レーサーレプリカとは一線を画するツアラー的なスタイリングを採用したGPZ400Rだったが、動力性能はクラストップレベルにあった。そんなオールマイティさがウケて2年連続でベストセラーモデルに選ばれた。
文:宮崎敬一郎

カワサキ「GPZ400R」|回想コラム(宮崎敬一郎)

画像: Kawasaki GPZ400R 1985年 総排気量:398cc エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒 乾燥重量:176kg

Kawasaki GPZ400R
1985年

総排気量:398cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
乾燥重量:176kg

レプリカとは異なるスーパーバイクが登場

1985年、カワサキ初の水冷ミドルスポーツ、GPZ600Rニンジャが世に放たれた。

当初、日本では限定販売だったが、世界では使い方を選ばない猛烈にパワフルなミドルスポーツとして注目されていた。そして当然、日本では一卵性双生児のような「400」が用意された。それがこのGPZ400Rになる。しかも、排気量を変えただけでなく、特異な組み立て式鋼管製バードケージフレームはアルミで作り替えられていた。

多くのカワサキファンは元より、多くのライダーにとっては待ちに待った「ニンジャ」の愛称を冠した水冷ハイパーミドルなのだ。だが、まわりにはすでにGSX-R400、FZ400、CBR400FとフルカウルのF3レーサーのようなモデルが乱立していた。なのにGPZ400Rは誰の目にも「戦うスポーツモデル」ではなかったのだ。やっぱりGPZ900Rニンジャのミドルバージョンで、何をやらしてもとことん優秀なオールマイティスポーツだった。

ライポジはアメリカで流行っていたアップライトなスーパーバイクのようなスタイルで、下半身が勝手にギュッとホールドされて、腕や上体をとことん自由に使えた。

このライポジを含めて、ツーリング適性は「レプリカ」たちとは比べようがないほど優秀で、いざ峠道でスポーティなライディングをすれば、その「レプリカ」たちと大差ないペースで走れた。タイヤ自体のグリップ力はともかく、足まわりの動きも秀逸でライバルのレプリカよりもずっと安心してリーンし、スロットルを開けることができた。

エンジンの暖気には少々時間が掛かる癖があったように覚えている。車体も少々重かったせいもあるが、その性格としては、モリモリした、瞬発力に直結するようなダイレクトな応答をするトルクを主張するタイプではない。だが低中域でのスロー走行や上り坂でもなかなかへこたれない粘りがあった。力は回して抽出するタイプで、回せば沸き上がるように力を爆発させた。

でも神経質な高回転域でなく、スロットルに対しても過敏ではなく、誰でも使いこなしやすいといった印象。ただ回せばさすがに勢いがあった。伸びは驚異的で、定地テストでの動力性能、いわゆる最高速ではレーサーレプリカたちと比べても遜色ないと言うか、多くの場合、クラス最速値をマークすることが多かった。

ひと言で言って「カワサキらしい」のだ。

しかし、当時カワサキは迷っていたようだ。取材に対する答えとして「本当にレーシングマシンのようなバイクが最高のバイクなのか? サーキットでの戦闘能力は置いておいて、どこでも使えるバイクこそがカワサキのトップブランドだ……面白さは他にある」と。そして、この考えは1989年に最強最速のZZR1100を生む。ミドルクラスで時代の流れに沿い、サーキットでも最強を狙ったのは88年のZX-4だ。これは実質的に1989年のZXR400と変わらない走行性能だった。

かつての月刊『オートバイ』の誌面で振り返る「GPZ400R」

画像: レーサーレプリカを押し退けて最速キングの座を手に入れたGPZ400R。人気、実力、その全てにおいてクラストップに君臨していた。

レーサーレプリカを押し退けて最速キングの座を手に入れたGPZ400R。人気、実力、その全てにおいてクラストップに君臨していた。

画像: カワサキらしいGPZ400Rのメーターユニット。レッドゾーンは1万2500回転からでリミッターは1万4000回転で作動した。

カワサキらしいGPZ400Rのメーターユニット。レッドゾーンは1万2500回転からでリミッターは1万4000回転で作動した。

画像: 国内限定1000台、GPZ600Rもデビュー GPZ400Rよりもひと足先に海外デビューしていたGPZ600Rは、のちに限定1000台で国内でも発売された。400とは異なるスチールパイプフレームを採用していた。

国内限定1000台、GPZ600Rもデビュー

GPZ400Rよりもひと足先に海外デビューしていたGPZ600Rは、のちに限定1000台で国内でも発売された。400とは異なるスチールパイプフレームを採用していた。

文:宮崎敬一郎

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