文:中村浩史/写真:森 浩輔
ホンダ「スーパーカブ110」インプレ(中村浩史)
2023年上半期の販売台数を見ても根強い人気が分かる
──カブシリーズ、人気だねー。オレも欲しいんだよね。
最近、いやこの3年、あちこちでこんな言葉を聞く。この場合の「カブシリーズ」とは、主に大人気CT125・ハンターカブのことを指すもので、2020年6月にデビューして以来、ハンターカブは本当に、爆発的に、生産が追いつかない人気モデルだ。
2023年10月に「二輪車新聞」で発表された2023年1~6月の上半期販売実績によると、原付ニ種クラスでのベストセラーがハンターカブ。これまではマニュアルミッションモデルがクローズアップされるものの、実際に売れているのはスクーター、というパターンが多かったのに、ついにハンターカブが街中万能コミューターであるスクーターを抜き去ってしまった!
そして23年を通してのハンターカブの出荷台数は、約1万8600台。ハンターカブの現行モデル、2023年の年間販売計画台数見込みが1万4000台だから、販売実勢は+33%をマークした。125ccクラスという枠を超えて、ハンターカブは歴史的モデルになりつつある。
総合の販売台数の2位は、街中万能コミューターの最新モデルPCX(125)。惜しくもランキング2位に終わったのは、160ccモデル、兄弟車PCX160とADV160にお客さんを持っていかれたのでしょうね。
ランキング第3位が、なんとクロスカブもDaxも抑えてのスーパーカブ110。これは新聞配達仕様ともいえる110プロを含んだ台数だけれど、第3位は大健闘。もちろん仕事の足として使われている110プロの数も多いだろうけれど、仕事の足として使われているのは50cc版の方が多いかもしれない。ちなみにスーパーカブ50/50プロは合計3650台だ。
2023年上半期(1〜6月)原付二種 マニュアルミッション車 出荷台数ランキング
※二輪車新聞調べ。以下の表はマニュアルミッション車のランクなのでスクーターは除いてあります。
順位 | 車名 | 出荷台数 |
---|---|---|
1 | ホンダ「CT125・ハンターカブ」 | 12,400台 |
2 | ホンダ「スーパーカブ110」 | 6,000台 |
3 | ホンダ「クロスカブ110」 | 4,750台 |
4 | ホンダ「ダックス125」 | 4,500台 |
5 | ホンダ「スーパーカブC125」 | 3,150台 |
6 | ホンダ「モンキー125」 | 1,800台 |
7 | ホンダ「グロム」 | 750台 |
8 | スズキ「GSX-S125」 | 500台 |
9 | スズキ「GSX-R125」 | 400台 |
10 | ホンダ「CB125R」 | 150台 |
しかし、冒頭の「オレも欲しいんだよ」の声には続きがあることも多い。
──あのミッション乗ったことがないんだよね。ガッチャンと踏んづけるロータリーミッション。
ちなみに筆者・中村もこのタイプ。2022年にDax125を買って、人生初のロータリーミッションオーナーとなった。それまで経験したことはあっても、ぜんぜん慣れていなかった。苦労したのは納車直後のみかな。
ロータリーミッションとは、クラッチ操作の要らないマニュアルミッション。シーソー式シフトペダルが装着されていて、シフトアップはつま先側を、シフトダウンはカカト側を踏んづける、だけ。けれど、これがクラッチワークに慣れたオートバイ乗りたちに違和感を覚えさせる。
エンジンをかける。停車時のニュートラル(N)からつま先側をガチャンと踏んづける。シフトペダルをいっぱい底まで踏み切った状態とリターンスプリングで戻った時は、通常のバイクでいう「クラッチレバーを握ったまま」状態で、バイクは停止したまま。
発進は、アクセルを開けるだけ。半クラッチも要らなけりゃ、エンストもしない。スピードが乗ってくると「アクセルを戻しつま先側を踏んづける」を繰り返して4速に、そのままクルージングだ。
停まるのは、そのままアクセルオフとブレーキで減速。ミッションはそのままでもいいし、カカト側を何度か踏んづけてシフトダウンもいい。この時、シフトショックが気になるなら、踏んづけたペダルをゆっくり離すと、半クラッチ状態も作り出せる。
停止してからつま先側を踏んづけると、4速からひと回りしてNに入れられる。これ、走行中には4速から直接はNに入らないようになっていて、完全停止時のみNに入る安全装備だ。
信号待ちでうっかりNに入れ忘れると、よろよろと4速発進することになる。しかし、この状態でもエンストしないところも、ロータリーミッションの大きな魅力なのだ。