文:太田安治、オートバイ編集部/写真:赤松 孝
ベスパ「GTS スーパースポーツ300」「GTS クラシック150」インプレ(太田安治)
個性あふれるスタイルと上質な造り、装備も魅力
世界で最も有名なスクーターブランドであるイタリアのベスパは1946年に誕生。現在は原付二種の125ccモデルから普通二輪の300ccモデルまで多彩なラインアップを誇るが、最新技術を導入した主力モデルがGTSシリーズ。今回は150クラシックと300スーパースポーツに試乗した。
排気量はおよそ2倍の違いがあるが、スチールモノコックボディに前後12インチホイールの車体は両車とも共通で、全長、全幅、シート高などの数値も同じ。ただしエンジンの違いから車重は13kgの差がある。
まずはGTS300スーパースポーツ。エンジンはベスパとしては最大排気量となる、278ccのHPEユニットを採用。最大トルクを5250回転で発生する低中回転域重視の特性で、ゼロ発進と低速域からの追い越し加速では日本ブランドの250ccスクーターを軽く置き去りにする速さを見せる。これはエンジン特性の違いに加え、車重の軽さ、オートマチック変速のレシオ設定も効いているはず。街乗りでの乗りやすさが格段に高まっただけではなく、24馬力の最高出力で高速道路の120km/h巡航もストレスフリーだ。
この穏やかなパワー/加速のフィーリングはGTS150クラシックも同じ傾向。さすがに300のような分厚いトルクは感じられないが、市街地で多用する30~60km/hでの巡航は実にスムーズ。都市高速の流れに乗っていても余裕があり、タンデムも苦にならない。スクーター本来のコミューターとしての役割を過不足なくこなしてくれる。
新型GTSの改良ポイントはエンジンだけではない。日本ブランドのスクーターはタンデムを意識してか、サスペンション(特にリア)をハードめにセットした車種が多いが、GTSが採用しているフロントのリンク式サスペンション、リアのツインショックサスペンションはともに初期の動きが良く、路面から伝わる振動と小さなギャップからの衝撃をしなやかに吸収し、小径タイヤを履いているとは思えないほど乗り心地がいい。
最新モデルだけにABSやトラクションコントロールに加え、キーレスシステムも装備。シート下トランクにフロントトランクなど、収納スペースも確保され、日本ブランドスクーターに引けを取らない実用性も備えている。伝統のシルエットと世界的ブランドに裏打ちされた所有感はベスパだけの魅力だ。