ跡や冷却水の不足を見ると気になってくる。転ばぬ先の杖の部分だけど、必須だ。
冷却系に続くのは吸気系。
「エアフィルターの汚れは清掃するか、ひどければ交換。エアクリーナーボックス内部も吹き返しなどで結構汚れますから清掃を。あとはキャブレターインシュレーターのヒビの有無も注意します」
普段見ていない、気にしていないからこそ、この機会に見ておこう。
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6.冷却系/水冷車の要となるラジエーターへの通路やクーラントの量を見ておく
6−1.燃料タンクや外装を外してアクセスを確保
ここからはエンジンやメインフレームに近い部分になるので、燃料タンクやサイドカバーは外して作業したい。GPZ900Rの場合はシートを外して燃料タンク後端が露出するので、そこにある2本のボルトを外せばタンクを外せる。
普段は燃料タンクに隠れているフレームもこの機会に拭いておこう。
6−2.リザーバータンク液量を適正に
GPZ900Rでは車体右後ろにあるラジエーターリザーバータンク。右サイドカバーを外せばアクセスできる。
この車両ではロアレベルよりも下でアウト。ラジエータークーラント(冷却水)をアッパーレベルとロアレベルの中間程度にした。
6−3.ラジエーターキャップ部での液量も確認
リザーバーでも不足していたから……と本体、ラジエーター側もキャップを外して液面をチェック。
上から中を見てみると、液面が下がっていて見えない。冷却水が足りないのだ。また、口の部分にはサビも見られる。拭き取って補充する。キャップはきれいな状態だった。
オイルジョッキを使い、冷却水を補充。口切りくらいまで入れた。
キャップを閉めてひとまずOK。
ウォーターホースに見られた冷却水漏れの白い跡。ホースにクランプの締め癖が付いているようで、締め位置を時々変えたい。湿っていたらホース/クランプは要交換だ。
冷却系確認でエンジン周辺を見るついでにエンジンオイルも確認。GPZ900Rでは点検窓がエンジン左のクラッチスレーブ近くにある。直立状態でアッパー/ロアレベルの間にオイルレベルがあるか、色と合わせて確認。
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7.エンジンまわり①吸気系/新気が正しくスムーズにエンジンに行くか、エアクリーナーやゴムまわりをチェック
7−1.エアフィルターの汚れや場所を確認
エアフィルターも要チェック箇所。GPZ900Rではエアクリーナーボックス左側にボルト2本で蓋が固定されている
蓋を開け、ホルダー(黒いレール。エアクリーナーエレメントを下から支える)を外す。
ホルダーが外れたら、フィルター(エレメント)を引き抜く。
右気筒側(吸い込み側)がかなり汚れているのがわかる。
裏にすると吹き返しでも汚れていた。このレベルだと交換だ。
7−2.エアクリーナーボックス内部の汚れも取る
エアフィルター(クリーナーエレメント)の汚れは軽ければ洗ってオイルを含ませて再使用するが、今回のこの汚れから、エアクリーナーボックス内部も同様に汚れていると考えられる。実際に油や汚れが結構付いているのが分かった。
乾拭き(パーツクリーナーも使用可)してきれいにしよう。
きれいになったら蓋をして元に戻す。
7-3.キャブレターインシュレーターのヒビ・漏れに注意
エアクリーナーボックスからキャブレターにつながるインシュレーターも要チェック箇所。ゴムパーツだから経年でヒビが入ったり、締め付け不良でエア漏れ(2次吸気)する場合もある。
確認と同時に汚れをクリーナー&ブラシで取り除こう。
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点火系も確認多し。ここまで来たら洗車!(8.エンジンまわり②点火系、9.洗車)
いよいよチェックも大詰め。点火系だ。中村さんは左気筒の点火コード、プラグと外していく。
「ここも結構見たい場所は多いですよ。まずプラグコードとプラグキャップ。ちゃんと差し込まれているか、ヒビがないか。キャップもしっかりプラグをホールドしているか。点火プラグは、まず左気筒がオイルで濡れてないか。
GPZ900R系ではよく言われますが、プラグホールガスケットを使う機種では結構多いんです。このガスケットが抜けて、プラグまわりにオイルが溜まる。それで失火して調子が悪い。この車両もそうなってます。右端気筒は焼けもいいんですけどね」
左に傾けて止めるから左気筒をしっかり確認するのがいい。さあ、ここまで来たら外装を付けて、仕上げに入っていこう。洗車だ。
「その洗車ですが、水分が溜まるとサビや不要なトラブルの元になりやすいので、エアコンプレッサーがないならあまり水をかけない方法でやった方がいいです。コンプレッサーがあって水分を残さず飛ばせる環境がある人はどんどん洗いましょう」と中村さん。
水洗いしていく場合は中性洗剤を薄めてスプレーボトルに入れ、拭きながらブラシでゴシゴシ。中村さんが使うのは馬毛ブラシだ。
「バイク屋さんでは馬毛とか豚毛を使ってると思いますよ」
これは良さそうだ。上から下へとどんどん洗い、磨きに進む。
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8.エンジンまわり①点火系/エンジンの調子はプラグから。焼けだけでないチェックポイント?!
