優雅なクルージングをイメージさせる、ホリゾンタルラインを基調としたロー&ロングスタイルを確立した新型エリミネーター/SE。ワイルドかつマッスルマシンを彷彿とさせる先代のエリミネーターシリーズの面影を随所に残しつつ、ニンジャ400やZ400に搭載されたコンパクトな並列2気筒エンジンを搭載し、全く新しい走りを創造している。
文:山口銀次郎/写真:松川 忍

カワサキ「エリミネーター」「エリミネーター SE」インプレ(山口銀次郎)

画像: Kawasaki ELIMINATOR/SE 総排気量:398cc エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列2気筒 シート高:735mm 車両重量:176kg(SEは178kg) 発売日:2023年4月25日 税込価格:75万9000円(SEは85万8000円) ※写真はSE

Kawasaki ELIMINATOR/SE

総排気量:398cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列2気筒
シート高:735mm
車両重量:176kg(SEは178kg)

発売日:2023年4月25日
税込価格:75万9000円(SEは85万8000円)
※写真はSE

概念を覆す軽快さに、高い運動性能を垣間見た!

フレームやエンジンがむき出しで、極端に小ぶりなカバー類を持ちマッスルバイクであることを主張するかのようなスタイリングが特徴の新型エリミネーター。時代を超えその名が復活し、改めて先代のエリミネーターシリーズのキャラクターを思い出した。シリーズの最後を飾ったのは、水冷Vツイン250ccエンジンを搭載したアメリカンクルーザーを彷彿とさせるものだった。

カワサキ唯一となる250ccVツインエンジンは、他社の和み系のアメリカンクルーザーと異なり、高回転域に伸びがありかなり元気で、どちらかといえばスポーツモデルのような印象だった。確かデビュー当時の記事にそう記した覚えもある。

その後10年近くのロングセールスを記録し、2006年モデルを最終にカタログからドロップしたが、突如として2023年の大阪モーターサイクルショーにてそのブランドの復活が告げられ、華々しくお披露目となったのは記憶に新しいことだろう。

画像1: エリミネーター

エリミネーター

車体の雰囲気やディメンションこそクルーザーを彷彿させるものの、筋骨隆々のグラマラスなボディは、先代からの「走りのエリミネーター」であることをイメージさせてくれる。

元々250エンジンベースの400エンジンを搭載するというあたりからも取り回しの良さは想像を裏切らないもので、押し引きのシチュエーションにおいては、大げさではなくまるで250クラスの手応えの軽さなのだ。それこそキャスター角が立ったスポーツモデルのような軽やかさがあるので、初心者や小柄なライダーでも取り回しが楽だと思う。

シートに跨ると、低いという表現よりも「深い」といった印象を持つくらい、地面との近さを感じる。視界の低さゆえ、ワイルドに地を這うイメージで、いやがおうにも車体のロー&ロングスタイルを意識することになる。

極低速域からコロンコロンと意のままに寝かし込むことが可能となっていることも特筆すべき点だ。もちろん必要十分なショックストロークが確保されているのだが、リアタイヤに直に跨っているかのようなダイレクトな操作感は、シート高の低さとロー&ロングの車体がもたらす恩恵のひとつ。

ミッドコントロールのステップとハンドル位置の設定の妙で、着座から姿勢変化なしに窮屈さ等がまったくない自然な乗車姿勢が得られる。上体は起きているにも関わらずドンと低くなる乗車時の視線は、他のモデルにはない独自の世界観を創り上げている。

ただ、シートがリアタイヤに被さるぐらいに配置されているため、身長によってはハンドルまで少し遠く感じるかもしれない。その一見小ぶりで薄く見えるシートは、面圧が高くなる骨盤の突起した部分をホールドするコシの強さがあり、下半身による車体の操作感を高めるとともに疲労軽減にも貢献するものとなっている。

400ccならではの十分すぎるエンジン低回転域のトルクは、エンジンを余計に回さなくともスルスルっと滑らかなスタートができ、発進時に心強いこと請け合いだ。並列2気筒エンジンの振動は、大げさな演出は一切ないスポーツモデル譲りならではのフィーリング。もちろん、高回転域まで淀みなく吹け上がり、エキサイティングな加速力をみせる。

先に十分なショックストロークが確保されていると記したが、ロードモデルにしては前後ともにショートストロークかつ硬めのクッション設定で、車体全体の印象が引き締まったスポーツモデルを連想させ、低く長いドラッガースタイルが鋭い加速力をグッと受け止め速度を乗せていく印象だ。

画像2: エリミネーター

エリミネーター

ストリートにおいて400ccのエンジンパワーを堪能できるとしたら、そのパッケージは、エリミネーターのようなスタイリングなのかもしれない。一定の速度でゆったりとクルージングしている時も、実に心地良いのだ。トップギアを使用しアイドリングから少し回ったくらいのエンジン回転数で、70~80km/hのクルージングが特に味わい深いのである。一定速度とはいえ、極めて少しだがスロットル操作を必要とするものだが、そんな時もスタート時に感じたトルクフルな特性が活きており、優雅な雰囲気を演出してくれるのだ。また、トルクフルな特性は味わい深いだけではなく、実質的には精神的には余裕を、体力的には余力を生み、長距離走行においても疲労を軽減してくれるはずだ。

ロー&ロングなスタイリングからくる高いクルージング性能の高さに加えて、転回範囲が狭い取り回しの良さも光るエリミネーター。キャスター角が寝ている一般的なアメリカンクルーザーのように寝かし込まなければ小回りができないというクセがなく、スポーツモデルよろしくサッと軽やかな身のこなしで転回することができる。そんな、素直でクセのないハンドリングも特筆すべきポイントであると加えておきたい。軽量コンパクトでありつつ、ロー&ロングスタイルの特性を生かしたキャラクター造りに、ある意味枠に囚われない新感覚ジャンルを感じた試乗だった。  

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