今回のテーマはエキゾーストパイプの曲線美について。理想のカタチを諦めずに追求し続けるこの姿勢にこそ、ケイファクトリーの物づくりの原点がある。機械曲げでは不可能といわれた、優美なエキパイが生まれた背景とは!?
文:小川 勤
※本企画はHeritage&Legends 2023年2月号に掲載されたものです。

機械曲げの限界を超えた曲線の美しさを求めて…

ケイファクトリーが販売するマフラーのエキゾーストパイプには直線部分がない。チタンパイプがまるで集合部に吸い込まれるように大きな一定のアールを描く。

○○フェチという言葉があるが、ケイファクトリー代表の桑原裕志さんは、生粋のエキパイフェチ。マフラーはカスタムの中で一番の大物だから、ケイファクトリーをスタートさせて以来、美しいエキパイ作りにこだわり続けてきた。

機械曲げでこれほど柔らかい曲線を描くエキパイはほかに見当たらず、それはこの曲線を出すことが技術的に難しいから。ノーマルのエキパイを見ると分かるが、通常の機械曲げエキパイは「曲線→直線→曲線」の組み合わせで作られ、一定のアールを描くものは少ない。

’90年代までは、一定のアールで美しく曲げられたマフラーは手曲げだけだったのだ。

「若い頃は手曲げのマフラーに憧れましたが、とても高価で手が出なかった。だから機械曲げの中古で我慢しました。そのトラウマからか、自分がほしいと思うエキパイは美しい曲線を描くもの。その形を追求してきました。手曲げでも一箇所を炙って曲げてを繰り返すのは比較的作りやすいのですが、緩く大きな曲線を出すのは一部の職人にしかできませんでした。しかもパイプが太くなるほど難しくなる。美しいフォルムを目指して何度も作り直しました。見ていて飽きない、飾っている時も所有欲を満たしてくれるエキパイが作りたかったんです」と桑原さん。

■ノーマルのエキパイとアールを比較してみよう

画像1: ■ノーマルのエキパイとアールを比較してみよう
画像2: ■ノーマルのエキパイとアールを比較してみよう

▲ケイファクトリー製のエキパイ(上)とノーマルのそれ(下)を比較してみると、ケイファクトリーのものがいかに緩やかな曲線を描いているかが分かりやすい。桑原さんは機械曲げのこのカクッカクッとしたアールがどうしても好きになれなかったという。

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執念とも言える思いが美しいフルエキを生んだ

レーシングマフラーといえば手曲げだった時代。それは文字通り職人がパイプに砂を詰めてバーナーで炙って1本ずつ製作された。 しかしその後、パイプを曲げる機械であるベンダーがマフラー業界に普及すると機械曲げが主流になっていったのだが、桑原さんはエキパイに直線部分が残るベンダーの曲線が許せなかった。なんとか機械曲げで手曲げのような曲線を出せないか……そう思い、ケイファクトリーが3Dベンダーを導入したのは1999年頃のことだ。

その頃はベンダー・メーカーも鉄パイプは曲げられたが、薄くて硬いチタンパイプを曲げる技術は持っていなかった。そこからは機械メーカーと共に試行錯誤。チタン材は曲げるとシワになったり割れたりして何本も廃棄したという。

その時に役立ったのが、美しいエキパイを実現するために手掛けていた手曲げマフラーの技術だった。当時ケイファクトリーは、日本でいちばん手曲げのマフラーを製作していたメーカー。そのため、どんな素材が曲がりやすいのかを熟知していた。そして2年間の開発期間を経て完成したのがバフがけしたエキパイにブルーの焼き色をつけたフルエキゾーストだった。

職人による手曲げは確かにアールは美しいが、少なからず誤差が出る。それが性能差を生むこともあるかもしれないが、機械曲げであればそんな心配は皆無。ついに機械曲げで手曲げを超えるアールと性能を実現したのだ。これは、『美しいエキパイをつくりたい』という思いを持ち続けた、桑原さんの執念とも言えるだろう。