8−1.4気筒車なら左端気筒のオイルの滲み出しには要注意
左端気筒(#1)のプラグキャップを持って上へ引き上げる。
キャップが入っていた穴(プラグホール)を上から覗いてみる。
点火プラグの碍子まわりにエンジンオイルが溜まっていた。
8−2.オイルで失火すれば調子は良くない
続いてプラグレンチを使って#1の点火プラグを外してみる。
白い陶器の部分=碍子は写真でも分かるようにエンジンオイルまみれになっていた。これではプラグコードからの電流はリークし、失火して調子は良くない。プラグホールガスケット交換、もちろん点火プラグも交換だ。
8−3.プラグコードとキャップの状態も確認
プラグコードはひび割れがないか、プラグコードとキャップがきちんとつながって(刺さって)いて抜けていないかを確認しておく。
参考までに右端、#4気筒の点火プラグを確認したところ、ここはプラグホールへのオイル漏れもなく焼けも良好。
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9.エアコンプレッサーが使えるならどんどん水洗いそうでない場合は乾拭き主体で仕上げていく
9−1.水と中性洗剤、馬毛or豚毛のブラシで洗う
エアコンプレッサーがあって水分を飛ばせることを前提に、シャワーヘッドノズルを使って水をかけていく。
中性洗剤を薄めて入れたスプレーボトルも用意し、洗剤をかけて上から下へブラシで洗っていく。中村さんが使っているのは馬毛のブラシ。柔らかいが腰もあって外装にも優しい。豚毛もよく使われるそう。
9−2.汚れやすい下まわりも同様に洗っていく
ボディに続いて、汚れやすい下まわりもブラシで洗剤を泡立てつつ、どんどん洗っていく。
ブレーキキャリパーまわりも、先にひどい汚れを落としているからよりきれいにできる。
洗剤を使ったら再度水をかけていって洗剤を落としていく。
9−3.エア噴射で水分を飛ばして残さないように
水洗いが済んだら、洗ったのと同じように上から下へエアコンプレッサーでエアを吹き付けて水分を飛ばしてしまう。
極力、水分を残さないのがここでの重要なポイントだ。
燃料タンク下のシリンダーヘッドなど、残りやすい部分もあるので念入りに。
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難しければプロに依頼でOK。快調な走り出しへ!(10.磨き上げ&注油)
最後は磨き上げ。よく言われるように、確認をした上できれいにしておけば、次に何か起こっても早い段階で把握できるし、対処もしやすくなる。清掃用やコーティング系ケミカルもたくさんあるが、保ちや使い方などの特徴を掴んで使うといいと教えてくれるのは同店メカニックの鹿島さん。
磨き上げまで進んだら終了だ。走り出しに向けてというテーマに、中村さんは中古車が走り出すために、これまで何百台どころでない台数を仕立てた経験からの手順を教えてくれた。普段のメンテとはまた異なるノウハウもある。まずはしっかり整備して、走り出そう。
10−1.汚れを落とし保護も行うケミカルにも選び方と使い方あり
水分を飛ばしたら磨き上げだ。ここで使ったのはフォーム(泡)タイプの洗浄&つや出しワックス。吹いてからの滞留性が良く、汚れ落としに有利と鹿島さん。
マイクロファイバークロスで拭き上げる。
10−2.周囲への飛び散りに注意しながらスプレー&吹き上げ
スプレータイプのケミカルは飛び散りに注意しながら使う。吹きつけと拭き取り、乾拭き。写真のシュアラスター・ゼロフィニッシュは比較的安価で使いやすいとのこと。
燃料タンクなど塗装部分にも、ウインカーステーなどの無塗装樹脂部分にも使う。クロスに吹き付けて対象箇所を磨いてもいい。
10−3.ホイールやエキパイにも使って仕上げ
清掃&コーティングタイプのケミカルはホイールまわりなどの汚れを落としつつ、次の汚れを付きにくく/落としやすくする効果がある。
タイヤなどに付かないように注意して施工する。上でも使ったシュアラスター・ゼロフィニッシュはエキパイにも使えると鹿島さん。
10−4.エンジンまわりにも
エンジンカバーも同じように次々と磨き、拭き上げていく。
10−5.意外な盲点、キーホールにも注油していく
仕上げにもうひとつ、可動部への注油。盲点はイグニッションキーホール。キーが差しにくいなら注油を。
燃料タンクキャップ内側のロック用の爪も潤滑不足で固くなってしまいがちなので時々注油したい。
サイドスタンド基部やステップバーの可倒部、ブレーキ/クラッチレバーのピボットに指していく。
今回使った主なケミカル。左からパーツクリーナー、清掃&コーティング剤、潤滑剤、シリコンスプレー。自分に合うものを探してみよう。