文:中村浩史/写真:松川 忍
ホンダ「CL250」インプレ(中村浩史)
CB250R、CRF250L、レブル250と同系エンジンのひとつの完成形が、このCL250だ
2011年デビューのCBR250Rから始まり、オフロードモデルCRF250LやネイキッドモデルCB250R、そして大ヒット中のレブル250にも搭載された水冷DOHC4バルブヘッドを持つ単気筒エンジン。
もちろん、モデルごとに細かくファインチューニングされてはいるが、私もこのエンジンがものすごく好き。特にCB250Rに搭載された仕様は、スロットルレスポンスが俊敏で、低回転からのトルクが厚く、高回転も伸びていく、250ccエンジンの歴史に残る「名機」だと思っているほどだ。
CL250に搭載された仕様は、CB250Rほどの伸び切り感よりも、アクセル開け始めが力強い。CBのように1速ごとで回転を引っ張るような乗り方でなく、早めにシフトアップ、回転を上げずに走るのが楽しい。そうだ、これがCLの乗り方なのだ。
CBを例にとると、トップギア80km/hで約5000回転、100km/hで約6200回転。CLの方が2次減速比をややショートに振ってあるとはいえ、回転域は同じようなものだから、CLは6速80km/hで5000回転+α。50km/hくらいでバイパスを流しているときの回転数は約3000回転+α。この3000~5000回転がいちばん気持ちイイ。
軽量なボディがしっかりと路面をグリップし、ハンドリングは軽く、その時のサウンドも歯切れがよく軽い。この3つの「軽」がCLをよく表していると思う。この「軽」は誰でも感じることができて、どんなシチュエーションを走っていても味わえる。
ここで、少しムチを入れてみると、CB250Rで感じたスポーツ性が顔をのぞかせる。斬れるハンドリングではないし、高回転までガンガン回るエンジンではないとはいえ、キビキビ走ることさえ難なくこなし、思ったよりハイペースで走ることもできる。
ガレージを出て、渋滞だらけの都内を走り、高速道路で郊外のワインディングへ。その、どのシチュエーションも苦にしないCLは、レブルよりもスポーツランが得意で、CB250Rよりもシティランがラク、CRFよりもクルージングが快適。私が名機だと感じているエンジン搭載モデルの、全方位に完成された姿なのかもしれない。
きっと、免許取り立てのあのコが乗っても気負わずに走れる。ビッグバイクスポーツ乗りの彼だって馴染んで走れるし、力不足もまた、楽しい。
そうか、これがスクランブラーだ。
乗り手に優しく取っつきやすい。シンプルに楽しいバイクを目指した
CL250は、レブルをベースに製作されたストリートスクランブラー。CLという車名は、1960年代から続く、ホンダ製スクランブラーの由緒あるネーミングで、ロードモデルをベースに、オフロードをはじめ、走る道を選ばないカテゴリーのこと。後にデュアルパーパスやストリートトラッカーと呼ばれたモデルたちとも似通っている。
幅広にセットされたハンドルバーに、ステップ位置はレブルよりもロードモデル寄りの位置にセット。シートレールもクルーザースタイルのレブルよりも高く、シート高も高い。ライディングポジションは、オフロードモデルやネイキッドに近いものだ。
ホンダはCLを「扱いやすくシンプルで、買いやすい価格帯である」モデルとして開発したのだという。この狙いはレブルと同じだが、大ヒットモデルとなったレブルとは違う方向性で、この狙いを実現できるだろう、という思いでスクランブラーに狙いを定めた。
乗りやすさの実現に、エンジンのセッティングも見直した。レブルのエンジンをベースに低中速向けにパワーを振り、専用設計のマフラーでチューニング。軽く弾けるようなサウンドも、CL独自のキャラクターだ。
スクランブラーらしいスタイリングにもこだわりがある。800mmを下回るシート高を確保しながら、まっすぐに伸びる水平基調のシートデザインと、シンプルで美しい丸みのあるコンパクトなフューエルタンクもCL独自のものだ。タンク容量は12L、満タンの航続距離は300kmを優に超える。
CLには、バイクを楽しんでほしい、という開発陣の思いが詰まっている。シンプルで美しく、乗り心地が良くて楽しい。それは、いつでもどこでも誰でもが味わえるバイクの良さだ。
「CLをきっかけに自分の可能性を広げていただけたら嬉しいです。『CLワールド』を楽しんで欲しいです」とは、CLのプロジェクトリーダーのひとり、商品開発部の小数賀巧さん。
レブルの開発にもかかわった小数賀さんは、乗り手に優しくて取っつきやすい、フレンドリーなバイクを作りたい、とCLを完成させたのだ。