文:太田安治、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
ヒョースン「GV250DRA」インプレ(太田安治)
街乗りやツーリングをストレスなく楽しめる
スズキとの提携を経て1987年から独自モデルの量産を開始したヒョースン。現在は125~650ccモデルを世界各国で販売している。日本に輸入されるのはボバータイプの125ccと300ccモデル、そして今回試乗した250ccのGV250DRAだ。
ルックスは現代風ストリートクルーザー。2240mmの全長はホンダのレブル250よりも35mm長く、17.5L容量タンクのボリュームやエンジンの存在感と併せて1クラス上の堂々とした車格に仕上がっている。しかし車重はレブルSエディションと同じ172kgで、シート高も750mmと低いので取り回しやすくて足着きもいい。これは大きな安心ポイントになるだろう。
エンジンは今や貴重な空油冷V型2気筒で、前後シリンダーの挟み角は75度。ここだけ見るとクルーザーらしいパルス感を狙っているように思えるが、実際はショートストローク設定+DOHC4バルブのシリンダーヘッドで高回転まで滑らかに伸びていくスポーツライクな特性。フルスロットルでの加速時には豪快な吸気音が響き、体感的な速さもなかなかのもの。中~高回転域までストレスなく回る上、各ギアの守備範囲が広く、シフト回数が減らせることも加減速の多いストリートユースでの扱いやすさを生んでいる。
意外だったのはハンドリング。フロントフォークのキャスター角が33度と寝ているうえにトレール量も142mmと大きめで、直進安定性重視ではあるが、市街地で鈍重さを感じるシーンは一度もなかった。小さな交差点の右左折やUターン時のフィーリングも自然で、イン側に切れ込むような挙動も出ない。
直進安定性の高さと2気筒エンジンの滑らかさは高速道路クルージングにも有効に働き、大容量タンクによる航続距離の長さも心強い。ただしギャップ通過時はリアからの突き上げが大きめ。これはGVに限らずサスペンションストロークの短いクルーザーの宿命だと頭に入れておこう。
GVが気になるユーザーの多くはレブルと比較するだろう。レブルの単気筒エンジンが生む軽い鼓動感と歯切れのいい排気音に対し、GVはフラットなパワー特性と連続した排気音。市街地ではレブルの元気な加速感が魅力で、ツーリングや高速道路ではGVのスムーズさが有利。独自のエンジンキャラクターとデザインは、人とは違う個性を重視するライダーを惹き付けると思う。