エンジンを包み込むように流れる、極太&緩やかなエキゾーストパイプ。前輪やシリンダーとのクリアランスなど見るほどに、桑原さんのこだわりが伝わってくる。

■美しい曲線は3Dベンダーから生まれる

画像1: ■美しい曲線は3Dベンダーから生まれる
画像2: ■美しい曲線は3Dベンダーから生まれる

▲ケイファクトリーは理想的なエキパイの曲率を追求し、ベンダーメーカーやパイプメーカーと試行錯誤を繰り返した。2年の歳月をかけて完成したのがバフをかけたチタンパイプに青い焼き色をつけ発売、人気を得たフルエキだった。

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ケイファクトリーのエキパイには直線部分がない!

for KAWASAKI Z900RS

CLR-R+フルエキゾースト ラウンドサイレンサー(JMCA認証、ブルーの焼き色あり)25万8500円
CLR-RG+フルエキゾースト ヘキサゴンサイレンサー(JMCA認証、ゴールドの焼き色あり)29万1500円
CLR-R チタンエキパイ単品(レーシングパーツ、ブルーの焼き色あり)14万800円
CLR-RG チタンエキパイ単品(レーシングパーツ、ゴールドの焼き色あり)15万1800円
CLR チタンエキパイ単品(レーシングパーツ、焼き色なし)11万円

画像: ▲Z900RS用のチタンフルエキゾーストにはブルー&ゴールドの焼き色付きのほかにも、エキパイ単体の販売やφ42.7㎜の極太スチールエキパイを採用したCSR(クラシック・ストレート・レーシング)フルエキゾーストもラインナップしている。

▲Z900RS用のチタンフルエキゾーストにはブルー&ゴールドの焼き色付きのほかにも、エキパイ単体の販売やφ42.7㎜の極太スチールエキパイを採用したCSR(クラシック・ストレート・レーシング)フルエキゾーストもラインナップしている。

往年のZにも溶け込む手曲げ集合のスタイリング

for Z1/Z2

CSR フルエキゾーストマフラー (レーシングパーツ)9万1300円
CLR チタンエキパイ単品(レーシングパーツ、焼き色なし)11万円
CLR-R チタンエキパイ単品 SBL(レーシングパーツ、ブルーの焼き色あり)14万800円

画像1: for Z1/Z2
画像2: for Z1/Z2
画像: ▲φ42.7㎜の極太スチールパイプを美しいアールで曲げた、手曲げ集合管風のフルエキゾースト。空冷Z用は見ての通りその曲率がさらに大きく、前輪とのクリアランスも少なめ。'70年代のレーシングマフラーを彷彿させるスタイルとサウンドを約束する。

▲φ42.7㎜の極太スチールパイプを美しいアールで曲げた、手曲げ集合管風のフルエキゾースト。空冷Z用は見ての通りその曲率がさらに大きく、前輪とのクリアランスも少なめ。'70年代のレーシングマフラーを彷彿させるスタイルとサウンドを約束する。

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空冷の大排気量エンジンなら美しい曲線をさらにアピール!

for ZEPHYR1100

フルエキゾーストマフラー 1本出し
セミオーダー(平成11年度排ガス規制・平成13年度音量規制対応モデル)21万4500円〜
CLR-R チタンエキパイ単品 SBL(レーシングパーツ、ブルーの焼き色あり)14万800円
CLR チタンエキパイ単品(レーシングパーツ、焼き色なし)11万円

画像: for ZEPHYR1100
画像: ▲巨大なゼファー1100エンジンに見合うチタンエキパイはφ43㎜サイズの極太で大迫力。この取り回しを実現するにはフラットな同社製のオイルパンが必要になるが、ケイファクトリーはそこまでしても、そのシルエットにこだわり続けるというわけだ。

▲巨大なゼファー1100エンジンに見合うチタンエキパイはφ43㎜サイズの極太で大迫力。この取り回しを実現するにはフラットな同社製のオイルパンが必要になるが、ケイファクトリーはそこまでしても、そのシルエットにこだわり続けるというわけだ。

取材協力:ケイファクトリー

まとめ:ヘリテイジ&レジェンズ編集部

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